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MATRIX Reloadedにみるハリウッドとジャパニメーションのミッシングリンク

2003/05/27 00:56
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マイクロソフトやマッキンゼーで情報通信分野の戦略立案に携わってきた森祐治さんが、通信・放送業界やエレクトロニクス産業に関連した時事的トピックスについて、アカデミックな視点から分析していきます(このブログの更新は2004年4月9日で終了しました。続きは<a href="http://japan.cnet.com/column/mori/">コラムによる連載</a>をご覧下さい)。
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MATRIX Rloadedの先々行ロードショウに行ってきた

現在2週間限定で公開されているMATRIXワールドの派生作品「ANIMATRIX」のプロデューサー竹内宏彰さんにキアヌ・リーブスも登場するというプレミア試写会に招待してとせがんでいた。が、それが叶わぬとわかったら尚更一刻も早く見たくなり、結局、プレミア試写会の前々日の24日にクルマを駆って六本木ヒルズヴァージンシネマに向かったという次第だ

合計9スクリーンある六本木ヴァージンシネマの中でも最も大きなスクリーンという、非常にいい環境での観賞だったが、見終わった後、しばらく考え込んでしまった

というのも、「ジャパニメーション」という映像作品群に感化されて映画の世界に足を踏み入れたというラリー&アンディ・ウォシャウスキー兄弟の作品らしく、オーバーなアクションの波がこれでもかといわんがばかりのスピードで押し寄せてくる一方、重要な対面シーンではきわめて難解な想念的なやり取りが交わされるといった、30分もののTVアニメシリーズの演出やストーリー展開と極めて近似した印象を持ったからだ

別に、クリエイターの感性がジャパニメーションと共鳴した結果に考え込んでしまったということではない。むしろ、ハリウッドというシステムに優れた感性の持ち主が参画すれば、前作の成功があったとはいえ、続編とその後編ともいえる3作目の製作費用の合計に500億円が投じられてしまうという現実を映像を見ることでまざまざと実感したのだ。そして、モチーフともなったジャパニメーションが、むしろ主流とはいえない「千と千尋の神隠し」がオスカーを仕留めたといった事実とはかなりかけ離れた現実にあることを再想し、ショックを覚えたからだった

日本では長らくアニメ作品が映画館で上映される際、それらは「マンガ映画」と呼ばれ、人気TVシリーズの派生商品として数本が併映されるというのが中心だった。「千と千尋の神隠し」の宮崎駿や「攻殻機動隊」の押井守といった例外もあるものの、その量は少ない。やはり、ジャパニメーションといえば、圧倒的にTVアニメシリーズを指し、そのほとんどが玩具メーカーの商品開発と販売促進を同時に実現するためのビークルでしかない場合が大半だ

それは、日経BPの中村功氏が示すように「アニメは制作費がかかるため、マーチャン(玩具などの販売のこと:マーチャンダイズ)で制作費をリクープ(回収)する」のではなく、むしろアニメシリーズそのものが玩具や学年誌・児童コミック誌の派生商品として位置付けられるといったほうが正確なのだ

ハリウッドの王道が映像作品在りきで、マーチャンダイズやDVD化がそれに従うというモデルとは、構成要素はほぼ同じであっても、ビジネスの組み立てがまったく異なり、ゆえに異なる作品のバリエーションが生じてきている

アニメに限らず日本の民放TV番組一般が、放送枠を司る広告代理店と広告主の嗜好に向けてカスタマイズ制作されている。つまり、番組制作に先立って制作費がすでに用意されているため、制作者サイドには、事業リスクは生じないのだ。逆に、アニメのように制作費が比較的大きなものは、通常の制作予算との超過分を回収する仕組みを自ら備えた広告主が参加することが前提となっているため、出版社か玩具メーカの意思を反映した作品が主流になってしまう

結果、特定の放映の対象視聴者=小学生向けの作品しかTVアニメシリーズとして制作されないことになり、より大きな制作費用を必要とする大人向けなどの作品企画は必然的に現れないことになる(もちろん、「カウボーイビバップ」などの作品もあるものの、玩具ではなく作品それ自体を購入できるようになったアニメファンの年齢上昇などによる出現を考慮し、DVDのプリセールを前提とした作品化という点では、なんら論理展開上の変化はない)

もちろん、このことはTV番組一般の事実であって、必ずしもアニメ作品に限ったことではない。しかしながら、バラエティ中心で、その番組企画案自体は海外に販売できても、作品それ自体をほとんど直接輸出できないTV番組の現在の状況を考慮すると、制作スキル面で明らかに競合優位にあるアニメについては、番組提供に対価としての制作費という枠組みを取り外し、「作品への事業投資」というコンセプトと事業スキームを導入して大きな制作予算を調達し、より良質かつ競争力のある作品を制作したほうが望ましいのではないか

実はドラマなどにもこの発想は導入できる。The X-FilesERなどの人気番組シリーズが、非常に大きな予算をかけて制作されていることは、よく知られた事実だ。これも「番組在りき」という健全な発想ゆえに実現されていると理解できる

数年前からこの発想をキー局の関係者らに説明してきたものの、あまり真剣に取られることは少なかった。しかし、MATRIXを見るにつけて、これら作品にも対抗できるものを制作するには、単に映画作品への投資を活性化するのではなく、テストベッドという点では非常に優れたTVというシステムをも取り込んだ仕組みの方が望ましいといよいよ感じるようになってきた。そして、僕のような発想を理解してくれる人も少なからず現れてきているのも事実だ

MATRIXワールドのアニメへの拡張作品である「ANIMATRIX」を見れば、資金さえあればどの程度の品質の作品が日本のクリエーターたちによって生み出せるかは一目瞭然のはずだ。それをDVDやストリーミングだけではなく、メジャーなTVに登場させることはより大きな価値を生む装置として機能するに違いない

地上波デジタル化などの開始がTVを中心とする日本の映像メディア産業に大きな影響を及ぼしつつある現在、果たしてどのような展開が生まれてくるか楽しみだ

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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