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国のかたち 〜フィリピンで感じたこと〜
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ちょっと前の話になりますが、フィリピンに出かけてきました。活気に溢れるインドとは、また異なる印象のフィリピン。国のかたちって、本当に色々ですね。
1.なんとなくチグハグ
何やら批判めいて聞こえたら本意ではないんですが、この国、女性が強い。工場でばりばり働いている工員のほとんどは女性ですし、行政府もそうですが、ビジネスの枢要なポジションに女性が多数進出してらっしゃいます。本当に活力に溢れている。随所で女性が仕切っている感じがします。
これだけ働いていれば大変だろうと思うのですが、これまた凄くて、子沢山な方が多いこと多いこと。大家族だということもあるんでしょうが、職場復帰も早く、育児と仕事がしっかりと両立している感じがあります。なにより、自分が支えているんだというバイタリティーに溢れている女性が多い感じがします。
他方、こちらが今日の主題なんですが、なんていうのかなあ、あくまでも比較の問題なんですが、なんとなく凝集感がないっていうか、まとまりがないっていうか、ちぐはぐな感じが多いのも、フィリピンという国の特徴かと思います。
例えば、どこでどんな政策が行われていて、相互にきちんと整合性の取れた動きになっているのか。この国は、特に、そういう大規模な調整ごととなると、突然、不得手になる感じがします。(もっとも最近の日本の方こそ、他人のことを批判している場合じゃないかもしれませんが・・・)
幾つか例を挙げてみましょう。
例えば、思い切って電力自由化をガンガン進めるのは好いけど、電力需給全体の計画とつじつまがあっているのかっていうと、あってない。財閥の利害とは一致しても、需給自体とのズレが検証されていない。結果として、自由化の行方がよく分からなくなるために、実は、今、大手ユーザが、自社工場の電力供給先を探して契約しようと思っても、来年度分ですら、いまだに交渉相手が誰かはっきりしない状況にある。
<写真は、その悩みを抱える日本系の鉄鋼工場です。>

ミンダナオ島に大経済特区を作って、大規模な造船所の誘致計画を含めた産業集積計画を立てのは好いけど、肝心の造船所が来ない。そうこうしているうちに、コストをかけて一度立ち退かせたはずの住民が、こっそりと、もとの住処にどんどん帰り始めている。立地的に非常に面白い場所なのに、なんとなく歯抜けの状態のママ、それ以上誰も、計画をつめていこうとはしない。
<写真は、その計画地の中に、ぽつねんと立つ石炭火力発電所。目立たないように撮っていますが、左右の広大な土地が空き地のママになってるの、わかりますか?>

みんなが、その前後を平気で歩いてわたっている大通りに、突然ODAで歩道橋を造ってみる。空港から街に降りてくる道路をしっかり造っても、別の国道に抜けるまでに、街中のチャコチャした道を通らなくちゃならない都市計画が、そのまま放置されている。幹線が立派になっても、肝心のつなぎの部分が整備されてこない。
<写真は、幹線から幹線に抜ける街中の道>

地下鉄やライトレールを整備しようと思って、計画を立ててみても、結局中途半端な感じになって、バス頼みになっている。で、結局、バスも中長距離中心になってくるので、街中はジープニーっていう乗り合いバスが便利ということになるし、また、その運転手さん達の利害が整理できないから、結局、都市内部の交通の近代化も何となく足踏みする。
<写真はご存じ、ジープニー>

確かに、インドと同じように、経済成長中のある種の活力は感じます。実際、経済も成長しているのですが、ただ、それが何となく、インドのような突破力のある何かには感じられない。なあんとなく、成長してるけど、なあんとなく変化に乏しい。とても不思議な感じがする国です。
2.歴史的なもの、地政学的なもの
フィリピンっていうと、何となくマニラとかセブのイメージっていう、お恥ずかしながら、とてもナイーブなイメージしか持っていませんでした。しかし、改めて、地図とにらめっこしてみると、島の数の多いこと多いこと。その数は7109。ものすごい分立状態なんですね。
しかも、よくみると、何となく三角形な感じがします。僕は、若干縦長なイメージを持ってたんですが、むしろ、潜在的には東西にも広がりがあり、マレーシアやインドネシアとは、地続きな雰囲気もあるんですね。
もちろん、真ん中がぼこぼこに抜けてはいるのですが、中央部から左下にかけても浅瀬な部分が大きく、地球の気まぐれでもあれば、本当は、ひょっとして地続きだったのではないかと思わせるものがあります。もっとも、今現在は、西の方ほど、イスラム率が上がり、危険な地域も増えるようではありますが。

