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    スティーブ・ジョブズに学ぶ日本の社会復興

    2012-02-11 17:00:00

    プロフィール

    土屋夏彦

    「radiko.jp」も東日本大震災では素晴らしい効果を発揮し、地デジ化による新メディアnottvもスタート。放送と通信の連携の意味がだんだん姿を顕し始めています。そんな業界の裏側を鋭くえぐっていければと思います。
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    ■復興庁発足

    東日本大震災からの復興施策を統括する復興庁が10日正式に発足した。被災自治体からの要望や相談を一元的に受けるほか、復興特区、復興交付金の関係業務も担うことになる。また、これまでの各県の現地対策本部を改組し、引き続き盛岡、仙台、福島3市に置くという。それぞれ30人規模。これまで対策の遅れなど様々な問題を引き起こしていただけに、復興庁への国民からの期待が高まっている。

    このニュースを聞いてふと思った。もしも、スティーブ・ジョブズが復興庁のリーダーだったら、どんなことをするのだろうかと・・・。そんなことを思っていたときに丁度、ジャーナリストの林信行氏の著書「ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した」(青春新書インテリジェンス)を読んで閃いた。今回は、ジョブズの様々な手練手管から、社会復興のキーワードを探ってみたい。

    ■ジョブズ復帰時のAppleは不安が立ち込めていた・・

    昨年10月に惜しまれて亡くなったAppleのスティーブ・ジョブズ・・・。彼の波乱万丈な人生からは、様々な名言が飛び出し、その言葉は、我々の社会生活でも教訓として受け継がれている。

    養子として生まれ、自分は何者かを問い続けてきたスティーブ・ジョブズだからこそ、誰よりも人を愛し、人とともに歩んできた・・・。そんな彼が、自分がまいた種でAppleを追い出され、そしてまた戻ってきたとき、Appleはとんでもない状況に陥っていたと言う。

    業績不振から赤字は莫大になり、社員は何時つぶれるのか不安の渦中にあった。それまで理想ばかり掲げてきたジョブズも、この状況にはさすがに参った。つまりこの状況で、自分の求める理想をいくら社員に語っても、みんなはすぐに「不安」を先に語りはじめてしまう・・。そんな話を読んで私は、これはまるで今の日本のようだと思った。

    復興庁が発足し、政治家や役人が理想を掲げ、それに向かって「全力を尽くします」といくら言ったところで、我々国民は「不安」のほうが先にたってしまう。様々なことを解決してくれることは間違いないと信じていても、いつになったら汚染された土壌の処理が終わるのか、仮設住宅での不自由さを少しでも緩和しようと思ってくれているのか、などなど文句が先に出てしまうのだ。

    そんなとき、ジョブズはある心理学の理論を思い出したと言う。

    ■マズローの5大欲求

    広告業界を始め様々な業界で活用されている「マズローの5大欲求」という理論は、みなさんも良くご存知かと思う。これは、アメリカの心理学者・アブラハム・マズローが、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層で理論化したもの。「自己実現理論(じこじつげんりろん)」とも言う。

    マズローによれば、人の欲求は5段階あって、それぞれ順番に満たされていかねば、次の欲求には向かえない。つまり欲求には優先順位があるというのが理論の根本である。

    改めてこの5段階欲求を書き出してみる。

    まず、人が最初に出会う欲求は、おなかが空いた、のどが渇いた、頭が痛いなどの「生理的欲求」。

    続いては、病気にならないようにしよう、万が一地震が起きてもすぐに対応できるようにしようという、生理的欲求を維持するための「安全の欲求」。

    第3段階は、周囲の人間と良い関係を築きたい、愛されたいなどを求める「所属と愛の欲求」。生活の安全が十分に満たされて、ようやくこの欲求が芽生えるようになる。

    第4段階は、人に認められたい、集団から自分が価値ある存在と認めてもらいたいという「承認(尊重)の欲求」。

    そして価値ある存在と認められたことで最後に、第5段階の「自己実現の欲求」、すなわち自分の持つ能力や可能性を最大限に発揮してもいいかな・・・・となる。

    マズロー博士によれば、これら5段階の欲求が順に満たされていかないと、自分から進んで能力を発揮しようと思い始めるに至らないというわけだ。

    ■ジョブズの唱えた「アップル復興の5大階層説」

    林信行氏の著書によれば、ジョブズは、アップルに復帰した1998年の演説で、どうしようもなくなっていたAppleの状況を鑑み、このマズローの5大欲求になぞらえた、アップル復興のための「5段階層説」を提案したと言う。

