最終更新時刻:2008年10月7日(火) 13時05分

4

ITコーディネータ カンファレンス

公開日時:
2007/10/20 16:13
著者:
村上敬亮

早速、「iPodネタ」からの脱線です(苦笑)。申し訳ございません。 
先週の金曜日、ITコーディネータの集まりに出てくる機会があったので、その流れで一つエントリを。

自分は、2000年に、「CIOなど雇用する余裕がない中堅・中小企業を念頭に、ITと経営の架け橋となる専門家を育てよう。」、そんな思いで、NPOの協会が認証し活用を広めるITコーディネータという資格創設の提案を書きました。あれから7年。先週金曜日のことですが、仕事で、しばらくぶりに、ITコーディネータ協会が主催する年一回の集まりに呼んでいただきました。大田区産業プラザの会場には8百人くらいの方々がお集まりでしたでしょうか。整然とした熱気に、やや圧倒される思いでした。提案から7年、制度創設から6年で、類型認定者数は7000人を超えたとのこと。「最低3000人が目標、でも、そんなに上手く作れるだろうか・・・」そうぼやいていた当時から考えると、本当に夢のようです。

当時、中小企業施策担当でもなかったのに、何故、この問題に取り組もうと思ったのか。この切り口から、当時の思いを振り返ってみたいと思います。

ご存じのとおり、情報サービス業は多重下請構造で有名な産業。実際、地方では、道を挟んで反対側にユーザさんがいるのに、わざわざ東京の大手ベンダさんを経由して仕事を取りに行く、なんてことが珍しくない業界です。でも、地元企業にとっては、首都圏の大手ベンダが自動的に仕事を回しくれるというのは楽なことです。市場が拡大している時代は、大手ベンダも比較的スムーズに仕事が取れますから、下請企業はユーザと難しい話し合いを直接しなくても業界身内で話せば済む、それは、市場の成り立ち・経緯もあるとはいえ、ある意味合理的な判断のような気がします。

しかし、本当にこのままで良いわけはありません。情報サービス業自身の行動が大切なのはいうまでもありませんが、個人的には、この問題で存外重要なのは、ユーザ側の取組ではないかと考えています。

ITの場合、やはりユーザ企業とベンダ側とのリテラシーの差は非常に大きいのが実態です。結果として、システムや技術を選ぶ能力、決める能力を十分に持てないままベンダにシステム開発を依頼せざるを得ないことも多いでしょう。ですから、開発が始まってみてから、途中で仕様を大幅に変更したくなる場合も頻発するし、体制追加などのプロジェクトの変更もしょっちゅう必要になる。でも、ユーザと直接話しているベンダは、長期的な取引関係の継続が大切ですから、仮に途中で想定外の作業量が発生しても、よほどのことがない限り、契約変更をせずに、今ある契約関係の中で処理しようとします。そこで問題が発生してきます。

第一に、そういう無理が利かないといけない市場だから、お客さんから直接受注するのは、多少のトラブルでもびくともしない、財務力のある大手ベンダがどうしても優位になる。地元の中小のベンダにとっても、そんな無理してリスクをとらなくても間にとってくれる大手ベンダがいるなら、その方が楽だという話になりがちです(むろん、地域でも、直接ユーザから仕事を取って頑張ってらっしゃる方もいらっしゃいますし、下請でも立派な仕事で現場を支えている方はたくさんいらっしゃいます。)。

第二に、各プロジェクトで発生した課題の短期的な皺取りは、下請作業をする協力会社に寄せられます。その下請業者の側でも、最初から最大限の稼働にあわせて人数を投入すると無駄が生じるし、どうせ後から追加協力依頼が降ってくる可能性があることは分かっているので、様子を見て人を出す。それで自社のリソースで足りなくなれば、いろいろな貸し借り関係の中で、そのまた協力会社に協力を仰ぐ。

色々な説明の仕方があると思いますが、一つには、こうした取引関係が繰り返される中で、「多重下請」とみえる人材調達構造の輪がどんどん広がっていく仕組みになっているとも言えると思います。また、こうした計画の立てにくさが、3K職場と揶揄されがちなマネジメントの難しい現場を作ってしまう。

こうした多重下請構造は、この業界に特有のおかしな現象です。しかし、成り立ちを情報サービス産業の事情からだけで見れば、財務力のある大手が発注能力にバラツキのあるユーザから一括して受注するのも、読めない工数に対してとりあえず必要な人の貼り付けでスタートして、必要に応じて協力会社に人の融通を頼むのも、ある意味、やむを得ざる面があるのではないでしょうか。本来、技術やサービス品質による差別化が有効なら、もっときちんとした市場競争がベンダ側主導の取組で出来ていくんだと思います。しかし、残念ながらこの市場でその差別化をアピールするのは大変難しいことです。ややもすれば、技術力ではなく営業力の問題なってしまいがちです。ユーザ側が、その違いを理解することが難しいという基本的な問題も残されています。