人口は9千万人弱。2020年には1億人を突破すると言われているそうで、日本が抜かれる日もそう遠くないのかもしれません。この地図と睨めっこしてるだけでも、これを一つの国にまとめていくのは大変だろうなあ、と思います。
ただ、更に言えば、この国は、まだ大地主制度が存続。これだけ広大かつ数多くの島々に分かれた土地の半分以上を、実は、数十人の地主とその家族が持っているんだそうです。だから、この国自身も、そうした地主連合体とも言えなくもありません。強固な市場経済と言うよりは、土地資産に支えられた財閥経済。財閥同士が、経済と政治を支えている、そうとも言えるのかもしれません。
やはり、本格的な農地改革を経た国と、経ない国とでは、基本的に経済の仕組みが異なるのだということを実感します。
例えば、インドの場合、膨大な人口の約7割が農業に従事し、世界第二位の耕地面積を誇ります。でも、例えば、TATAがそうであるように、必ずしも地主から成功する財閥が生まれて来ているかというと、そうでもありません。結構、一代で財をなしたタイプの財閥が強いのも、インドの特徴かと思います。
インドの農業も、生産性の低さには、相当に頭を悩ましています。この国の経済全体のボトルネックといっても差し支えないと思います。しかし、カースト突破の活力が日々増しつつある中、農業改革もこの3〜4年急速に進みつつあります。都市化現象と並行して、農業の抜本改革も、インドでは徐々に起こり始めているような気がします。
加えて、各地域が強い独立性を持つ文化でありながらも、もとより数千年の歴史を持ち、特に現代を見ると、ネルー、ガンディーといった人格で全体をリードする指導者を輩出し、各地域と中央政府を行き来する官僚人事制度も相まって、何とか、うまく国としての求心力を生み出すことに成功しているように思います。今のシン首相も、相当の人格者と伺います。歴史のある国って、やっぱり、必要な時に必要なリーダーが出てくるんですかね。
いずれにせよ、自らのことをあまり「インド人」とは呼ばせたがらず、「パンジャプ」だ、「ベンガル」だと言いたがる地域性と、これまでの殻を破って活力を持とうとする「インド」という部分とが、良い感じに交錯しているような印象を、少なくとも最近のインドには感じます。
これと較べると、また全然別のアプローチだなあと思うのは、中国です。共産党政権下、農地改革は徹底して行われたわけですが、求心力という意味でも、共産党の仕組みは圧倒的です。
ミッション設定と人事権は、しっかりと共産党側が握り、ミッション達成のための施策の企画と実行を行政が行う。農村戸籍の世界と、都市戸籍の世界という二重構造を爆発させずに、徐々に近代的な都市戸籍型の社会へと移行する、その微妙なコントロールには、共産党という統治機構が不可欠なのかなと、現地を見ると思います。
貧しい地域を一斉に都市で吸収できるだけの雇用創造力が市場にあれば良いんでしょうが、これだけの規模の人口となると、それはとても無理。となると、不平不満を抑えつつ、他方で、富を貯めさせすぎずに、都市部の雇用吸収力の拡大につながる投資の輪をちゃんと維持していく、そのバランス感覚は、相当な知性と現場感覚の両立の上に、初めて成り立つのかなと思います。
実際、良く本当に、これだけ多様かつ複雑な要素をまとめてきっているなと感心すること頻りですが、その分、割り切りも激しくならざるを得ず、心優しい感じが残るインドとは、また別の国民性が、涵養されていくんだろうな、とも感じます。
さて、我がフィリピン。こうした国との比較で見ると、中央政府の求心力が圧倒的に弱いなと。各財閥のテリトリーの中では、そこそこの経済成長が着々と動いているのだと思いますが、それが市場経済として完全に統合されているかというと、そうではなく、適度に妥協を重ねて、国としての形を維持しているという雰囲気。
このため、逆にアジア経済危機の時に、もっとも直接的な影響を受けなかったという別のメリットはあったようですが、全体を強烈に仕切ろうという個性は、あまり出てこないような気がします。この辺は、政府がグイグイ現場を引っ張っていってるベトナムあたりとも、また違う雰囲気ですね。
この国、肝心の稼ぎは、国民の2割とも言われている海外出稼ぎ組の貢献が多きい。なおさら、国内産業よりも、海外での人海戦術に頭が向いてしまっているようです。ちなみに、もうちょっと工夫すればどうかと思いますが、毎年、クリスマス前の時期に出稼ぎ組が一斉に送金するもんですから、この時期、ペソ高になるのが、例年の恒例行事なんだとか。
仕事上、お付き合いのある男性Exective陣は、どなたも立派で心優しい方々ばかり。とても良くしていただいています。が、その横には、かなりの頻度で、優秀な女性部長や女性課長がついておられて、彼女たちが、しっかりと、こちらの質問をサポートし、仕切ってくれるのも、また事実。
やっぱり、毒々しい男性が、ゴリゴリ仕切りに掛からないと、理不尽を孕むのが常の「大きな裁き」というのは、なかなか上手くできないということなのかな。何となくですが、見ていて、そう感じます。
3.パイナップル畑
今回、プロジェクト実施場所の近くに、デルモンテさんの工場と、その膨大なパイナップル畑があるというので、ランチを、その中の食堂でとることにして、クルマで横を通過してもらいました。
お恥ずかしながら、初めて見たんですけれど、パイナップルって、こんな感じでなってるですね。

