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■センター試験で思い出すこと
今日は大学入試センター試験の日。昨年2月、京大の試験会場で携帯を使ってヤフー知恵袋に試験問題を質問するという大それたITカンニングが発覚した事件を思い出す。インターネットにたむろす有象無象の輩に「この問題が難しくて解けないんですけど・・」と相談すれば、我れ先に「よっしゃ、オレが解いたる!」という気分になる。それがインターネットだ。
インターネットで暇つぶしをしている者にとって、何よりも重要なのは「頼られること」「役に立つこと」。残念ながら、なかなか現実世界でそういったことがない分、バーチャルの世界で人の役に立てることがあれば、そりゃモチベーションを掻き立てられる。だから、美味しいお店に出会ったら、ネットに書きこんで、グルメたちの役に立ちたいと思うことになる。そんな純粋な気持ちを逆撫でする、有料で書き込みを請け負ってる人もいることは、周知の事実だった。
そう、今回のテーマは「食べログ」に金銭を受け取って書き込みをしている業者が発覚した「食べログ事件」(仮にこう省略させていただく)について考えたい。
■「正しいクチコミ」と「やらせのクチコミ」
--「食べログ」やらせ騒動でランキング操作は確認できず--消費者庁も動く(2012/01/06)
価格比較サイト大手のカカクコムは6日、運営する飲食店の人気ラン
キングサイト「食べログ」で、金銭を受け取って好意的な口コミを投
稿し、掲載順位の上昇などを飲食店から請け負う「やらせ業者」が昨
年末時点で39社あったことを明らかにした。不正業者に対し、行為
の停止を求めるとともに、「応じない場合は法的措置も視野に対応す
る」としている。
この件に関しては、ほかのネットでのやらせ騒動も含め、何を今更なのであるが、改めて「正しいクチコミ」と「やらせのクチコミ」について考えるよい機会ではないかと思うのである。
まず、テレビやラジオなどの旧来メディアでは、「放送法」に基づいて、情報に関する「正当性=公平・中立性」を保証する責務を負っている。なので、少数の意見のみで番組情報を構成してはいけないのだ。これは国から免許を与えられた特殊事業であり、社会に与える影響の大きさ所以である。なので、放送では「やらせのクチコミ」は悪である。実際は、放送でも度々「公平・中立性」を損なった事件が起きているが、これは罰則を科せられたこととして、今回は多くは語らない。
対して、ネットメディアではそんなものはない。あくまで受け取る側の倫理感や、社会常識に委ねられている。「正しい」も「やらせ」も十把一絡げの世界だ。
今回の「食べログ事件」には、2つの問題が隠されている。1つは、誰もが無償で情報を書き込んでいる「自遊空間」に、「報酬をもらって書き込む行為」が「不正」かどうか。そしてもうひとつは、その書きこみが「公平・中立性」があるかどうか、またはその書き込みに「公平・中立性」が必要かどうかだ。
インターネットも放送以上に社会に影響力を与えるメディアにまで育っているのだから、公平性・中立性を保たねばならないはずだ、と考えるのが筋かもしれない。しかし、事はそう簡単なことではないと思うのである。
■「不正」なのか「公平」なのか
まず、報酬をもらって書き込む行為について考えてみよう。あえてインターネットを放送と同じ扱いとして考えると、その書き込みが「広告」であると明記してあれば、問題はないと思う。テレビやラジオのCMや番組内のインフォマーシャルなどは、まさにそれに類するものであるし、googleが一大旋風を巻き起こした「リスティング広告」なども、まさにこれである。
実はこれ、「広告」と銘打ってなくとも、TVでは頻繁に行われている行為である。テレビで紹介される「美味しいラーメン屋特集」の裏で、お店との金銭のやりとりがあるのかないのか実際はわからないわけだから、倫理的かつ公平・中立性に逸脱していなければある程度は許される行為になっている。そう考えると、一概に「報酬をもらって書き込む行為」が「不正」かどうかとは言えない。
問題は、書き込みが「公平・中立性」があるかどうか、またはその書き込みに「公平・中立性」が必要かどうかだ。
テレビで「美味しいラーメン屋特集」を企画する場合を考えてみよう。美味しいラーメン屋の情報ソースは、番組スタッフや情報ライターがたまたま美味しかったとか、ラーメン好きの人から聞いたものから構成されていることが多い。それが、中立・公平性を保っているかは、番組プロデューサーの倫理観に委ねられる。ここで万が一プロデューサーの倫理観が、世間一般に受け入れられないものだった場合は、業界内での罰則がある。場合によっては、番組に今後携われなくなってしまうことさえある。
果たして、それと同じことをインターネットでも適応させるべきなのだろうか。そこがいま、インターネットユーザーに問われていることだと思うのだ。
■ネットは賢く利用する
今回の事件で、飲食業者はどう考えているのだろうか。「日経レストランオンライン」(本編は下記参考リンクを参照)に書きこまれていた意見が参考になると思うので引用させていただく。
「やらせ業者に月10万円にも上る報酬を支払う。ですが、店の利益率が20%として月10万円の支払いをバランスさせるには最低でも月50万円の増収が必要です。客単価3000円の店なら、月170人の集客増が求められます。そこまでの効果を上げられる“腕の良い”業者は滅多にいるものではありません。仮に、評価が上がって新規客が一時的に増えても、それが実態を伴わないものなら、リピーターにはなってくれません。それどころか、期待を裏切られたお客による、辛らつな評価が「食べログ」に殺到するリスクを抱えます。・・・やらせ業者の甘言に乗ってしまった経営者は、その意味でネットに無知だったと言えるでしょう。」
そんなヤラセ業者の口車に乗って報酬を払って書きこませても、結局は、店の実力が伴わなければ意味が無いということだ。飲食業者側もネットは確かに重要であるが、賢く利用しないと意味が無いことを理解できている。
やはり問題は、ネットの「公平・中立性」なのだ。
■罰則があったら素人ライターは何も書けなくなる
はっきり言わせてもらうと、現時点で、ネットの「公平・中立性」は必要ないと思う。それは、公平性に欠いた場合、罰則があるかどうかと言う意味でだ。
ネットは情報や意見の集合体である。様々な情報や意見が飛び交っているからこそネットだからだ。私が書いている、まさにこの記事であっても、無数にある「食べログ事件」に関する意見記事の一つでしかない。その記事一つ一つに「公平・中立性」を求めていたら、記事を書く側からすると、窮屈でしょうがない。罰則があったらなおさらだ。様々な事象を分析したり、知識を集約したりする手間も暇もかけなければならなくなる。
そんなめんどうなことを考えずに、思ったままままを書き連ねることができるからこそ、自由な空間なのだ。もし一般的に間違った意見であれば、それをお互いに正してゆけば良いことだと思う。そういうコメントの余地もネットには十分ある。そんな意見の集合体全体で考えれば、十分に「公平・中立性」が保たれているのではないか。
「食べログ事件」に象徴される、有料書き込み業者を擁護するつもりはない。そんなことよりインターネットに参加した時点で、「正しいクチコミ」と「やらせのクチコミ」を見分けるのは、我々運営している(書きこんだり読んだりする)側の責務と考えるほうが前向きなのではないか。社会全体で運営していくメディアだからこそ「ソーシャルメディア」なのだから。
参考リンク
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「食べログ」やらせ投稿を考える(2012/1/12)
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「食べログ」やらせ騒動でランキング操作は確認できず--消費者庁も動く(2012/01/06)
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カカクコムプレスリリース(2012/01/05)
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