(前回の続きです)
■「涼宮ハルヒ」の成功は「名探偵」と「集団心理」?
ストーリーの確信ともとれる部分、ある登場人物が涼宮ハルヒの特別な能力について次のように語っているシーンがあります。
「(略) 惑星表面に他では類を見ない情報フレアを観測した。弓状列島の一地域から噴出した情報爆発は瞬く間に惑星全土を覆い、惑星外空間に拡散した。その中心にいたのが涼宮ハルヒ。」
?「涼宮ハルヒの憂鬱」より引用?
角川から発行されている隔月誌に連載されているころには、一部のファン層が中心だったのに対し、TV放送開始と相まってにあっという間に幅広い層、また国内だけではなく全世界に波及した、これらの現象とイメージがたぶりますね。
さて、ではこの現象の裏側では一体何が起こって、何が商業的に成功に導いたのでしょうか?
キーワードは二つ。
「名探偵」と「集団心理」。
■「涼宮ハルヒ」が生み出した「Needs(ニーズ)」
「涼宮ハルヒ」が最終的にネットを通して生み出したのは「ニーズ」ではないだろうか?
と言った時、「あれ?」と思われた方はするどい。
ニーズとは大抵の場合「そこにある物」で、(一般的また原則的に)マーケティング活動を行う「マーケター」と呼ばれる人が生み出す物ではないとされています。マーケティングの大御所コトラー先生流の考え方を持ってくれば、生活上(または生きるため)に必要とされる、ある充足状況が不足している(奪われている)状況下のことを指します。
もう少し細かく見ていきましょう。
人が何か物を購入するまでには次のような状況が生まれます。
マーケターが生み出すのはこの中で「ディマンズ」だとされています。いくら欲しくても(Wants)、対象とする購買層が購入できなければ意味がありません。
じゃぁ、ニーズじゃなくてディマンズじゃないの?と言われればそれも含まれるのでしょう。最終的な商品はディマンズを解消するために必要な要素を持ち合わせていたと言えます。ただよく考えるとディマンズ、ウォンツの源泉となっているニーズそのものを意図せず産み落としていると言えるのではないでしょうか。
キーワードは冒頭でも書いたこの二つ。
「名探偵」と「集団心理」。
マーケティングの話で頭の痛くなった方も多いと思うので、少し話題を切り替えますね(笑)
■視聴者が“名探偵”となるゲーム的要素
「名探偵について考えてみましょう。(中略)
ミステリ的創作物の名探偵たちは、なぜか次々に不可解な事件の数々に巻き込まれることになっています。何故だと思いますか?」「そうしないと話にならないからだろう」
「まさしくね。大正解です。そのような事件はフィクション、非現実的な物語の世界にしかありません。(中略)涼宮さんは、まさにフィクションの世界に身を投じようと考えているようですから」
?「涼宮ハルヒの退屈」より引用?
まずはなぜ視聴者がハマったのかその理由と、“名探偵”をキーワードに考えてみることにしましょう。
前回のエントリでお話しした通り、「涼宮ハルヒ」はTV放送の順番と実際のストーリー展開がまったく異なります。つまり謎的要素が多く普通に見ているだけで次から次へと「?」な疑問が表れてきます。
ただし、これらの疑問、謎は少し調べればある程度はかんたんに解けてしまうというのがミソです。
推理物のアドベンチャーゲームを思い浮かべてください。ドラクエなどのRPGでも良いでしょう。ゲームが始まるとある課題(謎)がプレイヤーに与えられ、その謎を解くためにあらゆるところを調べ回っているうちにヒントが見つかり、最終的な解決につながっていくというのが一般的なところでしょう。
重要なのは、これらの謎は一気に解けるわけではなく少しずつ解決していく、それもストーリーの後半にせまるにつれてより刺激的な内容になっていき、プレイヤーもそれを理解しているからもっと面白い体験をしよう、より刺激的な謎を解こうという心理のもとに、「ハマル」という構造ができあがっています。
ここで大切なのは人は苦労して謎を解くと面白いと感じる点。
さて、これらの現象はゲームの中だけではありません。「涼宮ハルヒ」の場合ストーリー中でも出てきた“名探偵”、それを視聴者が意図せずプレイヤーになっているというわけです。
■謎は解けば解くほど深くなる
「涼宮ハルヒ」の場合、もっとも簡単な解法は原作小説を読むことにあります。
こちらは短編などをのぞけば基本的に時系列に並んでいますから、あっという間に解決できます。
