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    2003大晦日、つれづれなるままに

    2003-12-31 02:07:44

    プロフィール

    mori

    マイクロソフトやマッキンゼーで情報通信分野の戦略立案に携わってきた森祐治さんが、通信・放送業界やエレクトロニクス産業に関連した時事的トピックスについて、アカデミックな視点から分析していきます(このブログの更新は2004年4月9日で終了しました。続きは<a href="http://japan.cnet.com/column/mori/">コラムによる連載</a>をご覧下さい)。
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    最近のエントリー

    ふと気が付くと、大晦日。今年も残り一日を切っていることになる。公私共にたくさんのことがあった。バランスからいくと、辛いことが多かったような気もするが、それゆえに得られたこともたくさんあったに違いない、と思うことにしよう。個人的な感傷に浸るのは別の場所に譲るとして、この1年の全般で感じたことをいくつか書いて、今年の締めにしようと思う

    通信=儲からない産業か?

    通信料金のフラット化が進行するにつれて、従量制が未だ存在する携帯電話産業の周辺を除いて、通信は儲からない産業であるとされてしまったようだ。特に、欧米新興事業者の軒並みの破綻やNTT東西の事業収入の低迷などがその根拠とされている。しかし、本当にそうなのだろうか? 

    # いつまでも携帯電話だけが例外といっていられるのだろうか。今年は、モバイルIPやモバイル・セントレックス、そしてauのWINが始まったように、定額制やそれに準じた製品が多数出現した。体力的に定額制への移行に対応できる事業者であっても、同時に起こるであろうモバイルナンバーポータビリティ(MNP)や端末などのマーケティングなどのアンバンドリングは現状の産業構造を大きく変えることにことには違いない

    アプリやコンテンツというまったくの異領域を取り込めというのではなく、それら異領域が必要とする情報処理との重複領域をうまく取り込むことで強みが出てくるはずだと僕は読んでいる。来年以降、その試みがいくつか始まりそうだ。放送との融合といわれている部分も、この重複領域ありきでなければ、依然として「儲からない産業」を否定できないストーリーに位置する可能性が大きい

    家電バブルはバブルのまま終わるのか

    これも最近のエントリーで取り上げたように、「デジタル三種の神器」が既成事実のようになっているが、その根拠は非常に薄い。むしろ、家電産業といわず、価値観や嗜好性が多様化した現在、機能の多様化と価格の広範化が進むことで、「プラズマテレビ」などの商品は全市場ではなく、下位市場向けの「セグメント商品」としての位置づけが正しくなりつつある。加えて、新興国家の労働力やOEM型ビジネスの台頭で、それらセグメント商品ですらコモディティ化の進行は必須だろう。モバイルやユビキタスとかいった、目新しいコピーを付けたところで、基本的な評価は変わるまい

    であれば、まったく異なる視点で産業自体の戦略を捉える必要があるのではないか。漸進的イノベーションではなく、まったく新しいライフスタイルの訴求や根本的に異なるアーキテクチャ基盤など、破壊的なイノベーションを志向した何かが必要なのだろう。

    これまでにコスト削減で本質的な体力を失った家電メーカーに、これらまったく新しい発想を可能とするR&Dの体力は残っているのだろうか

    ソフト化産業の可能性

    なぜかソフトというと、わが国ではSE産業を示すことが多いようだが、本質的な勘違いを生みやすい解釈ではないか

    むしろ「ソフト化産業」というとサービス業など日本の得意そうでありながら、依然として産業としては未成熟な領域を欧米では差すことが多い。基本的に民間の知恵がドライバーになりやすい領域であるがゆえに、未だ日本人にとっては苦手領域であり、なぜか現在でも産業政策によってこの産業領域を直接活性化せしめるのが可能だと考えておられる官庁やその周辺の方々が多いことに驚かされる

