最終更新時刻:2008年7月25日(金) 21時03分

-

ジェットコースター事故から見える安全の不確かさ

公開日時:
2007/05/13 02:18
著者:
mugendai

 エキスポランドのジェットコースターの事故は、改めてジェットコースターとは大変危険な乗り物であることを思わせた。これはまた、かつての福知山脱線事故や流れるプールの事故、さらには各地の遊戯施設の事故等、安全管理がおざなりになっていることを感じた。その原因は何か。安全が目に見えないことだからである。かつての耐震偽装事件のとき、僕はこんなことを書いた。

建築主は「見える場所」には金をかけても、鉄筋という「見えにくい場所」には金をかけることを嫌った。そして購入者は「見える場所」のみを判断して「見えにくい場所」は見なかった。だが、乗客が「安全に命を守る」ことはあたりまえであるとして乗ったように、マンションが「地震から命を守る」のはあたりまえであるとして購入したはずである。しかし、いつの間にか「命を守る」ことが「見えにくい場所」に追いやられてしまったのだ。
私たちは、「命を守る」という根本常識を再び「見える場所」に引き上げなければならないのである。それしか、本来の安全な鉄道、安全なマンションに入ることはできないのである。(犯罪は入りやすい・見えにくい場所で起こる)

 

 ディズニーランドで一番の人気はやっぱり「マウンテン」の名がつくジェットコースターである。子供が乗っても安全なジェットコースターであったはずだが、遊園地の絶叫マシン競争で安全にコストをかけられなくなったのだろうか。この見えない部分に金をかけず、見える部分にのみ金をかけるのは、人の配置にも見て取れる。本来、プロが行うべき監視や視察をアルバイトや目視で済ませたり、書類上でごまかしたりするのは、安全の軽視というしかない。

 

 「安全」に金をかけない。しかも、本来目に見えないところこそ、気配りをしてお客に気持ちよく楽しんでもらおうというサービスが消えてしまった。この気配りこそが「安心」なのだ。だが、安全と安心はなかなか両立しないらしい。

それはなぜか。それは「安心」と「安全」がまったく別物だからだ。

 では、なぜ安全と安心がセットで追及されるのだろうか。それは、一方が現実の状態を表し、もう一方が心の状態を表す、別のことがらだからであり、それに加えて、両者は必ずしも連動していないからである。もし、災害が減少し世の中が安全なものになるにつれて、人々の不安も取り除かれ安心も高くなるのであれば、両者をセットにする必要などない。政府や企業は単に安全だけを高めれば人々の安心がついてくるはずである。しかし、実際にはそうは行かない。だからこそ、安全とは別に、安心も謳っているのである。政府や企業の立場では、安心という心の状態にアプローチできなければ、政策や商品への支持につながらず、安全を高めるだけで満足しているわけにはいかないのである。(中谷内一也「リスク情報」NHKブックス)

 

 さらに、最近報道されるのは、タクシー、トラック、観光バスなど運輸業界の厳しさである。規制緩和が異業種からの参入を許し、ほとんどの業界が派遣社員やアルバイトであふれている。ぎりぎりの睡眠時間、ぎりぎりの低賃金、いつ事故が起きてもおかしくない、なぜこんな状態までほっておいたのか。僕は「日本の無責任というシステムで医師不足に言及したことがある。

ハードな仕事であればあるほど、個人の責任が問われる。問題は医師不足に限らない。日本全体が責任を回避しようという傾向があるのではないか。例えばプール・エレベーター・公共遊具・シュレッダー・ガス器具などの事故が今、報道されているのはなぜか。おそらく発売されてから常におこっているはずだが、なぜか今取り上げられているのは、いくつか理由が考えられる。@報道を抑えている政治家・関係団体(例えば日本医師会など)の力が弱まっている。A報道がそのことに関心がなかった。B関係者からマスコミにリークがなされた。C本来責任を持って処理するはずの会社の担当部署が責任を取らなくなった。D被害者の泣き寝入りが減って訴訟など明るみに出そうという傾向になった。

つまり、個人の責任を追及する姿勢が顕著になるとともに、明らかになったのは会社側の責任体制の不明確さであった。そうなると、医師のように医師個人の責任が明確なものほど医師になろうという人間は減っていくことになる。

かつて日本の製品は海外でも良質で安価であった。このときは、いざトラブルが起きたとき、会社が責任を取るかたちでよい商品と引き換えた。またその原因は追究され。二度と起こらないようフォローが万全になされていたはずだった。だが現在では、責任は正社員から派遣社員に移り、派遣社員からアルバイトへと移っていった。今、日本の現在を取り巻く漠然たる不安の原因はこの無責任の転嫁により、いつ自分がその事故により、その責任の代償を払われることになるかわからない不安でもあった。

