再び、八王子に通り魔事件が発生した。
<八王子殺傷>現場近くで包丁購入 「誰でもよかった」
東京都八王子市の京王八王子駅ビル「京王八王子ショッピングセンター」で22日夜、「啓文堂書店」アルバイト店員、斉木愛(まな)さん(22)=中央大学4年、八王子市打越町=ら2人が殺傷された事件で、殺人未遂容疑で緊急逮捕された会社員、菅野昭一容疑者(33)=同市川口町=が、「現場近くで文化包丁を購入した」と供述していることが分かった。警視庁捜査1課は、凶器を用意した計画的な事件とみて、書店を狙った動機などについて追及する。
同課の調べに菅野容疑者は淡々と応じているといい、「仕事がうまくいかず、人を殺そうと思い包丁を買った。むしゃくしゃしてやった。誰でもよかった」などと供述しているという。駅近くのスーパーなど購入場所の特定を進めている。
大事件でマスコミに名前=2、3日前からむしゃくしゃ−八王子殺傷の菅野容疑者
女性2人が死傷した東京都八王子市の京王八王子駅ビル殺傷事件で、会社員菅野昭一容疑者(33)が警視庁捜査1課と八王子署の調べに「人間関係を含む仕事の関係で2、3日前からむしゃくしゃしていた」と供述していることが23日、分かった。
その上で「親も話を聞いてくれないので、大きな事件を起こせば、自分の名前がマスコミに出るようになると思った」と説明。同課は詳しい経緯を追及している。
と、ニュースにあった。「誰でもよかった」「大きな事件を起こせば、自分の名前がマスコミに出るようになると思った」という言葉が気になった。
ぼくは、「誰でも良かった」犯人は、誰でもなかったその他大勢の一人で、犯人が派遣社員で決して犯人は自分を特定して望まれていないことを示した。
ところが、派遣社員は、立場によるが、自分が何者かがわかりにくい。スキルを磨くようにできてないのだ。単純作業の繰り返し、そこには誰でもできる仕事はあるが、特定の人間しかできない作業ではない。つまり、自分が員数として必要だからであり、彼しかできないわけではないのだ。
人が足りないから来いと電話が来る 俺(おれ)が必要だから、じゃなくて、人が足りないから 誰が行くかよ(毎日新聞・誰でもよかった:秋葉原通り魔事件/上(その1) 孤独な心情、サイトに)
犯人は、自分らしさを求めることを辞めたとき、すべての人間とのつながりを切っていく。それは希望を自ら断ち切ることである。
確かに、派遣制度の問題もあるが、結局、「自分が何者かわからない」ということではないか。そして、そのことは同時に
「何をすればいいのかわからない」というのが、現在の日本を読み解くキーワードではないのか、ということだ。多くの政治家や官僚、不良債権を抱える多くの銀行、債務に苦しむ多くの衰退企業、貸し渋りに喘ぐ多くの中小企業、リストラされた中高年、フリーターの若者、社会的ひきこもりの人びと、犯罪に走る少年たち、ホームレスの人びと、彼らはダメになっているのではなく、「何をすればいいのかわからない」のではないだろうか。「何をすれば」というときの、「何」は、生きる意味や人生の目的といった曖昧なものではなく、どうやって充実感と報酬を得るのか、という仕事に結びつくものではないかと思う。(「13歳のハローワーク・おわりに」村上龍著/冬幻舎)
たとえば、会社をリストラされた人は、今まで作り上げていた自信を失い、自分を全否定された気になる。そこにあるのは、会社=自分の関係である。改めて、自分がつくべき職業を見つける前に当惑し、茫然自失してしまう。この「何をすればいいのかわからない」ことが、日本という社会では定職=自分という一般常識にとらわれ、「自分が何者かわからない」ことになるのではないか。
自分を誰かに認めてもらいたい。その感情はだれでも持っている。しかし、家族や会社などの非常に狭い環境の中で生活していると、誰か(特に一番信じていた人)に否定された瞬間、社会全体を敵に回した気分になる。八王子通り魔事件のようにマスコミに名前が出た瞬間に、俺は無名だが、あいつはマスコミに名前が出ている。あまりにも短絡的な感情だが、社会全体を敵に回した彼は気がつかない。もちろん、後になって悔やむことになるのだが。
