最終更新時刻:2008年9月8日(月) 17時55分

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総ツッコミ時代の原点はコント55号

公開日時:
2007/08/26 22:49
著者:
mugendai

@総ツッコミ時代とは

 漫才にボケとツッコミがあることはご存知だろう。

ボケとツッコミ

 2名の演者は、ボケ役とツッコミ役と呼ばれる二つの役割に分けることができる。

 ボケ役は話題の中で面白い事を言うことが期待される役割である。話題の中に明らかな間違いや勘違いなどを織り込んで笑いを誘う所作を行ったり、冗談などを主に言う。

 一方、その相方は、ボケ役の間違いを素早く指摘し、笑いどころを観客に提示する役割を担う。ボケ役の頭を平手や軽い道具で叩いたり胸の辺りを手の甲で叩いて指摘する事が多い。この役割はツッコミと呼ばれる。

 私たちは、漫才を見るとき、ツッコミ役の人になってボケ役の人にツッコミを入れる。したがってツッコミ役は常識人の役割が持たされる。このツッコミとボケの落差が大きいほど面白い。ピン芸人の場合は、ストレートに視聴者がツッコミ役になる。(追記/と思ったが、綾小路きみまろのように視聴者という常識人にツッコむ非常識なツッコミという役割を持つ芸人も存在する)

 さて、インターネットの時代になると、たとえば2チャンネルのテレビ実況のようにテレビを見ながら視聴者がツッコミを入れていく。それを動画にコメント(ツッコミ)を入れる「ニコニコ動画」や「ニフニフ動画」などがある。この誰でもテレビにツッコミを入れる時代を僕は総ツッコミ時代と呼ぶ。(一億総ツッコミ時代と呼びたいがそこまでネットは普及していない)

A「電波少年」がテレビツッコミの始まり

 現在、テレビでは多すぎるぐらい字幕(テロップ、スーパー)が多いが、かつてはそれほどなく難聴者に向けてNHKが多かったくらいであった。

電波少年とは、

 199275日にウッチャンナンチャンの番組のあとを受けて番組が開始された。スタジオトークでは松本明子と松村邦洋二人とゲストの顔だけを映し、背景はクロマキーで、CG合成するという、それまでにない斬新な手法が用いられた。当初は「アポなしロケ」という、2人やゲストが事前許可(アポイント)を取らず多くの著名人に様々な依頼を敢行するという企画を中心に行われた。そのスリリングさから人気を博したが、たびたび「無礼だ」などと抗議の的となるお騒がせ番組でもあった。(Wikipedia電波少年)

 斬新とはいうが、要するに予算がなかっただけである。その理由は、

 ウンナンが映画でウッチャンナンチャン with SHA.LA.LAに出られなくなり、その中継ぎとして製作から急きょ土屋(敏男)に「何かやれ」と持ち上がった話だった。 当時、ビッグタレントにおうかがいを立て、自分の本当にやりたい企画もすぐに拒否されるそれまでのTV作りにうんざりしていた土屋は、数字取れなくてもいいからそのストレスを全部ぶつけてやろう、と考えた。仮タイトルは「やったろうじゃん」だった。松本と松村は編成で既に決められており、当時二人を全く知らなかった土屋は「このツーショットなんて誰も見たくないだろう」と顔だけのCG合成を決める。社内的にひっそりと始まった第一回目だったが、視聴率12%と好調。結局ウンナンの番組に戻ることは無かった。

 タイトルは「やったろうじゃん」ではなんだからと、作家・都築が「怪傑電波芸者」を提案(中村敦夫の発言を受け)。しかし製作局長が「芸者はダメ」とNG。そこで、作家そーたにが「電波将軍」と滑舌悪くいったところ、土屋らに「電波少年か、いいねえ」と勘違いされる。更に「少年なら「進め」だろう、という」ことで「進め!電波少年」のタイトルが完成した。(Wikipedia電波少年)

 内容は十分怪しいが、実はこの番組、ツッコミ役の人間が登場せず、それをツッコんだのはナレーションや字幕であり、おそらく日本で最初のテレビツッコミ番組だった。この番組のプロデューサーだった日本テレビの土屋敏男氏は、その発想の元はコント55号だったという。

(土屋) コント55号がNHKのテレビに呼ばれてコントをやったとき、舞台の上に「ここからここまででやってくださいね」って 線が引かれたんだって。テレビだから、それは当然でしょ?ここを出たらカメラが追いかけ切れませんよ、という線がある。大将(萩本欽一)はそれがすごくやりづらかったんだって。 だから、出てやったんだって()。線を越えて、カメラのフレームからコントが出てしまうのよ。そしたら、それがまたおもしろかったんだって。