こうした状況を変えて行くためには、どうしても、ユーザの発注力の向上が避けて通れない。そして、ユーザとベンダの間の責任分解点を明確化していくことが大切ではないかと僕は考えています。これは、もちろん、中堅・中小企業がユーザの場合でも同じこと。そこをユーザ側の視点に立ってサポートすべき人材が足りないからこそ、この市場も、成熟度が上がっていかないんだと思います。また、それは結果として、市場全体の規模の拡大に限界が来つつある中、地域の情報サービス産業自身の首も絞めているのではないでしょうか。

しかし、当時、これは難題でした。ITコーディネータという形で、ユーザの立場に立ってITのコンサルができる人を全国展開しようという志は良いですけれど、そんな人、地域にいるのか?これまでほとんどなかった人材市場が、数年でいきなり大きく立ち上がるわけはありません。正直、不安でした。ITコーディネータの制度提案を一緒に考え、協会を立ち上げてくれた当時の皆さん、そして早い段階から、この資格で頑張ろうと言ってくださった皆さんが頼りでした。

だから単純に、先週金曜日、大田区産業プラザで800人の方を目の前にして、嬉しかったんです。もちろん、ただ資格取得者数が増えたからといって、単純に喜ぶわけにはいきません。ある活動を面で拡げる仕事には、どうしても、色々な思いや意図の方を、一つの運動論の中に複合的に巻き込み、継続的に活動を維持していくことが必要な面はあります。しかし、それを言い訳にして、制度をご利用いただくお客様の期待を大きく裏切るような人選をしたり、能力認定に大きなミスがあったりしてはいけません。現在のところ、いろいろな評価はあるものの、有り難いことに、この分野で中堅・中小企業の役に立ちたいという思いの連鎖がITコーディネータ制度をひとつのきっけにして続いているのは、確かなような気がします。こんな形で記事に取り上げられることも多いようです。だからこそ、更に身を引き締めて、中小企業のIT化の問題に取り組んでいかないといけないな、そう改めて実感した一日でした。

今回取り上げた、情報サービス産業の下請構造問題、iPod話とは別かもしれませんが、このブログでも、繰り返し出てくるテーマになるかもしれません。ユーザ側の調達能力の強化、これは、個人的に情報産業政策としてずっと追いかけてきているテーマです。

編集部から、これはブログなので、中味の継続性もさりながら、もっと気軽に書くこと、更新頻度を重視することと、とのアドバイスをいただきました。それを口実に、早速脱線してしまいました。なかなか慣れませんが、もう少し、簡潔に書けるように、今後、工夫していきたいと思います。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

3

いつも楽しく拝見しております。

便利さの裏側に垣間見える公私“混線”
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/NPC/20071024/285329/?set=bpn

の指摘は、政府として考えるべきヒントが多く含まれていると思います。

もし“私”に依存しすぎ、その立場を濫用し始めたらどうなるかと危惧します。しかも国外依存であると、日本として更にその危惧は増すかもしれません。

情報産業と情報安全保障についての村上さん論を、ぜひ拝見したいと思います。


国立国会図書館でWARPという事業がありますが、米のそれには遠く及ばないですし、情報大航海プロジェクトとかも規模は小さいように見えます。情報安全保障の観点からも、このようなプロジェクトは国家規模で、防衛省、ある日時におけるインターネットの情報検索を必要とする特許庁、法務省、文科省などももっと巻き込んでみてはどうかと思います。

  topi on 2007/10/27

2

村上さんのコラム(ブログ?)楽しみにみてます。いつも村上さんのインサイトには勉強させられます。これからも読者として楽しみにしてますね。

  katchaman on 2007/10/25

1

ユーザーのリテラシーの低さ云々とのご指摘、深く同意します。
そのユーザーの側で、経営幹部への理解を求め、連日苦闘中の身から申しますと、ユーザーのリテラシーの低さは、むしろ大企業、特にシステムの大ユーザーたる金融機関こそ、指摘さるべきこと、と考えます。
一般論で恐縮ですが、会社がある程度の規模になると、システムについてはどうしても社内別扱いというか、別人種のような取扱で、極端な場合、別会社化されることもまれではありません。ここから、現場ラインとシステムの乖離が始まってしまいます。
日本の金融機関の場合、さらに不幸なことに、平成不況時のコストカットによって、絶対に切ってはいけないシステムにまでコスト削減が及び、今日の、国産金融システム不毛を招いているのはご承知のことと存じます。

  吉本2号 on 2007/10/23

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