見渡す限りのパイナップル畑。何とも言えぬ、爽快な風景でした。

この側に、デルモンテさんの社員福利厚生施設としてのゴルフコースがあるのですが、そこが、往年の名選手、ミモザさんのホームグランドなんだそうです。親日家で、時々コースに現れては、日本人のプレーヤーに話しかけることもあるんだとか。でも、そのクラブハウスも全く気取りのない食堂で、自分も、日本円にして400円程度のハンバーガー・ランチを頂いてかえってきました。

プロジェクトで訪れた日系工場も、もう操業30年以上の実績があるものですから、地元にもすっかり定着しており、ちょうどお昼を食べにこの食堂に伺った時も、OB・OGの方々が、楽しそうに集まって談笑しておられました。もはや子育て終わって、そこそこ現金もある裕福な人達ということではあるんでしょうが、一応に表情は優しく、また人生楽しそうな、幸せな感じが漂う人達でした。
確かに、道端をよく見れば、貧しい人達も沢山います。この生活から都市部の生活に出るまでが一苦労。そこからマニラに抜け出るまでがまた一苦労。そこから国際的に活躍する人材になるまでが、また超・一苦労と、道のりも遠いなとは思います。

でも、なんて言うのかなあ、フィリピン、一筋縄ではまとまりがきかない、複雑さを孕んでいますが、なあんとなく、女性パワーを核に、それはそれで、穏やかな社会を、7000もの島に囲われて、ひっそりと過ごしている。そんな感じがする国でした。マニラといった首都だけ見てると、何だか、あんまり他のアジア諸国と変わらない感じがしますけれども。。
4.国のかたち
きりがないので取り上げませんでしたが、他にも例を挙げ始めれば、韓国には韓国の、またタイにはタイの、アジアの中でもまた、それぞれ全く違った国のかたちがあります。そして今、日本も、大きく、近代日本から、大きくその「かたち」を変えつつある、うねりの中にいるんだなあと思います。
温暖化対策もそうですが、政策の話だけしていると、国という同じ質のものが、同じように国連で一票を持って、政策競争をしている。そんな感じがします。でも、一度、生の社会に目を向け、そこを秩序立てている政治的なフェーズを見回してみると、本当に、仕組みもカラーも色々だなと、改めて感じざるをえません。
どの国のかたちにも、一長一短あると思いますが、でも、日本にとって、そういう違う社会と生活をじっくりと見据えながら、でも、更にアジアと緊密な関係を結んでいかなくてはならない。そういう時代が来ているからこそ、もっとアジアへアジアへ。できれば首都以外の生活の現場へと、もっともっと、日本人も入り込んでいかないといけない。政策や理屈だけの議論や相互理解だけでは、とても先には進めないなあ、と強く実感くしつつある今日この頃であります。
リアルの楽しさ、リアルのワクワク・ドキドキさ加減。そのさじ加減の中に、その国の何かを理解する重要なヒントがある。外形的な理屈だけに捉えられず、そのリアルのダイナミズムを素のまま捉える感性こそが、海外展開を必要とするこれからの日本経済にとって、最も大事な資質の一つになっていくのではないでしょうか。
何となく、まとまりのない終わり方で恐縮ですが、今回は、この辺で。
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