(高須光聖・放送作家)なるほどなるほどなぁ。

(土屋) 55号のコントって、二郎さんって言う人をどこまで振り回すか?っていうのが形だったでしょ。 ある程度までは決まったパターンがあるんだけど、それがどこまで行くかは分からない、だからおもしろい。二郎さんというキャラクターのドキュメント。いいツッコミが決まれば、それはどんどん止まることなく 広がりを見せていく。相手を素人に変えても同じ事が言えるよね。うまくやりさえすれば、どんな些細なことだって こっちがどんどん広げて、演出していけるんだよ。それを俺は『電波』で活かしたかったんだ。だから編集やナレーション、テロップでつっこむことで 成立させていったんだよ。

(高須)電波のスーパーとかはうまいなぁと思ってみてましたよ。ナレーターのKYOYAさんもホントにうまかったですしね。いい声で、絶妙のテンションですごいなぁと思いましたよ。

(土屋) だけど、テレビが進化すべき部分で言うとね、大将が開発したやり方を、俺なりに咀嚼してやってみたわけだよ。大将はスタッフが画面に映ったりするのをすごくいやがるけれど、俺はそこをやぶって、ツッコミはスタッフがやる、というのを 新しくやってみたんだよね。それは大将としては絶対「NO」なんだろうけど。だから、今度は『電波』をひていするパワーを持ったヤツが 出てこないとダメなんだよ。ないしは、それがでてこないのであれば、これからの俺が、過去の自分を超えてやらなきゃいけない。俺が『電波』を否定して、おりゃぁ!って行かないと いけないのかなって思ってるよ。

(高須光聖オフィシャルホームページ「御影屋」)

 ボケ役は登場するタレントたち、ツッコミは編集やナレーション、テロップである。なぜ、土屋プロデューサーはコント55号の方式を採用したのだろうか。

 そこで普通の漫才とコント55号のボケとツッコミはどう違うか考えてみた。コント55号のコントを書いた岩城未知男氏は、その名も「コント55号のコント」(岩城未知男著/サンワイズ・エンタープライズ)と書いた本で

 第一に、与太郎型のボケを止めようと云う事である。コントと言うと、落語や漫才の影響が強く、必ず与太郎型のボケ役が登場する。如何に、“笑い”は優越感から生ずると雖も、余りにも、日常性から懸け離れたおどけは最早、素直に笑えないのではないだろうか。そこで、コント55号の場合に、ボケ役の坂上二郎は決して、異常な人物設定で登場しない。少なくとも、ステージへ現れた時点では、決して欠陥人間ではない。何処にでも居そうな、平凡で、善良な一市民と云った設定が原則である。逆に、ツッコミ役の萩本欽一の方は、やや異常な性格を帯びて登場して来る。ある場合には、独善的であり、偏執的であり、強度にヒステリックであり……と云う様に。つまり、異常な性格を持った萩本に、執拗に振り回されることによって、観客と同じ次元に居た、正常な坂上が、無理矢理に常軌を逸した行動をとらされる羽目に陥って、その結果として、ボケ役を演ずる訳である。

 冒頭で「ツッコミ役は常識人の役割が持たされる」と書いたが、コント55号の場合は、「ボケ役が常識人の役割」になっている。さらに、「言葉の達人たち」(阿久悠編/扶桑社)に萩本欽一はこんなことを語っている。

 それで、笑いってのはね、皆さんもツッコミとボケという言葉はよく知ってると思うんですけど、ツッコミとボケだけですと、笑いがきつくなるんですね。

 本当の笑いっていうのは、ツッコミがあって、ボケがあって、その次にウケがある。これが本当の笑いなんです。ですから皆さんの覚えてるツッコミとボケっていうのは笑いじゃないんですね。

 ツッコミ、ボケ、このウケっていうのを言ったコメディアンは、私だけ。

 ツッコミっていうのは、相手を鋭くつくとかね、欠点をつくとか、そういうことですね。ボケというのは、つっこまれておどけるっていうんですか。その次に、つっこんでいじめた相手をちょっと受けてあげる、つらい目にあわせないであげる、気分を和やかにするというんですか、それがウケ。本当の笑いは、この3つで成り立っているんですね。

Bトークバラエティーのボケとツッコミ

 たとえば、「行列ができる法律事務所」の島田紳助や明石家さんまのトークバラエティー。紳助は紳助・竜助のときは、ボケ役だったが、現在の番組では、タレントたちをボケ役にして自分はツッコミ役になっている。

 面白いのは、「紳助・竜助」「ツービート」「BB」などかつて一世を風靡した漫才師たちのうち、現在残っているのはいずれもボケ役だったことだ。つまり「常識人」であるツッコミはよほど別の才能がない限り、相手がいなければ、単独で生き残るのは大変難しいのだ。

 

Cツッコミはボケを動かさないと面白くない

 欽ちゃんの場合、素人相手でも面白いリアクションを導くことができる。インターネットの場合、ツッコミをしただけでは自己満足になるのではないか。ツッコミが本当に社会を動かす存在にならない限り、その場限りのものになってしまうだろう。それは、欽ちゃんの言う「ボケ・ツッコミ」だけで「ウケ」がないことなのではないだろうか。

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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