    確かに、アートやクリエイティブという側面では日本はソフト化産業で品質的な優位を保っているが、それらの効率的な産出などの産業化という面では非常に遅れている。典型的な例は、メディア・コンテンツやエンターテイメントだ。一例を挙げると、強い強いといわれているゲーム・コンテンツであっても、産業的にはかなり苦しい状況に落ち込んでおり、これはビジネスの体力不足の結果であることは明らかだ

    日本のライフスタイルを海外という市場でカネにすることを前提に、効率的かつ高品質な開発を指向するには、やはりプライベート・エクイティ型の強権発動マネジメントが必要なのかもしれない

    直接金融市場からの調達マジック

    「勝ち組・負け組」という、判りやすぎるけれども、あまりに単純化しているが故に何も語らぬようなカテゴリ分けが好きなのはマスコミに限らないのだろう。だが、勝ち組としてメディアでよく例に挙がるのは、ドット・コム・バブルでうまく市場公開できた企業やそれらに買収されることでエグジットできた新興企業の若手経営者たちだ

    一方で地道な「モノ作り」を尊びながらも、もう一方では、一種お手軽に正当な成長性の評価よりも話題性先行でも可能な巨額バブルマネーの調達手法としての株式公開が依然として成立し続けているのを改めて感じたのが今年だった

    他方、社債などの発行では非常に困難な状況な状況や、そもそもその条件が非常に厳しいにも関わらず、それらの前提条件の一つとなる株式公開は実情が現実と乖離していても、いったんカタパルトに載ってしまえば、何とかなってしまうというマジックはあまり批判されないようだ

    高度化するのか、希釈化されるのかわからない高等教育

    最後に、昨今の国内大学院事情を取り上げよう

    かく言う僕も休職を経て退職し、大学を一時避難場所にしようとしているわけだが、大学自体が学生以外のポジションで民間の才能や人的資産を取り込めていないことを実感した人は多いのではないか

    その原因となっているのは、学生数の減少を補うための社会人の学生としての取り込みとして乱発気味の「専門大学院」だ。MOT(技術経営)、法科、会計などなどで、社会人など個人または企業の財布を当てにしたプログラムが雨後の筍のごとく増加しているが、誰かがその質的な担保をしたのだろうか

    # Management Of Technology program(MOT)は、元々「理系のMBA」として設定されたわけではない。むしろ、その言葉とおり、テクノロジー領域への経営管理手法の導入を志向したものであり、理系出身者でなくとも入学できるものだ。しかし、今まで「MBAは文系」という解釈が広かった日本で、過半数を占める理系の取り込みの一マーケティングとしてMOTは位置づけられてしまった。しかし、実際は「経営工学」という経営とは離れた領域の教員らが中心となって設定されるものもあるようで、米国などでも必ずしも確立されていないMOTを中途半端に輸入した感がぬぐいきれない

    もちろん、すべての試みを否定しているわけではないものの、プログラムの建前と実際の教育内容のギャップや、現実に適用しうる専門的な教育を担う人材とそれを支援する環境を形成する才能がそれら試みを行う以前とほとんど変化がないことなど課題は多いことから目を逸らすのは間違っている

    結局、修士号や博士号保有者数を多くして欧米と統計的に張り合おうというのでは、あまりにも空しい。大学という、本来、柔軟性の高い器を、官民学で積極的に利用するという姿勢自体のあり方に問題がある気がするのは僕だけではあるまい

    他にもいろいろあるが

    地上波デジタル放送やサーバー型放送、ネットワーク家電やデザイン指向、利用者参加型の研究開発スタイル、サービスを取り込んだハード製品のあり方などなど、他にもたくさんのことに一言いいたかったが、2003年はこれまでとしよう

    来年もよろしくお願いします。みなさん、よいお年をお迎えください

    # 実家で眠る愛猫を膝に置いて、除夜の鐘にはまだ早く、遥かに夜の回送電車の音を聞きながら

    ※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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