ホームサーバの戦い・第8章と第9章は、マイクロソフトがXboxを世に出すための経緯を描いた本「マイクロソフトの蹉跌―プロジェクトXboxの真実」(ディーン タカハシ著/元麻布 春男監修/永井 喜久子訳/ソフトバンク) を中心に述べてきたわけだが、Xbox360に変わってもマイクロソフトの目的が「ネット配信のためのセットトップボックス」にあることは変わらない。
後藤弘茂のWeekly海外ニュース「Wiiに逆転されたXbox 360の巻き返し戦略」に、
Microsoftにとって、この問題が痛いのは、Xbox 360のキャラクタが固定され、市場の伸びしろを奪われてしまう可能性があることだ。つまり、Xbox 360はコアゲーマー向けという認知が広がり、タイトルもコアゲーマー向けに偏重すると、ますますユーザーがその層に固まり、ゲームベンダーもコアゲーマー向けタイトルの開発に偏り、ますますカジュアルゲーマーが遠ざかるといった、ネガティブスパイラルが回り始めてしまう。
もちろん、コアゲーマーの獲得がMicrosoftの目的ならそれで問題はないのだが、Microsoftの狙いはもっと大きいところにある。もともとは、ゲーム機という家電が、将来、リビングルームのメディアセンターに育つのなら、それを押さえよう、というのがMicrosoftのXbox戦略の原動力だった。もっと具体的に言えば、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)がそのポジションを獲る前に、自分たちで獲らなければならないと考えた。Xbox部隊の現場はともかく、Microsoftの上層は、そうした戦略でいたと思われる。
今では、ゲーム機だけがメディアセンターに化けるというビジョンは色あせてしまっている。しかし、コンピューティングパワーを考えれば、デジタル家電の中でゲーム機が、パワフルなメディアセンターへの最短距離にあることは確かだ。
これについては第9章ですでに述べているので繰り返さない。さらに、Xbox vs PS2(ホームサーバの戦い・第8章)で取り上げた任天堂買収のときに、任天堂アメリカの副社長の言葉
「それに、我々のゴールと向こうのゴールが違っていることがはっきりしてきた。ソニーとマイクロソフトは似た戦略をとっているようだ。だが、我々は200億ドルのゲーム産業はそれだけでひとつの市場と考えている。デジタルワールドが収束し、市場が統合されていくという考え方もあるが、だからといってわが社の資産を複数のメディアにまたがらせる必要は感じていない。ゲームのコンテンツにひたすらこだわることこそ、我々にとって大いに役立つと信じている」
と批判しているように、コンテンツにこだわることでひたすら伸びてきた企業と、コンテンツを足がかりにしてさらに大きな世界に飛び出していこうという企業の差が、現在のWii全盛期を作り出しているという皮肉な結果となっている。
WiiとXbox360の違いを述べてきたが、それをゲームから離れてセットトップボックスの面から、Xbox360とアップルテレビの違いを考えてみよう。
それは、ある意味、Xbox360とアップルテレビの目的の明確さの違いでもある。アップルテレビは、iPodでより快適に音楽をダウンロードできるスタイルを作ったが、アップルテレビではそれをネット配信のスタイルまで高めた。僕は、第2章「Apple TVの衝撃」やジョブズとソニーBiPodとウォークマンで、アップルとは
アップルはメーカーと言うよりは、むしろライフスタイルを提案する会社(前刀禎明氏)
なのである。そして、かつてのソニーもまたライフスタイルを提案する会社であった。Wiiが成功したのもまた、ゲームにライフスタイルを提案することができたからだ。その点では、マイクロソフトは策や方法におぼれすぎていた。これからの勝者は、コンテンツ重視のライフスタイルを提案できる会社なのではないだろうか。
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