CNET Japan「番組のコピー、9回まで容認 デジタル放送審議会専門委」によると、
情報通信審議会(総務省の諮問機関)の専門委員会は12日、現在は1回しかできないデジタル放送のテレビ番組のコピーを9回まで可能にする制限緩和実施でほぼ一致した。
とあるが、もう少しその事情が書かれた記事がある。
たとえばTeck-onの記事「家族3人が3台の機器にコピーする??地デジのコピー・ワンス見直し問題は「n=9回」で決着」によれば、
村井氏によると,n=9の根拠は3×3。録画したコンテンツに対し,一人あたり機器3台までコピーを許し,それを家族3人が行うという考えで計算した。コピー数3という数字自体はもともと,権利者サイドの委員である実演家著作権隣接センターの椎名和夫氏などから出ていた意見である。村井氏の提案はこれに「日本の平均的な家族の構成人数」(村井氏)である3人を組み合わせた形になる。家族3人,機器3台というのは考え方の話であり,1種類の機器に対し,9回コピーを行ってももちろん問題ない。
この提案を受け,椎名氏は「コピー数3という主張自体は取り下げないが,主査の提案は本検討委員会の成果として承る。長きにわたった委員会の議論の成果を壊すつもりはない」などと述べ,主査提案に反対しない意向を示した。ただし椎名氏は「再三述べているように,この合意は私的録音録画補償金制度の存続が前提。この前提が崩れたり,コピー制御の緩和で海賊版が溢れたりといった状況になった時には,再度,検討をやり直すという立場を留保したい」と釘を刺した。
椎名氏(実演家著作権隣接センター)の3という数字を、村井氏は家族数3人ということで拡大解釈したと読み取ることもできる。そうなると独り者はやっぱり3回だけなのかという疑問もわくが、今までの論調が3回までというところでとどまっていたところをできるだけ視聴者の便宜に合うように解釈したのだろう。他の委員も
「映画はコピー・ネバーが原則で10回という主査の提案には驚いた。この数字は受け入れがたいが,この場で席を蹴るつもりはない。主査にはこうした微妙なニュアンスをくみ取って頂きたい」
結局、物別れになったわけではないが、コンテンツホルダーとしては、村井氏の顔を立てて、ともかく話だけは聞きましたよということなのではないか。すると、CNET Japanの記事を単純に喜ぶべきとは取りにくいのである。
さて、アメリカではこのことについてはどう捉えているのだろうか。7月4日付けの読売新聞にこんな記事があった。
アメリカなどはコピーガードなし
「コピーワンス」は視聴者に大変評判が悪く、総務省は2005年にコピーワンスの見直しを放送事業者、機器メーカー、著作権利者に提案している。これを受け、有識者による委員会は2年以上にわたり見直しを検討してきたが、この3月、各者の思惑が交錯する中でたどり着いたのが「ムーブの回数を増やす」というオチだった。
実は米国を始め諸外国では地デジ放送にコピーガードなどはかけていない。ハリウッド映画も、ディズニー作品も放送局が放送すれば普通にパソコンで録画できる。この点に関して日本の放送局や権利者は「我々が世界で一番進んでいるのだ」と胸を張る。(フリーライター・南部健司氏)
あれほど、著作権にうるさいアメリカの映画会社が地元ではこんな感じなのはなぜなのだろうか。それは、日本ほど放送局に権利が集中している国は無いからだ。アメリカの放送局は何しろ自分たちで番組を制作することを禁じられているのである。
IT proのコラム「Joostに見るグローバルTVの可能性と限界(後編):日本のテレビ局はなぜインターネット事業に消極的なのか」によると
日米のテレビ放送産業の伝統的な違いが,Joostに対するスタンスの違いとして現れると尾関氏は見ている。米国では,1970年に連邦通信委員会(FCC)が定めたFin-syn rules(financial interest and syndication rules)によって,長らく主要テレビ局自身による番組制作が禁じられてきた。つまりABC,CBS,NBCという当時の3大ネットワーク局は,他の会社が製作したテレビ番組を放送しなければならなかったのだ。Fin-syn rulesは1980年代に緩和され,1995年に廃止された。しかしその名残から,いまだにテレビ局は単なる放送ネットワークに過ぎない。つまり番組の著作権を持たないのである。
では誰がそれを持っているのか。テレビ局を傘下に抱える巨大メディア・グループ,いわゆる「メディア・コングロマリット」である。あるいは象徴的に「ハリウッド」と言い換えてもいいだろう。例えばテレビ局であるABCの親会社はDisneyだが,彼らにとってABCとは自らが持っている映画やバラエティ,スポーツ番組など豊富な映像コンテンツを流すための一つのチャネルに過ぎない。そこにインターネットが加われば,メディア・コングロマリットは利益を最大化するために,条件さえ良ければちゅうちょすることなく,第三者が提供する配信サービスにも映像コンテンツを流すだろう。メディア・コングロマリットの一つである米ViacomがJoostと提携したのは,このためだ。
これに対して,日本ではいわゆる在京キー局が(別会社に制作を委託するにしても)番組の著作権を保有するケースが多い。米国とは異なり,番組(コンテンツ)と放送ネットワーク(メディア)が分離していないのだ。つまり番組はテレビ局の「所有物」である。その所有物を,自らの基幹事業であるテレビ放送と競合するIT企業(Joost)に使わせる理由がすぐには見当たらないというわけだ。
つまり、アメリカでは番組を制作した映画会社が著作権を持っているのに対し、日本のテレビ局は自分たちが持っている。したがって、インターネットに対しての立場が当然変わってくる。
映画会社は、自分達のコンテンツを視聴者に届けるためには、テレビ放送、映画館、ビデオ、インターネットなど他のメディアを通さなければならない。逆に言えば、映画会社は同じコンテンツでもそれだけの選択肢があるということである。アメリカのテレビ局としても同じだ。電波と制作が分離しているために、他のメディアを通す必要があるのである。日本では、電波と制作が一箇所に集中しているために、他のメディアを通す必要が無い。だから、インターネットを通すことを嫌うのである。自分の収益をそがれるからだ。ただ、政府から放送免許を与えられるために、とりあえず尻尾を振っているだけである。この問題が政府主導ですんなりいくとは思えない理由がそこにある。ともかく、テレビ局の問題を解決するには電波と制作を分離すること、それに尽きると思うのだが。
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