そのような彼に対しては、社会は説得力を失う。たとえば、「この人にも家族や愛している人がいるのだから、助けてあげなさい」と説得しても、そのことが愛されない自分、家族から阻外されている自分が頭に浮かび、カーっとなって犯行を続ける。
「WaiWai」「あるある」から見るメディア論を書いていて思ったことだが、いつのまにか社会が人を育てる機能を失ってしまったことだ。かつては、家族で対応できなければ、近所や地域のコミュニティが空いた時間を使って子供たちの面倒を見た。また、近所の子供たちが一緒に遊び、学びあう機会があった。遊びや勉強でもそれぞれ得意な子供がいたし、そうやって自分が将来は何をしたいかを学ぶ仕組みがあったはずだ。ところが、近所同士の付き合いがなくなると、子供たちの世界がひどく狭くなった。もちろん、ゲームやケータイで付き合うのもいいが、ともかく人間同士の付き合いが必要である。
ぼくは、「メディアはなぜ孤立化を好むのか」で、心理学者の小此木啓吾氏の「一・五の時代」について引用した。
たとえばいままでの人と人とのかかわりを「二」という数字で表すと、現在の情報機械と人とのかかわり、コンピュータとのかかわりなどは「一+〇・五」つまり「一・五」のかかわりだと私は比喩的に表現しています。
「孤独」ということについて考えてみても、子供がひとりきりになる、あるいはひとりで自分の部屋にこもったりすると、文字通り一人きりで、昔は日記をつけたり本を読むなどしたり、自分の心の中でいろいろなイマジネーション、思考、思索、瞑想をふくらませていく一人だけの時間とか経験がありました。
それが二・〇か一・〇かという心の条件で暮らす時代でした。ところが現代の子供の場合には、父親・母親に叱られると、すぐ自分の部屋に入ってウォークマンに聞き入ってしまう、TVをつけて面白い番組を見る。最近だとコンピュータ・ゲームにふけることになります。いわば情報機械の特徴は、機械ではあっても、そこにはいろいろな人間的な情報がたくさんインプットされていて、それが一つの擬似的な人と人とのかかわりを代行してくれるという意味があります。そこで人とのかかわり以上に面白いインタラクションを経験させてくれます。そのなかに、ほんとうの人間はいないけれど、こうした情報機械と二人でいる、つまり一・五というわけです。(小此木啓吾著「現代人の心理構造」NHKブックス)
現代から見れば、いささか古い表現だが、この一・五世代が蔓延していることは理解できるだろう。ぼくは、その後に、こう続けた。
このメディアは、人工物だから自分の都合でON・OFFできる特徴がある。メールができなかった時代の携帯電話は、相手の都合を気にしなければならなかった。だが、メールができるようになって、そんな相手の都合も関係なくなる。その瞬間、自分のパーソナルな空間がその分広まったような気分になる。そしてこの友達関係も簡単にON・OFFできる関係となってしまった。
そうなると、友達もメディアも同じことである。OFFされた友達は、なぜ関係が断ち切られたかを悩むようになるし、そのことを直接相手に伝えることもできない。一方、ONするほうは自分の趣味趣向があった人間のみと付き合うようになる。人間関係の輪は、自分とそれ以外の大変孤立した関係となる。(「メディアはなぜ孤立化を好むのか」)
こうして現代社会は、本人にとってあまりにも都合のよい社会が作られてしまった。なぜなら、気に入らなければOFFしてしまえばよいからだ。こうなると、人を育てることは大変難しい。叱った瞬間に、キレたり、泣いたり、学校に出なくなったり、ひどく直情径行(自分の思うままに行動して相手の立場を思いやらないこと。礼儀知らず)な人間ばかりになってしまった。いわば、自分のほうをOFFしてしまうのである。そして、相手は当惑する。おそるおそる対応しなければどう変わるかわからないからである。
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まあ子供に元気よくそとにでろとか青年に社会参加せよと大声でいったところで場所がないわけですよ。で隠れてそうなネットカフェとかにマスコミが突っ込んでいってゴキジェットを噴射するとかそんな社会ですから、けっきょくのところマスと個人の嫌悪のぶつけ合いですね。