6月21日の朝日新聞にこんな記事が載っていた。
米紙ニューヨーク・タイムズは20日、売店での平日発行の新聞価格を近く25%値上げし、1部1ドルから1.25ドルに引き上げる方針を明らかにした。米ダウ・ジョーンズ(DJ)が発行する経済紙ウォールストリート・ジャーナルも同1ドルから1.50ドルに50%の値上げをすると発表している。
(中略)
米新聞大手はいずれもインターネットの普及によって、発行部数と広告収入が低迷。値上げを決めた2紙を含む主要紙が直近の四半期決算で減益または赤字転落するなど苦境に立たされている。
一方、こんなニュースが飛び込んできた。
6月22日1時47分配信 読売新聞
【ニューヨーク=小山守生】米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)は21日、米新聞大手ダウ・ジョーンズの買収を断念したと発表した。
GEは英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)を発行する英新聞・出版大手ピアソンと共同で買収を検討していたが、約50億ドルの高額な買収提案をしている米メディア・娯楽大手ニューズ・コーポレーションに対抗するのは難しいと判断したと見られる。これにより、ダウ社買収に名乗りをあげているのは現時点でニューズ社だけとなった。
ここでは新聞社の買収合戦である。一方では業績悪化で値上げをしなくてはならない新聞、一方では買収でどんどん拡大していく新聞。そういえば、日本ではテレビの買収は聞いたことがあるけど、新聞の買収は聞いたことがない。
「新聞の時代錯誤」(大塚将司著/東洋経済新報社)によれば、その原因は「日刊新聞特例法(
日刊新聞紙の発行を目的とする株式会社の株式の譲渡の制限等に関する法律)
日刊新聞を発行する新聞社の株式に関して、特例的に当該株式会社の事業に関係する者に制限する旨の定款上の規定を認める。株式会社の株式の譲渡制限に関する一般的規定を設ける会社法の特例法として位置づけられる。略称は、日刊新聞法など。
日刊新聞法で検索すれば、黒犬通信というサイトで
某・新聞社の経営者の方とお話していて、初めて日刊新聞法なる、商法の例外規定があることを知りました。勉強不足でした。この法律で、新聞社の株式の売買に制限がかかっているそうです。いくつかのサイトで見た情報だと、冷戦中(1950年、昭和25年)、共産主義的なオーナーの手に新聞社が所有されないようにするために、日刊新聞の発行を行なう新聞社の株式譲渡を、大幅に制限することを可能にした法律だそうです。
今日お会いしたトップの方も、これまでのビジネスモデル、これまでの読者層では、新聞社の存続はありえないとおっしゃっていました。透明度の高い経営、規制緩和、自由化、競争などといったことを声高に叫ぶことの多いマスコミ。ご自分たちの業界にとっては、ずっと対岸の火事だと思ってきたことが、広告収入が落ち込み、足元に火が迫ってきていることを、ひしひしと感じていらっしゃるのではないかと思います。新聞の後は、テレビでしょうか?今日お会いした方も、今のテレビのような、はっきり言って、視聴者を愚弄しているメディアが、世論の形成に最も影響力があることは、恐ろしいことだというご意見でした。
つまり新聞社の株には譲渡制限がかかっており、容易に買収ができないようになっているのである。さらに、新聞には再販制度と特殊指定がかかっている。新聞社が「表現の自由」や「戸別配達制度の維持」のために、再販制度のキャンペーンをするのも、安売りをするものが現れると、自分たちの収益がそがれるからだ。反対意見を言うものが現れると、新聞と出版のネットワークを使って封じ込めにかかる。何をするか。その学者の本の出版を妨害するのである。学者の発言の場はなくなり、当然学者は口を閉じざるをえない。しかも、新聞社はテレビと深いつながりがある。当然、テレビ出演など申し出るテレビ局など存在しない。いわば、メディアから「シカト」されてしまうわけだ。
こうやって生き延びた新聞もインターネットの波に生き残ることができるかどうか。
?新聞や雑誌などの紙媒体が紙を離れるときがくる
新聞や雑誌は、その記事内容をコンテンツとしてネットに供給する。その理由は、若者たちの新聞離れである。ネットで無料に読めるのにわざわざ購入する人間はいなくなる。また、フリーペーパーの増加が有料誌の販売を阻害する。そこで、新聞や雑誌はネット上で有料コンテンツを考えなければならなくなる。各紙一斉に報道される事件の記事は無料で出すが、内容を掘り下げた独自の取材や有名人のコラム、特集記事などを有料で供給する。
インターネットがどんどん普及すれば、わざわざ有料の新聞を読む人は減ってくるのは当然である。新聞は何のためにあるか。
先にあげた本「新聞の時代錯誤」(大塚将司著/東洋経済新報社)では、新聞は「言論報道機関」ではなく、「情報サービス会社」であるという。自分の保身のために「言論の自由」をふりまわす会社というわけだ。国民のために必要なメディアなら、インターネットの荒波が来ようと残るであろうが、ただの情報サービスなら世の中にはいて捨てるほどある。新聞の真髄はジャーナリズムだと説く人がいる。「新聞の時代錯誤」はあとがきの冒頭に
バルザックは皮肉を込めて『ジャーナリズム博物誌』の最後に「もしジャーナリズムが存在していないなら、まちがってもこれを発明してはならない」という公理を掲げ、締め括っている。その言わんとするところは「ジャーナリズムなんて害毒を流すだけだから存在しないほうがいい。もし、ジャーナリズムがないなら、そんなもの、作っちゃ駄目だよ」ということである。
日本にそもそもジャーナリズムがあったのか、それがはなはだ疑問であるが。
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ゆきちさん、コメントありがとうございます。これは、記事に取り上げた「新聞の時代錯誤」P208にこうあります。
鶴田俊正専大教授(再販制度廃止推進派)は95年7月にM出版社から「規制緩和と独禁法」というテーマで本の出版依頼を受け、一年後の96年6月中旬に編集部に原稿を渡し、作業は順調に進み、発行日も10月20日と決まり、一部の情報誌には出版予告の広告まで掲載された。ところが、9月中旬に異変が起きたのだ。M社の担当編集者から「このままでは出版できないので編集長と会って欲しい」という連絡が入ったのである。
それから一ヵ月、M社とすったもんだが続いたが、埒があかず鶴田教授はM社での出版を断念、筑摩書房のちくま新書『規制緩和』として97年1月にようやく発刊にこぎつけたのである。もちろん、M社に何処からか横槍が入り、態度が急変したわけではなく、単にM社が鶴田教授が展開した著作物の再販批判が、再販制度の維持・擁護を主張しており、自社の主張に反する本は出版できないという、いわゆる“自主規制”をしたのがことの真相のようだが、出版社も公的使命を忘れ、自らの私的利益のために出版権を濫用することを垣間見せたのである。
“出版妨害”は鶴田教授だけではなく、三輪芳