    まずは「生理的欲求」を満たす・・・即ち「会社で食っていけること」の証明をするということ。新しい経営陣、そして組織構成、さらにはマイクロソフトからの出資の保証・・・これで社員は生きてゆけることを確信し始める。

    続いて「安全の欲求」すなわち、安定したビジネスが見えること。会社が安定しているかどうかは、客観的に見れば「利益が出ている」こと。ジョブズは何としても利益を出すことに専念することを掲げ、そのために徹底的な経費見直しに加え、量販店でのアップル専用コーナーの設置、そしてAppleオンラインショップを立ち上げた。

    社員が元気になってきたら第3段階「所有と愛の欲求」を満たせる戦略を発動する。ここで「iMac」という革新的な新製品を打ち出し、アップルユーザーとの良い関係が再び芽生え始める予感を社員全員に感じさせることに成功。

    そして第4段階の「承認の欲求」として、ジョブズは、他社やユーザーから認められることを実現させるため、マイクロソフトがアップル用のソフトを開発してくれることを確約させた。また、そうそうたる会社のキーマンからのアップルへの期待ビデオメッセージももらった。

    そしてここまでの社員に対する欲求を段階を追ってこつこつ満足させていったことで、遂に社員一人ひとりの「やりがい」や「やる気」「成長」が戻ってきたと言う。このあとのアップルの大成功ぶりは誰もが知っている。iPodやiPhone、iPadなどは、こうした辛抱強く段階を追って社員の欲求を満たしていった結果なのだ。

    つまり、ひとつひとつ段階を追って欲求を満足させていかないと、何事も満足のいく結果が出せないということも言える。これがまさにこれからの復興庁と我々の関係の中で、最も重要な「手練手管」ではないかと思う。

    ■ジョブズの成功事例を社会復興にも応用

    スティーブ・ジョブズが復帰したときのどうしようもない「不安」渦巻いていた状態は、まさしく、今の日本。

    様々な国民の声に翻弄されて、すべてのことを一気にやっても絶対うまくいかないことがわかる。やるのは復興庁の役人ではなくて我々だからだ。我々のやる気や、やりがいが芽生えなければ、何も始まらない。ジョブズの例になぞらえてみると、さらに社会復興への鍵が見えてくる。

    復興庁はまず、被災した人々の生きることへの保証をきちんと国民に見えるようにしよう。

    そして安全性への保証。これはかなり大変だ。今もここで地団駄を踏んでいる。でもここをクリアなくしてその先は望めない。

    安全に暮らせることを国民が理解してようやく、周りの人たちとの交流や、全国各地で被災者との交流を図るようになる。

    そして交流の結果、互いに得られた成果が、日本全国に認められるようになってゆく。そしてここまでの4段階をひとつひとつクリアしていって初めて、国民一人ひとりのやる気や成長が始まるというわけだ。

    こうしてみると、この第3、第4の欲求となる「被災者の努力や活動のアピール」がかなりマスコミも含め、先走っているように思う。いくら被災者が元気に仕事をしている様を伝えても、第1、第2の欲求が満たされぬままでは、国民全員のやる気や成長は望めないということなのかもしれない。

    いづれにせよ、復興庁は立ち上がった。ここからは、我々一人ひとりが、スティーブ・ジョブズになって、社会復興のための段階をクリアしていかなければならない。


    参考書籍

    ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した (青春新書インテリジェンス) ジョブズは何も発明せずにすべてを生み出した (青春新書インテリジェンス)
    林 信行

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    ※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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