Netscapeのすごいところは、95年という早い時点でインターネットのポテンシャルに誰よりも早く気づいて、「これからはウェブ・アプリケーションの時代だ」というヴィジョンをはっきりと打ち出したこと。それもMicrosoftがWindows95を発売してやっと「GUIのイノベーションの収穫期」に入ったばかりの時にである。
Microsoft内の反応はさまざまであった。上場したばかりのNetscapeの株を買い求めるお調子ものから(この行為はすぐに禁止になった)、NetscapeがMicrosoftのビジネスにとって脅威だということにいつまでも気が付かない人までいた。ウェブアプリケーションに関しては、私のように「全てのアプリケーションがウェブアプリケーションになる時代が来るかも知れない」と騒ぎたてる急進派はごく少数で、大半は「Microsoft Officeに代表されるプロダクティビティ・アプリケーションは決してウェブアプリケーションにはならない」という冷めた見方であった。
新しいもの好きの私は、そのままInternet Explorer3.0のプロジェクトに身を投じ、その後合流してきたAdam Bosworth(現在はGoogle)のチームとInternet Explorer4.0を作ることになる。Adamからは色々なことを学んだが、もっとも影響を受けたのはXMLに関する考え方。「XMLで記述したドキュメント自身にインテリジェンスを持たせればアプリケーションのインストールという行為そのものを排除できるかも知れない」と思い始めたのはこの頃の話である。
この頃良く私が引き合いに出していたのが、メールの添付として送られてきたWordとかPowerPointのファイルがMicrosoft Officeのインストールされていないマシンで見ることすら出来ないという不合理さ。これだけパソコンの性能が上がったのだから、ファイルフォーマットをすべてXMLにし、「どうやって画面に表示すべきか」をメタデータとして持たせてあげればアプリのインストールされていないマシンでも見ることはできるはず、という発想である。
残念ながらこの発想はMicrosoftの内部ではあまり評判が良くなく(Officeが売れなくなる)、採用してもらえなかったが、この「インテリジェンスを持ったXMLドキュメント」という考え方はそれ以後の私にとってライフワークに相当する重要なテーマとなる。Microsoft退社後、その発想を発展させて、「データ駆動型アプリケーション」、「ユーザーとどうやってやり取りをしたら良いかまでメタデータとして記述してあるXMLドキュメント」というUIEngineのヴィジョンに繋がって行くことになる。
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