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テクノロジー・ドリブンではないR&Dの可能性

2003/09/24 08:15
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mori

マイクロソフトやマッキンゼーで情報通信分野の戦略立案に携わってきた森祐治さんが、通信・放送業界やエレクトロニクス産業に関連した時事的トピックスについて、アカデミックな視点から分析していきます(このブログの更新は2004年4月9日で終了しました。続きは<a href="http://japan.cnet.com/column/mori/">コラムによる連載</a>をご覧下さい)。
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お休みの合間の月曜、最近は東京にいないことの多い同じオフィスのO氏(とは、氏の前職は僕がNY時代に立ち上げをお手伝いした会社だったし、その前のD社時代からの知己でもあったわけで、思い返すと結構長いお付き合いになっている)とランチしながら話していて、ひとつアイデアが浮かんだ

ことの起こりは、そのO氏の代理で引き受けた日本マーケティング協会が主催するプログラム「企業革新の起動力: ホリスティック・マーケティングの展開 〜越境し、浸透するニュー・マーケティング・フィロソフィー〜」での9月18日の講演(題して「ケータイ、デザイン、マーケティング」)で、同プログラムのコーディネーターであり、言わずと知れたマーケティングの大家、慶応SFCファウンダーであり、現千葉商科大学政策情報学部長である井関利明先生と「21世紀における産業のあり方を前世紀の遺物で規定する無かれ。平均的消費者像とは、20世紀文明が作り上げた虚像でしかない」という話題でずいぶんと盛り上がった、ということを彼にアーク森ビルのStarBucksで報告していてのこと

    # 前にも書いたとおり、アカデミックな世界での僕の専門=今取り組んでいる博士論文のフォーカスは、放送ではなくて、ケータイの普及なんですよ。技術論じゃなくて、インタラクティブな機能を持ったコミュニケーション・ツールの価値認知と採用者間の相互作用による普及過程の解明。最近、すっかり「技術のヒト」「放送のヒト」と認識されているみたいなんで、一応、書いとく

カメラや音声・映像データ再生機能などなど、過剰なほどの先端機能を付加した携帯電話端末が、当然のごとく通信事業者のインセンティブによって廉価に入手できる日本。果たして、いつまでそんなテクノロジープッシュで産業の拡大が可能なのか。加入者数は飽和に近づき、ARPU(月当たりの加入者平均利用額)の低下は免れず、かつ新たに投入した付加機能が必ずしもARPU向上に寄与しないとしたら、需要以上の機能を持った端末を上市する必然性とは何かを問わなければならない。が、そのとき、利用者にとって最適な機能セットを定義する必然性が出てくる

果たして最適な機能セットとは誰にとって最適なのか、が問題になってくる

平均的な消費者という、典型的にマーケティングで議論されるであろう統計的大数を構成するグループは、果たして上記の問題に答える意味において存在するのか? あるいは、それらを特定し、測定しうるのか?

実は、かなり根本的な議論である・・・

この「ケータイ、デザイン、マーケティング」では、「テクノロジー・ドリブンではないR&Dの可能性」を最適な機能セットを定義するためのアプローチとして僕は提案している

    # この「テクノロジー・ドリブンではないR&Dの可能性」は、規模的には少数であっても多くの消費者に影響力を行使する「early adopters」に対する「観察・インタビュー手法」によって、コンシューマーインサイトを獲得する価値を論じたもの。nokiaやNIKE、Xeroxなどが、ストリートでの製品利用や、オフィス内でのトラブルシューティングに対して、文化人類学や社会学、認知心理学バックグラウンドのチームが行った観察などから得た結果を製品企画・開発にフィードバックさせているという例を挙げた。もちろん、観察から魔法のごとく新製品のアイデアが出てくるわけではない。仮説をあらかじめ用意しておき、そのバランスや選定に役立つ情報をどのようにして獲得するかというものでしかないことは事実だが、平均的な利用者の意見ではなく、トレンドリーダーの意見などを反映することがミソなのだ。当日、講演をご一緒させていただいたJフォンで「写メール」の開発を担当された高尾慶二氏(同社移動機開発部担当部長)が「開発チームに端末機開発のプロがいない中、どういったものが喜ばれるかを特定するのに悩みに悩んだ末、女子高生のカバンの中を見せてもらって得たアイデアだった」というお話は、開発当時のご本人の意識とは別に、結果的にはまさにこのアプローチをとっておられたとこを発見するというオチまでついた

このアプローチとて、実は「根本的な議論」から免れることはできない。が、静的に分布する統計的大数を想定し、それに対してアプローチするという手法からは逸することができる。上記の#コラムに書いたように、ごく限られた数の「early adopters」をターゲットにし、彼/彼女らを開発プロセスへ取り込むことは、あらかじめ「数の多い仮想された集団」とは異なり、具体的な嗜好や意思を持っており、平均化する必要が無い。その上、彼らは情報を(発言だけではなく、メディアを介した露出や、社会の中でのパフォーマンスによって)積極的に流通させ、トレンドを設定していく積極的な存在なのだ

さて、このアプローチであっても古典的なマスメディアの影響理論である「情報の2段階の流れ」に沿っており、それは情報消費速度に応じて正規分布する利用者が集団として存在していることを前提としているため、完全には井関先生が指摘する「前世紀が信仰した「平均」という名の虚像」の影響下からは完全に脱しきれてはいない・・・

井関先生は、多様な需要を持った多様な消費者を前提とした一種のオン・デマンド型製品が可能になり、究極には「1to1」でカスタマイズされる製品の出現こそが21世紀型の産業のあるべき姿とされ、「最適な機能セットの特定」は前世紀的なパラダイムでの「青い鳥探し」でしかないとおっしゃられる

依然として「スケールの経済」から脱し切れていない現時点の産業が、多様な利用者の多様な需要へ提供可能な解としては、製品の機能単位へのアンバンドルがありうる。しかし、完全な形での機能単位での製品化は企業からしてみると恐怖だ。まず、組み合わせという付加価値が生じないため、そもそも「写メール」という「合体の妙」による競合優位が作れなくなってしまいかねない。また、十分にかれた技術など儲かりやすい部分と最先端技術を多用したしばらくは儲からない部分を組み合わせて製品価格の最適化を図るということもできなくなる。単機能での競争になるため、個別の競争は激しくなっていく一方、それらを組み合わせることを可能にするインターフェースやプロトコルの確立がますます困難になっていく・・・。これをモジュール化の議論として捉えると面白い(「モジュール化」に関しては、RIETIのレビューが詳しい)

多様性需要対応と競争優位確立への中間解としては、自社製品内部でのモジュール化によるコスト最小化と、オプション機能単位の組み合わせによる製品バリエーションの確立が考えられる。すでに市場である程度の顧客基盤を有するリーディングプレーヤーは、自社が採用するモジュールに応じて最適化した部品を開発するよう外部調達先へR&Dリスクを分散することも可能になるなど、決して悪くない戦略機軸ではあるのだが・・・

すっかり前振りが長くなってしまい、まだ本論に行き着けない・・・

ふう。これまでを前編として、後編は明日にアップすることでお許しのほどを

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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