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    成長神話への違和感 ~ノマドとファイナンス~ (後編)

    2012-02-05 23:30:00

    プロフィール

    村上敬亮

    長年、官の立場からIT業界に携わり、政策の立案、実行をしてきた経済産業省 商務情報政策局の村上敬亮氏が、日本の情報産業がさらに発展していくための課題や可能性について語ります。
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    3.遺伝子のスイッチを入れる


      


    (1)欠けているのは長期のファイナンス


      


     - これまでの流れとは非連続な動きを事業化(非営利を含む)する仕組み。


     


     今、時代が求めているのは、たぶんそのことだ。狭い意味での縦割り排除だけでなく、地球環境や物価を巡る常識の転覆も含めた、非連続な変化への渇望だ。


     そして、案外、それが時間のかかる、積み上げ型の努力を必要とする話だと言うことも、おそらく、時代の気分として理解されている。新しいモノは、一見無駄なモノを、ある必然性によって束ねて始めて、「進化」につながるようなところがある。一見無駄な回り道をして始めて、見えるパスもある。そんな気分もまた、既に共有されている感じがする。


     


     しかし、どうしても足りないモノが一つだけある。それは、長期のファイナンスだ。彼らがどんなに地道にパスを見いだしたとしても、新しい変化の方向性を支持する勢力を作り上げたとしても、先立つ金がなければ、具体的に物事は動かせない。


     そのことに柔軟に応えようとするとしかし、事業はいずれも10年がかりだ。日本企業の内部留保はどんどん細り、外部資金も求めるリータンは長くて7~8年。しかもアジアその他の新興国に優良案件が山のようにあるとなれば、誰も好き好んで、日本国内での、新しい長期的な変化に投資しようなんて人が出てくるだろうか。


     


     僕等は今、自分達が目指そうとしている、そうしたやや長期の変化を、自分達自身の手で、評価し、試し、資金調達までしなければならない、そういう変化の時にいる。だからこそ、ノマドな若者達は、従来の境界線を忌み嫌う。


     行政も、政治も、大企業も、ものづくりも、サービス業もみな、従来自分達がその活動を持続可能とするために律してきた境界線故に、非連続が演出できなくなっている。そのことへの本質的な忌避感が、境界を自由にたゆたうイメージの強い、ノマドという言葉への憧憬を生み出しているのではないだろうか。


      


    (2)ネットワークの裾野を広げる


     


     システムは「進化」する必要がある。今までのシステムが内包する論理で金が回せないのなら、新しいシステムをオーバーラップさせていかなくてはいけない。


     そのために必要なのは、ネットワークの広がり。従来の組織をベースにその設計変更を目指したところで、その組織DNA自身は、そう簡単に変わるモノではない。そんなに綺麗にクリーンアップできるモノでもないし、消してしまったところで、今の社会の運用秩序をそのまま担えるモノがあるはずもない


     だとすれば、その組織DNAに変化を迫るような、新しい突然変異種を作り、大切に育てていくしかないだろう。そのためには、突然変異を支持する、裾野の広い、広範な環境や支持ネットワークが必要だ。


     


    既存の境界を自由に行き交うネットワークの広がりを作り、そこが新しい動きを一つずつ積み上げ形を作っていく、事業を一つの方向性に束ねていく新しい力。そんな力を、強く持たなきゃいけない。


    単純な利潤動機で関係者を引っ張っていければ良いけど、非連続な変化は、たぶん、そういう素直なファイナンスでは面倒が見きれない。たぶん、今必要となる非連続な変化には、突然変異とそれを支える環境が必要になる。まさに、社会の遺伝子が、この突然変異は大切にしなきゃと思って、好んで変化しようとするような、そんな環境。


     


    そんな思いでネットを見ていたとき、偶然見つけたのが、遺伝子学では大家の村上和雄先生の次の一言だ。


     


    - 遺伝子の スイッチをオンにするに必要なのは「笑い、感動、感謝」。

     


    そう。その通り。今、色々な意味で社会に欠けているのは、「笑う」こと。「感動」すること。「感謝」すること。何かあれば、すぐ他人の欠点をあげつらい、自分自身で何かを感じ取ろうとせずに常に社会のフィルターを通そうとし、そんな自分の環境を呪うことを専門にしている人が多すぎる。渋澤さんのブログのコメントにも、痛く共感。


    金銭動機で、人を束ねることができないのなら、「笑いと感動と感謝」で人の力を束ねよう。「笑いと感動と感謝」でネットワークを広げることによって、いつか出てくる突然変異を暖かく迎えられるよう、既存の境界に振り回されない社会を作っておこう


    別に成長を嫌っているわけではない。ただ、今の仕組みの延長線上に、成長を信じろといっても、とても信じられない。だからこそ、突然変異を許容する社会を、そうなるまでのミクロの生活を大切にする社会環境を、多くの人達が望んでいるのではないだろうか。


    「笑いと感動と感謝」の第一歩は、褒め合うことだ。すぐに金銭価値に換算できないValue作りは、「褒め合うこと」から始まる。その褒め生かしの積み上げから、笑いと感謝と感動が生まれてくると思う。褒め殺しならぬ、褒め生かしの時代だと思うのだが、さすがにまた今回も長いので、この辺で。。


     


     


     しかし、遺伝子のスイッチ、はやくみんな、オンにしないと、日本、本当にヤバイって・・・


     

    ※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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