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統計ソフトよりも基礎分析力を習得しておこう
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キャンパスでは卒論や修論の提出締め切りの季節。妙に青い顔をしてコピー屋さんや研究棟などを早足で歩いている学生がいたら、多分に提出を目前に控えていると思っていい。学生にとっては大変なイベントだが、見るほうにとってもそれはかなりの負担を強いるものでもある。特に修士クラスの論文で多用される統計ソフトを駆使したものとなるといよいよだ。しかし、本来、修士レベルに求められるのは、専門知識の量ではなく、むしろ基礎的な分析力ではないかと思うのだが
統計ソフトで誰でも超高度な分析
今回のエントリーは、ちょっとオヤジ的ぼやきモード
久しぶりに修士論文を見ることになった。突然、教授から頼まれて1篇をほぼ1日かけて目を通したのだが、「統計分析ソフトに振り回されているなぁ」というのが正直な印象だった
もちろん、問題意識や興味の対象は興味深いもので、それに難癖を付ける気は毛頭ない。そもそも、日本、韓国、台湾と修士の学生が3代かけて実施したそれなりの規模の国際比較調査だから、その研究の意義はかなりのものだ
気になるのは、その論文固有の問題ではない
現在、その専攻領域を問わず、研究の実現方法として非常に高度な統計解析が可能なソフトの利用が修士レベルでは非常に増えてきている。PC上で動作可能で大規模な多変量を瞬時に簡単に取り扱うことができるソフトが、特に大学では簡単に利用することができる
それは、PCの高性能化と、ソフトの視覚的な操作環境整備による利用難易度の低下、アカデミックプライスなどの積極的導入など、研究室単位での購入もそれほど困難ではない。場合によっては、学生自身でも購入できる製品すらある
おかげで、単純集計だけでも大変な調査や実験結果を、いとも簡単に因子分析やクラスター分析、共分散構造分析、コンジョイント分析など、調査のプロと同じ環境で処理することができるようになる
そんなパワフルなツールをうまく使いこなせば、これまでは見えなかった変数を捉えたり、複数の変数の複雑な組み合わせたシナリオを評価したり、逆に特定の因子の影響を除去した効果をみたりすることが可能になる。すると、最初は統計ソフトと聞いて「引く」人も多いが、ちょっと分かってくると逆に「ハマる」人も多いという、一種のマジックツールなのだ
ツールの扱い方が習熟しないのは・・・
学生にとっては、興味のあるトピックの研究プロセスで、具体的な対象を眺めたり、その概念を弄り回すのは楽しいものの、いざ分析となるとなかなか敷居が高い。それにトピックやテーマそのものには興味があっても、その分析手法に興味を持っている人は少ない。だから、できるだけ分析を楽にして、結論に飛びつきたくなるのは人情というもの
指導する側も、分析ツールについての教育よりもテーマ領域そのものを専門としている場合が圧倒的だし、実は分析ツールや研究・調査法などの教育は大変だと感じている方も多い。特に、6文字学部や研究科(国際××とか××メディアなど、複合領域的な専攻)では、複数の領域の専門家がたくさんのアプローチを山盛りで教授するものの、基礎学力となる分析ツールなどの習得機会は隅に追いやられてしまっていることが多い
ましてや、学部のレベルが学力の全般的な低下の波を受けて、かなり高偏差値の大学であっても、一昔前の高校レベルの知識も能力もない学士を許容せざるを得ない。その上、学部を持たない独立系大学院が専門職大学院を筆頭にたくさん生まれ、学部からの直接進学者に社会人のキャンパス復帰組もあわせると10年前の倍以上の学生が博士前期や修士課程に在籍するようになった昨今、大学院入学者の基礎学力は平均的に低下していることは否定できない。その上、学部の専攻分野とは異なるコースへの進学が増えているため、学部と同レベルの専門科目を受ける必要がある。加えて前述したように複合領域化が進み、その傾向はいよいよ加速し、推薦ではなく企業への一般就職などが当たり前になることで、就職活動時間を認めざるを得ないなど、肝心な「研究手法」の習得時間はどんどんなくなってしまってきている
# 実際の社会では、テーマそのものに関する知識よりも、むしろ汎用性の高い、分析に用いるツールなどの利用スキルやノウハウほうが重宝されることは皆さんも実感されているに違いない。分析ツールといっても、すべてが統計解析パッケージみたいなものではなく、クリティカルシンキングなどいわゆるMBAモノも多く含まれる。それらのかなりは、意図的に、主流ではないものの確実に開講されているコースなどを活用して、学生のときに習得していればどれだけよかったかと後になって後悔することも多く、後になってわざわざ高額なコースを受講する人も随分といるようだ
それもあってか、個別指導が中心となる論文作成では、多々ある分析ツールの中では比較的簡単に使うことができる統計パッケージなどの利用を薦めるケースが増えているようだ
基礎的な分析力のないものにとって統計ソフトは危険物
もちろん、ソフトそのものの利用機会が増え、操作の容易性が高まったことは、喜ばしいことだ。しかし、統計分析ソフトが高度なものになればなるほど実質的な分析プロセスのブラックボックス化や形骸化が進行してしまいがちだ
分析プロセスといっても、ソフトが処理する部分の数学的な根拠をすべての学生が証明できるようになるべきだという極論を言うつもりはない。しかし、ソフトによる処理自体が容易になった分だけ、どんな数値を、どういう手法で獲得するかなど、研究計画がおろそかな状態で、まずアンケート調査ありきとか、マクロ統計ありきで、あとは盲目的に処理するために統計ソフトが登場するという、分析プロセス全体が形骸化し、本来専門知識よりも重要な分析能力の獲得がなされないことになる
怖いことに統計ソフトにかければ、元の数値が身長体重でも、商品番号でも、態度変数でも、ランダムな数字ですら、なんらかの結論が得られてしまうということだ。悪いことに、その結果がどうであっても、それなりの解釈を平気で述べることができる。本来、どう考えても変な結果であってもだ。それでは分析プロセスなぞなくとも、最初から解釈や結論を一種のエッセイとして書いてしまった方がよっぽどいい
別に学生みんなが学者になるわけではないのだから、過度に厳密である必要はない。でも、せっかく学士や修士になるためにつらい思いをする論文なのだから、自分の身に分析力をつけてから、統計ソフトを使ったほうがいいのではないか
数字は一人歩きしがちだし、経営判断の基準などにも使われるものだが、その根拠は問われることは少ない。しかし、調べてみるとどれほど怪しいものであっても、デンとたいそうな表紙をつけてしまえば社内や政府内で動いていることが多いことに驚く。これも前回のエントリーで述べた学習的無気力による思考停止の結果なのだろうけれど、それをまた無意識に再生産してしまうのは、避けたいものだ
そのためにも、修士の学生を含む数字を扱う皆さん、ぜひ過剰な分析ツールの乱用はやめて、手堅い説得力のあるシンプルな手法をまず検討してはいかがだろうか
# マンションの中庭にある梅のつぼみが大きく膨らんでいるのが分かる自宅の窓際にて
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