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新たなる成長の扉をくぐることなく、好況ということなかれ

2004/02/20 11:09
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mori

マイクロソフトやマッキンゼーで情報通信分野の戦略立案に携わってきた森祐治さんが、通信・放送業界やエレクトロニクス産業に関連した時事的トピックスについて、アカデミックな視点から分析していきます(このブログの更新は2004年4月9日で終了しました。続きは<a href="http://japan.cnet.com/column/mori/">コラムによる連載</a>をご覧下さい)。
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今週発表されたGDPは、僕らの肌感覚以上に日本の好況を示している。デジタル景気と言われ、一部、半導体やセットメーカーの好調がとり立たされている。が、すでに、半導体製造装置メーカーの株価は低下し始めており、これが典型的な景気の波に左右された結果でしかないを示している。依然として、この国のエレクトロニクスやハイテクといった産業は「工場」の域を出ておらず、次なる本質的な成長の扉をくぐってはいない

いつもエントリーのアイデアはメモしているのだが、なかなか思い切って書き下す気にならない。それよりも、前回のエントリーなどに対するコメントやトラックバックを拝見させていただき、いくつか思うことがあったので、先に簡単ながら、フォローをしておこう

僕らがみんな懲りていない

半導体や家電セット機器など日本の製造業は、現時点では、好調だ。製鉄や造船なども、これまでにないほどの好況を謳歌しているという。もちろん、ここに至る過程で、製造業に携わる方々の努力のほどはよほどのものであったことは、十二分に承知している。

しかし、である。70年代や80年代とは、90年代以降、ゲームのルールが変わったのだ。そして、90年代の不況といわれた時期には、皆がそれを直接肌で感じ、成長期と同じやり方では本質的な成長の扉は二度と開かれないということを、思い知ったはずだ

だが、再び、日本の産業は、この周期的な好調の訪れにそのことを忘れつつある

懲りない面々とは、誰のことでもない。僕たち自身のことだ。このことは、誰か特定の人物や組織に起因する問題であれば、話は簡単だ。あたかも誰かが操作しているかのごとく、構造的・機能的に、そして無意識的な共鳴が発生し、「今の僕らは大丈夫」だと思い込みたがること自体が、すべてのドライバーとなっている

# 誰かを悪者にしたいという潜在的願望を、常も僕たちは持っている。例えば、何かあると「ユダヤ人の陰謀」だの、「影の政府の企み」だのと、こじつけたがる人は多いが、そんな特定の主体が存在しているわけではない

# そんな風潮に本来警告を鳴らすべきメディアのジャーナリズム=社会監視機能が弱体化し、メディアそのものが社会の全体的な流れに取り込まれつつあり、権威に迎合する傾向が高くなっている。このような状況が発生しやすいのは、表面上安定した社会ならではの出来事であり、それ自体は避けられないものかもしれない。また、ご指摘にもあった「バビロンシステム」は、欲望という社会装置そのものであり、それを消費という美徳を前提に適度な資本主義が機能しているのであれば、否定されるものではないだろう。しかし、メディアのジャーナリズム的な側面であるアジェンダセッティング=問題を問題として指摘する機能そのものが、マーケティングに取り込まれてしまうことには、危惧を覚える。やはり変化とは、なんらかの相克なくしては生まれないものだろうから

# 前回のエントリーでは、1)デジタル三種の神器に代表されるメディアのジャーナリズム機能の弱体化とマーケティングの過剰な取り込みという問題と、2)無意識的に現状の過剰肯定による経営判断力の鈍化、そして3)迫り来る不連続なイノベーションの対応の必要性を、同時に語ってしまったのが間違いだった・・・。反省

# これもアイデアメモはともかく、「blogは一気に書き下すもの」という考え方で臨んでいるために起こってしまったこと。通常からもっと考えを研ぎ澄ませておかないと・・・。自戒の念を込めて

本質的な成長の扉を開けるために

もう一度言おう。ゲームのルールは変わってしまっているのだ。それも1世代以上前に

競争優位を確立するためには、製品それ自体の優位を生じさせる「プロダクト・イノベーション」と、製品を上市するために必要な製造面での優位を有む「プロセス・イノベーション」の双方が最低限必要だ。しかし、新たなルールの下では、プラスアルファが必須となり、それはしばしば今までのルールを超越することを意味する

例えば、プロダクト・イノベーションにしても、「よりよいものは市場に受け入れられる」という愚直な職人気質は、すべての製品がコモディティー化されつつある現在、アライアンスやマーケティングとのバンドリングなくしては成立しなくなりつつある。また、プロダクト開発そのものに知的財産権という制約が加わり、デファクトなどの議論を考慮せざるを得なくなるなど、プロダクト開発そのものに自由度が狭まってきた

加えて、以前から日本が優位を持つといわれてきたプロセス・イノベーションについても、資本にモノを言わせた規模の経済ゲームや、パブリックセクターだけではない海外勢力の参入など、これまでとは異質の脅威が高まっている。また、産業協会などに任せて、需要予測など基礎情報分析に対する投資も日本は十分に行ってきていないがために、依然としてシリコンサイクルなどに対する備えは受身のままだ

いずれも、製品開発や製造のノウハウだけではなく、金融工学的なリスクヘッジと持たざる経営などの経営のテクノロジーを積極的に採用する欧米勢力に対して、すでに日本は廉価な設備投資と人件費で対応できる「純粋製造業」ではとても成り立たなくなったにもかかわらず、依然として正面突破の「モノつくり」を標榜して止まないのであれば、僕たちには勝ち目はない

工場への受注が伸びることで売り上げが伸びて喜んでいる間に、工場へ発注をかけた企業は資産を持つことなく、工場の数倍の利益を享受できることを、僕らは学んだはずだ。もちろん、それでも工場の歩留まりを上げるためのテクニックなどは希少資源であり、価値創造もできる。しかし、それでは産業としては十分な規模ではないことも、否めない

確かに、年率換算のGDPは13年ぶりに高い値をマークしたが、それは体力のあるごく少数の企業が自らの一部をそぎ落として牽引した結果であり、基本的には「工場」的、もっといえばかつてのルールを効率よく行っただけであり、一過性のものでしかない。再び需要の波が引くと、今盛況を謳う企業ですら、これ以上身を削げなくなった身体をもてあますことは明かだ

もう一度、5年前、10年前に、僕たちが何を思ったのか、思い出してみてはどうだろうか

# 自宅でお国絡みの資料を作りながら、BSデジタル・ラジオをBGMにして

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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