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ユーザー指向のもの作りに関する一考察

2006/05/22 02:49
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中島聡

Microsoftでチーフアーキテクトを務めた経験を持つUIEvolution CEOの中島聡氏が、「Web 2.0」と呼ばれる新しいネット時代のサービスのあり方や、ライフスタイルの変化について考察します。
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 この週末に私が読んでいる本は、私のもう一つのブログでも紹介記事を書いた「The Ten Faces of Innovation」。その本に私がいままで漠然と感じていてうまく説明できなかったことを上手に説明してくれている記述を見つけた。

 そこには、自動車産業の父、Henry Fordの言葉「もし私がカスタマーに何が欲しいかと尋ねたら、彼らは『もっと早い馬が欲しい』と言っていたでしょう」が引用してあり、「カスタマー(顧客)の声を聞くことは大切だが、彼らに『何が欲しいか』を聞いても必ずしも答えは出て来ない。それよりも彼らの行動を良く観察し、どんなところで苦労しているか、彼らなりにどんな工夫をして今あるものを使いこなしているかを理解した上で、何を作るべきかを考えるべきだ」と結論付けている。

 ものすごく共感できる。この業界にいると、「ユーザーの声を聞くことは大切だ」というセリフは良く聞くが、それを頭から「ユーザーが欲しいと言っているものを作れば良い」と誤解している人たちが結構多いので困る。そんな人たちに、こちらが一生懸命考えた斬新なアイデアを提案すると、「そんなものを欲しいと言っているユーザーは一人もいない」と頭から否定されることがある。ユーザーが存在することも知らない新しいサービスや製品を提案しているのだから、いなくて当然なのにもかかわらずである。

 特に「合議制」でモノゴトを決めて行く日本の会社の場合、「アンケートの結果、何パーセントのユーザーが欲しいと言っている」などの数値化されたデータに頼り切った社内向けの資料を作る必要が往々にあるので、「ターゲット・ユーザーを観察した結果、こんな商品なら喜んでもらえるのとの結論に達した」という資料では説得力に欠け、何の変哲も無い「既存のユーザーの多くが欲しいと主張しているもの」に企画段階で負けてしまうことがしばしばあるのだ。「合議制」ではイノベーションが出来ない根本的な理由はここにある。

 ゲーム業界であれ、家電業界であれ、「ユーザーの声を聞く」ことはものすごく大切であるが、ユーザーが欲しいと主張しているからと言って、彼らの言うとおりにただひたすらに、高機能なゲームマシンや、絵がきれいな大画面テレビを作ることは、まさにHenry Fordの言う「もっと早く走る馬」を作ってしまうことに相当するのではないのか良く考えてみるべきだ。

 それよりも、ユーザー層全体を良く観察し、「なぜゲームをする時間が減っているのか」、「なぜ今時の若者は、家に帰って最初にテレビのスイッチを入れずにまずはパソコンに向かうのか」などの疑問に対する答えをまず見つけるべきであるように私には思える。そしてその中から、ユーザーが想像もしていない斬新なゲームの楽しみ方や、テレビを中心としたライフスタイルを考えて行くべきなのである。昨今のAppleのiPod、任天堂のDS、という二つの成功事例を見ただけでも、彼らのアプローチがユーザーの行動を良く観察した結果であることが良くわかる。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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