 「ジェットコースター」という乗り物は不思議な乗り物だ。「安全」なはずの遊園地で「恐怖」を売り物にしている。思えば、「スターウォーズ」も最近の「スパイダーマン3」も映像のそこここに「ジェットコースター」に乗ったかのような気分になれるシーンが満載されている。つまり、人々は「ジェットコースター」が好きなのだ。だが、それは安全であることが最低条件ではあるが。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

1

この種の事故は、原因が明確になり対策をうっても本質的にはなくならないとみるべきだ。とくに生産活動と関係ない人間の好奇心を追及する分野においては、人間の欲望は無限だからである。
この分野にたいする、特に新奇な装置にたいする生命保険会社の見解をしりたい。

  Funky on 2007/05/14

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

2008年7月
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

外資系エグゼクティブの日々今アーキテクチャが面白い
外資系エグゼクティブの日々
クロサカタツヤの情報通信インサイトインターネットのリュミエール
クロサカタツヤの情報通信インサイト
平野敦士カールのアライアンスInsightGoogleお前もか?
平野敦士カールのアライアンスInsight
江島健太郎 / Kenn's ClairvoyanceiPhoneという奇跡
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」サミット、サミット、そして今こそ!公衆無線LAN
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点暗黙共同体へ−秋葉原事件で考える
佐々木俊尚 ジャーナリストの視点

読者ブロガー

将来のPC業界パワーバランス最適なマウスの移動速度は?
将来のPC業界パワーバランス
電子政府パブリックコメントの抜粋パブリックコメントは国民に知られていなかった( 2 )
電子政府パブリックコメントの抜粋
個人・少人数制作アニメーション現代記 - 真狩祐志動画配信の影響なのかインターネット部門が「終了」
個人・少人数制作アニメーション現代記 - 真狩祐志

企画特集

DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」DELLが掲げる「新・仮想化アセスメントサービス」
〜企業システムの仮想化環境の構築を支援〜

新着コメント

ルート134さん。コメントありがとうございます。 >すべての情報にはス......
Googleというネットの巨大なメディアに支配される脅威
投稿者:新倉 茂彦
コメントありがとうございます。 「消費者・生活者を主役とした行政への転換......
パブリックコメントは国民に知られていなかった( 2 )
投稿者:sumimotoshohei
こういう余計な人がいなければ、知られずにアリバイ工作できたのに。 //...
パブリックコメントは国民に知られていなかった( 2 )
投稿者:ルート134
一般にも、うけているが、マニア系にはHPLXの後継機なのでしょうね。 XPにも......
iPhoneの影で馬鹿売れしているみたい
投稿者:ルート134
>制作についてはこれといって語られない。 今週、4ch(読売)で深夜に少......
動画配信の影響なのかインターネット部門が「終了」
投稿者:ルート134

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]高い信頼性を普通に使う地球に優しい電源ユニット--Antec EarthWattsシリーズ EA-650
“自作ユーザーは、電源ユニットに何を求めるのか?”出力なのか、安定性なのか、それとも機能性なのか?難し
オンリーワンの個性を極めた超薄型テレビ--日立 Wooo UTシリーズ
日立製作所の超薄型液晶テレビWooo UT 770シリーズは2008年6月にラインアップが増強され、さらに日立らしい
[レビュー]“この手があったか”と思わせるパワーユーザーも納得のPCオンデマンド--「VALUESTAR G タイプR Luiモデル」+「Lui RN」詳細レビュー
「VALUESTAR GタイプR Luiモデル+PCリモーター」は、設置場所にとらわれずにPCを使える、NECが新しく提案
今週の新製品総チェック:ドコモ、au夏モデルが続々店頭へ、ビデオカメラは新機種ラッシュ
NTTドコモ、auなど、ケータイ夏モデルの店頭発売日が決定し、盛り上がりを見せている。9.8mmの超薄型ケータ
[レビュー]テレビを持ち歩ける最強ツール--ソニー、Blu-rayレコーダー「BDZ-A70」
[レビュー]ネットワーク対応の高機能デジタルフォトフレーム--ソニー「Canvas Online CP1」
15時間の行列で手に入れたiPhone 3Gファーストインプレッション--ソフトバンクモバイル「iPhone 3G」
北京を見逃すな!--2008年夏、今買うべき「薄型テレビ」
[レビュー]通勤鞄に忍ばせたい軽さと装着感--マクセルのノイキャンヘッドホン「HP-NC15」