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モバイルという「場所を特定できない」場所という発想から逃れる

2003/12/03 17:00
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mori

マイクロソフトやマッキンゼーで情報通信分野の戦略立案に携わってきた森祐治さんが、通信・放送業界やエレクトロニクス産業に関連した時事的トピックスについて、アカデミックな視点から分析していきます(このブログの更新は2004年4月9日で終了しました。続きは<a href="http://japan.cnet.com/column/mori/">コラムによる連載</a>をご覧下さい)。
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オフィス、ホーム、オート、モバイル。この4区分が、家電やエレクトロニクスといった製品の商品区分として広く採用されている。曰く「場所によって区分している。」 しかし、最初の3つはともかく、4つ目の「モバイル」というのは、ちょっと前までは「その他」と呼ばれていた領域であり、にも関わらず最も幅を効かしているというのも変な話だ

「その他」を「モバイル」と呼ぶようになってしまった訳

この他にも、エンタープライズ、SOHO、ファミリー、シングル、キッズ、シニアなど、いろいろな顧客セグメントに合わせた商品区分がある。最初の2つは業務用とかB(business)向けといったものだし、残りはいわゆるC(consumer)向けであり、そのうち最初の2つは家族構成による区分だし、最後の2つは個人向けでその対象年齢層に特色があるものだ

こういった顧客セグメントとオケージョン(状況)からマトリクスを組んで、特に注力する商品領域を決め、そこでの利用イメージを絞り込んでいくのが大雑把な商品企画の発想法というものだろう。いままでは、腕時計やウォークマンのような個人オーディオ、PDAといった製品については「利用オケージョン・フリー」、逆にいえば顧客セグメントに共通したニーズであればどんなオケージョンであっても対応できることが売り物の商品があった。場所による区分ではない商品=「その他」商品だった

それが、携帯電話の普及によって「その他」というジャンルの性格付けが一変した

ケータイには、B向け、C向けの区分がなく、かつ個人向け製品であったため、ファミリー区分も存在しなかった。せいぜい、子供向けやシニア向けとった表示や利用限度などの条件で区分がある程度だが、それも全体に占める比率を考えればたいしたことなかった。ゆえに、モバイルという特定の利用場所にも限定されないということに加えて、ケータイはその他セグメントにぴったりとはまってしまったのだ

加えて、急成長し、単価が高く、1年余りで買い替えが頻繁に起こるというきわめて特殊な性格をもった製品であり、かつ通信事業者が安定した価格で買い取るというバリューチェーンを日本では構築していたため、メーカー側の発想では「その他」製品であってもあっという間に最重要商品に位置するようになり、携帯電話が電子手帳的な機能をもつこともあって周辺商品との融合が加速するようになって、いよいよ「その他」市場の中で占める位置は大きくなり、いつのまにか「その他」が「モバイル」と呼ばれるようになってしまった

ケータイに飲み込まれる「その他」製品

依然として、「その他」区分は存在する。が、腕時計や万年筆といった専業メーカーが優勢を占めてきた商品が多く、家電やエレクトロニクスメーカーにはあまり大きな影響を及ぼさなかった。時計とカメラを除いては、だ

若年者は時計をファッションの一部としての使い方を除いて、そもそも持ち歩かなくなった

そして、ケータイがカメラ機能を取り込むようになり、銀塩フィルムカメラからデジタルカメラのほうが出荷量が増え、専業メーカーよりも家電メーカーのほうがたくさんのカメラ、あるいはカメラつきのケータイを売るようになってしまった

# 読者の皆さんもご存知のとおり、デジタル一眼レフが好調だ。これは、カメラ専業メーカーの復活の兆しとなった。専業メーカーは、一眼レフだけではなく、コンパクトタイプ製品についても、デザインや今までの顧客のニーズ理解を武器に、年末商戦で健闘しているようだ

日本ではまったく見かけないようになったPDA型のケータイだが、欧米では相変わらずビジネスマンを中心に根強い人気を誇っている。高機能で単価も高いわけで、メーカーは積極的により機能の優れた製品を投入しつづけている。例えば、通常の大きさにもかかわらずフルキーボードを折りたたんで内蔵したものや、ペン入力を備えたものなどがあるだろう。いずれも、PCの延長としてケータイを捉えたものだ

これに加えて、Nokiaなど欧米のケータイ端末メーカーはペンやヘッドセットなどをアクセサリーとして、Bluetoothなどに対応させるケータイの周辺に取り込もうとしている。その他ジャンル内で、さらに「モバイル」の勢力が広がっていくわけだ

あまりにも広すぎる「モバイル」領域

一方、「その他」改め「モバイル」というパーソナル・デバイス領域での融合はますます進み、日本では定期や財布を取り込もうという動きがある。実は、ケータイがケータイ以外のサービスに参入する危険性は、事業リスクとして通信オペレータが抱えるものだけではなく、われわれ利用者にとっては個人情報保護や、選択の自由という点において、考えようによっては住基ネット以上の危険をはらんでいることはあまり議論されない

# 総務省モバイル・ナンバー・ポータビリティ調査会のメンバーであり、僕のアカデミック・アドバイザーでもある三友・早稲田大学GITS教授は、「スイス・アーミー・ナイフ」という例えで、この問題をよく取り上げる。持っていると安心だが、どれもあまり使えた試しがない…。本来、個人情報などに関しては、通信事業者のサービスとはアンバンドルされ、利用者が任意に選んだ個人情報管理会社に管理依託するべきできではないか、という点で合意する。いつの間にやら個人情報サービスは、ケータイ電話会社にすべて巻き取られていたという結末は願い下げだ

このように周辺サービスや製品を融合できるという強みを持ったケータイ電話だが、その利用オケージョンは多岐にわたり、モバイルであっても、オフィスやホーム、オートですら利用されることも実は非常に多いことがわかってきている。すなわち、モバイルは場所をベースにした区分というルールを無効化し、リスクを孕みつつ超越しているのだ

であれば、上述したように融合されていく、あるいはネットワーク化される商品やサービスが存在する限り、そもそも場所をベースにした商品区分というもの自体を考え直す必要が出てくる。元々が「その他」なのだから、あまりにも漠然とした場所を指しており、その区分をそのままオーバーライドしてしまった「モバイル」という領域を、バーチャルにターゲットとして商品企画などを行うには無理があるはずだから

いったん確立してしまったフレームワークを超える・疑うというのには、かなりの勇気がいるようで、依然として「モバイル向け」という「場所が特定できないという場所」区分向けの製品やサービスがずいぶんと現れている。果たしてそれらは、ケータイとの組み合わせで使うものなのか、かつてのウォークマンのようにパーソナルな製品なのか、もう少し性格をはっきりするべきではないか。モバイルって、要するに何だというのか

もちろん、場所を特定しないこと事態が強みという発想もあるが、すべてがすべてそういうわけでもあるまい。何でもかんでも、モバイルといっておけば安心という発想はもう通じまい。そもそも、消費者にとって場所による区分も、モバイルという区分もどうでもいいのだ。要は、便利であればいいのだから。であれば、パーソナルという発想で考えるべきではないか。そして、改めてネットワークという概念を加えてはどうか。ネットワーク家電でコケたという印象を、忘れてもいいのではないか

それよりも、そろそろ「場所が特定できない」という「その他」区分をそのままに受け入れるという怠慢に決別するべきではないだろうか

# 実は、「使う」テレビなどのあり方にも、このパーソナルデバイスや、モバイルという領域への考察が役に立つのではないかと思っている

# 自宅近くのコーヒーショップにて来年度の講義シラバスを考えながら

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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