年末になるに従って、今年のヒット商品の特集記事や番組をメディア上でよく見かけるようになった。しばらく低迷した家電業界でも「デジタル三種の神器」として薄型テレビ・デジタルカメラ・DVDレコーダーが今年後半にかけて「売れている」ということにされている。しかし、これら商品を見てみると、実際に売れているものの、その価格が圧倒的に安くなったわけでもなく、新製品も衝撃的な機能を搭載したわけでもないのだが
ヒットした製品のヒットの理由は分かりやすい
この原稿を書いている今も某TV局の番組で、コンビニ専売茶「ヘルシア」、シリコンブラ「ヌーブラ」、テレビ番組小物「へぇ〜ボタン」、阪神タイガースや六本木ヒルズらが「今年のヒット商品」として紹介されている。こんな商品が、なるほど、そういうことで売れたのか、とターゲット顧客やその行動の捉え方、商品そのもののポジショニングの変更、単なる話題としての盛り上がりのすごさ、など「解釈」としては納得させられる説明がなされている
とはいえ、これらの商品はヒットしたが故に、ヒットの理由を語ることが容易になっているわけであり、他製品や継続商品でもそのロジックが通用するかどうかは分からない
いづれにしても、どういう調査をしてこの結果を得たのか、それはそれで学術的に興味深いのだが、ヒットしたというよりも「話題になった」というのが実際なのだろう
さて、ここからが本題。「ヒット商品」の中に、具体的な商品名が並ぶのが多いにも関わらず、冒頭に掲げた家電製品3種が特定の企業名や商品ブランドが掲げられることなく出ているケースが多い。すなわち、「薄型テレビ」「デジタルカメラ」「DVDレコーダー」である
「デジタル三種の神器」は「ヒットにしたい商品」
別に「ユダヤ人陰謀説」のように根本はトンデモ話にも拘らず、たくさんの人が「そうだよねぇ」と信じてしまっている話ではないが、固有名詞で多くのヒット商品ランキングが語られる中、製品ジャンルでのみ登場する「デジタル三種の神器」というのは、無意識的に「モノつくり」産業の再生を望む流れが作り出したのではないかとも感じる。今までも商品として店頭に並んでいたが、高額であったり、代替商品として主流と認められていなかったりして、ある程度まで売れてはいたが「主力」商品といわれなかったものが多い、というのがその根拠だ
薄型テレビは、プラズマと液晶の大型画面テレビで、この12月から東名阪で開始されたデジタル地上波放送に対応するものをさすことが多いようだ。今までのブラウン管型のテレビが大型化するにつけ価格が上昇し、気が付くと20〜30万
という商品が多くなっていたが、それ以上に薄型テレビの単価は大きい。40インチ強のプラズマでは市販価格40万円以上というのが常識で、一昔前に理想といわれていた「1インチ1万円」に近づいたものの、依然として高額高価な商品であることには間違いない
デジタルカメラは、すでに銀塩フィルムカメラの出荷額をとうの昔に追い抜いている商品だ。今年の傾向は、エレクトロニクス・メーカーではなく、カメラ専業メーカーから商品が多数発表され、これまで以上に商品の選択肢が広がったことを指摘できるだろう。また、携帯電話に搭載されるデジタルカメラとの差別化という点で、あるいは先行購入者の買い替え需要を狙うということで、一眼レフ系の高額なものでなくとも、コンパクトカメラ・クラスで4M(400万画素)などが増えるなど、高性能化が進んだ。販売店は、デジカメ単体では売らず、記録媒体であるICカードやプリンタなどとのセット販売を狙っているようで、まとめて買えば8〜10万円前後になることもある
DVDレコーダーも、全くの新製品というよりは高機能なHDDレコーダーなどとの組み合わせで「ようやく使える」製品となってきたものだ。VHSの代替として今も売られているようだが、実際はVHSの代わりというよりもデジカメやカムコーダーの記録・編集ステーションであったり、自動的に興味のある番組を選択し録画されるという時間節約機能というパーソナル・ビデオ・レコーダー(PVR)、そしてSONYのPSXのようにゲームやウェブ・ブラウジング機能なども備えたなど、実質的にはネットワークAVホームサーバーといってもいいほどの内容となっている。8〜10万円という価格も機能的には悪くないかもしれないが、VHSでは圧倒的にそれ以下、また、PCのようにより多様な利用が可能なものでもほぼ同程度の価格で入手できるようになっているから、単純に廉価とはいえないだろう
実は、確かにこれら3種の商品、それぞれに魅力的ではあるものの、圧倒的な価値訴求力を持っているかというと若干怪しいという気がする。むしろ、今までもっと売りたくて仕方なかった商品を、経済状況の回復の波に乗せて、どーんと話題化しているというのはうがった見方か。もちろん、そこに何らかの意図が介入したと見るかどうかは別の話だ。むしろ、前述したとおり、一種の集団的無意識が成しえた業である可能性があると思うのだが
より進化した商品への期待を
確かに手堅い製品を確実に売って、その販売の絶対量はどうであれ、ヒット商品として認識されたのは関係者にとって朗報だったろう。なによりも、年末商戦に向けて話題性を勝ち取ったことで販売量は雪崩的に大きくなっていくに違いないからだ
デジカメとDVDレコーダーは、当面、国際競争力もありそうな商品であり、今後も競争優位を持てるだろう。しかし、ディスプレイ・デバイスそのものは韓国や台湾が生産量を増やし、そしてそれらデバイスをベースにしたOEM形式で廉価な薄型テレビをPCメーカーが積極的に売り出してきている。このままでは、競争力を維持することは難しくなってくるに違いないだろう
すでに指摘したように、デジタル三種の神器は目新しい商品というよりも、何らかの意味において代替商品という位置づけであり、価格の問題から「全世帯普及」は望めない商品である可能性が高い。であれば、国内市場だけであっても、飽和するのに時間はかからないはずだ。来年までの市場は好調であっても、それは前世紀の勢いを借りているだけだ。消費者の家電ライフスタイルは変わっていない
そろそろデジタルならではの新しい提案があってもいいのではないだろうか
# クリスマスイブに床暖房の効いたリビングに座り込んで
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
MSHT on 2003/12/26
森さん〜、冒頭の
>この原稿を書いている今も某TV局の番組で、、、
その番組って、TBSのアレですか。おすぎと安住アナがたまに出演してる、、。私もコタツで見てました(笑)。
本文の感想ですが、確かにデジタル3種の神器って、突然言われ出したような気がします。
日本が圧倒的に強いと言われてる、いわば感性に訴えかける部分、デジカメでいうイメージプロセッサ、PDPやLCDでいうWEGAエンジンなどのものだって、NuCOREのように広く外販していきましょう、という形になれば、一体どこで日本は差を出すべきなんだろうということになるような気がしますので。
どこに光を見出いだすのでしょうか、日本の企業は。
MSHT on 2003/12/25
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上記、ちょっと修正です。おすぎじゃなくて、ピーコでした(笑)。
失礼しました。