「メディアが少子高齢化社会を作った」というと、おそらく批判の嵐になると思う。だが、「少子高齢化社会がメディアの発達を促した」というと、どうだろうか。なるほどと思うのではないだろうか。つまり、どちらにしてもメディアの発達と少子高齢化は不可分の関係にある。
「夢物語」でミヒャエル・エンデの「はてしない物語」を引用したことがある。
「絶対にファンタージェンに行けない人間もいる。いるけれども、そのまま向こうに行きっきりになってしまう人間もいる。それからファンタージェンに行って、またもどってくる者もいくらかいるんだな。きみのようにね。そして、そういう人たちが、両方の世界を健やかにするんだ」(ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」岩波書店)
ファンタージェンとは、人々の夢でできた世界である。メディアを発明する人は、どういうときにアイデアをひらめくだろう。たとえば、寝ているときであったり、いろんな文献を読んでいるときだったり、何気なく心に浮かんだりさまざまである。いわば、自分の頭脳との交信によってひらめくのだと思う。そこで、「ファンタージェン」をひらめきの場所ととらえてみると、世の中にあるありとあらゆる発明物は「ファンタージェン」に行って帰ってきた者による生産物ととらえることができる。
そもそもひらめかない人は「ファンタージェンに行けない人間」であり、ひらめいても物を作ることができない人は「ファンタージェンに行きっきりになってしまう人間」となる。当然ながら、メディアにべったりで現実を見ない人もそこに含まれる。なぜなら、発明物を作るということは、現実に役立つということなのだから。そしてごく少数が「ファンタージェンに行って、またもどってくる者」であり、彼らが現実社会を豊かにしているというのである。
よくメディア批判をする人は、「ファンタージェンに行けない人間」のことであり、批判する対象は「ファンタージェンに行きっきりになってしまう人間」のことである。彼らには「ファンタージェンに行って、またもどってくる者」の姿が見えない。現実に彼らの発明物があふれていることも。
メディアの発達は誰も彼もが「ファンタージェンに行って、またもどってくる者」にあこがれてファンタージェンに行くのだが、大多数が「行きっきりになってしまう人間」になってしまうために少子高齢化になってしまったのだ。そして彼らはいつもこう批判される。「夢ばかり見ていないで現実を見ろよ」と。
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