ただ中には小説を読むのがあまり得意(好み)ではないという方も多いですし、小説を読むのは個人差もありますが非常に時間がかかります。そこで、すぐに思いつくのはインターネット。前回もお話した通り公式サイトが“アレ”なことになっており、ヒントはもらえるけど謎はホトンドといって良いほどとけません。
ではどうするか、解説サイトや感想が書かれたブログを見てまわれば良いのです。
(この行為が後述する「集団心理」にも影響を与えたのだと思われます)
(1分毎に更新するのウリのブログ検索NAMAANの注目キーワードにもなっている。 7/10 AM1:00現在)
アドベンチャーゲームは必ず大抵のユーザーが解けるように出来ていますし、最後まで解くのが目的ですが、「涼宮ハルヒ」の場合、これで100%解決できないのも大切なポイントでしょう。
先の楽しみを取っておくために“ほどほどに解決”できれば良いという人が少なくないのではないということもありますし、原作小説に手を出したとしても、小説自体がまだ完結してないわけです。そしてさらにTVで見たときよりも謎の数は多くなっていますから、ますます深みにはまっていくというのは想像に難くない現象だと言えます。
※余談
同じようなことが、10年ほど前に大ブレイクした「エヴァンゲリオン」でも起こった、ということから、他の要因とも合わせてエヴァの再来であるということを論じている方もたくさんいらっしゃいます。興味のある方は「謎」を解きに出かけてみてください(笑)
■ではなぜ購買につながるのか?
なぜ「涼宮ハルヒ」にハマルか、その心理についての解説を行いましたが、ではこれがどうして購買につながるのでしょうか?
最初にニーズの定義を思い出してみましょう。
(1)「Needs(ニーズ)」の発生
生活上(または生きるため)に必要な、ある充足状況が不足している(奪われている)
ここまで説明した後だと、すごく当たり前な話に聞こえると思いますが、「涼宮ハルヒ」が「謎」を提供することで、その解法を探る人たちにとって「充足状況が不足」している状況であったと言えます。
ただこれだけだと全ての説明ができません。
解法を求めてさまよう人たちが、原作を購入するのは理解できるが、なぜCDやDVDを購入するにいたるのか。これにはまた別の視点から見ていく必要がありそうです。
※エンタテイメント分野だとそもそも背景が違うんじゃない?というツッコミもありますね。
■補足
売れる商品作りのためには、4つの要素について優れている必要があると言われています。マーケティングの教科書で最初の方に書かれていますから、かじったことのある方はご存知ではないかと思いますが、4Pです。
今回の連載で取り上げたのはこのうち「Promotion」を中心とした、説明上必要な一部の「Product」に関わる面だけです。様々なブログや掲示板などで言われている通り、特に「Product」の秀逸さが際立っているのは周知のところ。それを、ここでやりすぎると「メディア論」と違うところにいくことが想像に難くないため、この連載では深く追求しないことにしています。あしからずご了承くださいませ。
■次回予告
さて、次回はキーワード的に言うと「集団心理」の話題になります。
関連性マーケティングや、ゲーム理論(予定)の初歩的な内容を含みつつ、コミュニティについて色々とお話をする予定です。その次の回で、ネット上で議論されているアレやコレやをお話することになると思います。
※前回のリアクションなどを考慮し若干文章の順番を入れ替えたため、経緯や色々なサイトを紹介するうんぬんの部分は次回以降になりました。
では次回をお楽しみに!

勝部 麻季人(かつべまきと)
(株)リクルート 自動車ディビジョンに入社後、システム開発・運用およびマーケティングデータの分析などを中心にカーセンサーnetのWebサイト運営に関わる。1年ほどAllAboutJapanにて「HTML・XML」ガイドも勤める。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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英語のスペルを書いた後でにほんごを入れるのは嫌らしいと思います。それならば、初めからカタカナで入れて欲しいね!見苦しいよ!