”いい技術とは何か--日本人学生エンジニアの激論160分(前編)(後編) ” を読みました。
ITベンチャー企業3社で社員または経営陣として働いた経験からいくつか気づいたことがありました。
まず、”エンジニア”という単語が頻繁に使われていましたが、実は日本の場合にはハードウェア・エンジニアとソフトウェア・エンジニアではステータスに大きな差があります。
次に、IT関連の業界の体質としては製造メーカーとその出入り業者という悪しき風習が日本のベンチャーを育てる意味でバリアとなっています。
また3番目としては、業務用アプリケーションと基本ソフトや組込向けソフトを分けて考える必要があります。
最後は一番重要と思われ、かつ議論されていない項目ですが、技術と営業だけでなく、グローバルなマーケティングがキーとなります。
一番目のハードとソフトですが、ITが登場する以前はどちらかというとエンジニアとクリエイタという棲み分けがされていたと思いますが、そこにソフトウェア・エンジニアというその狭間の領域を担当する職種が登場しました。元々、組込機器や通信機器の分野において、ソフトウェア(当時はアセンブラ)を記述するエンジニアは存在していましたが、コンピュータの登場によりその領域が独立して来ました。一方、コンテンツやアートの部分(工業デザイン等)を担当する人たちがコンピュータでもの作りをするようになり、やはりソフトウェア・エンジニア的なファクタが必要とされるようになりました。さらに、OSなどの基本ソフトやプラットホーム、アルゴリズム開発等のソフトウェア独自の世界の重要性が増し、ソフトウェア・エンジニア単体でのステータスも向上しました。
しかし、ここで2番目の日本の業界体質とも関連しますが、元来、ハードウェア・メーカーはいわゆる家電大手であり、クリエイタはどちらかというと個人が主体の***オフィスという中小集団が大多数です。そして、ソフトウェア・エンジニアは後者の部類に属しています。今は死語となっていますが、黎明期には”ソフトハウス”という言葉がり、それを如実に象徴しています。
さらに、米国ではデルやサンなどコンピュータ・ハードウェアメーカーは専業メーカーであるのに対して、日本は家電メーカーがパソコン、携帯電話、デジカメを作っています。そのため、日本ではコンピュータ業界では当たり前な水平分散的な分業システムとなっておらず、相変わらず、以前と同様の垂直構造となっており、”パートナー”とか”アライアンス”という言葉も実体は米国のそれとは大きく異なります。
分かり易い例えとしては、25年前も現在もほとんど変わっていないのですが、アンケート調査や金融関係の申し込みの際に、勤務先の業種を選択する項目がありますが、そこにソフトウェアという項目は滅多になく、製造業(いわゆるメーカー)ではないので、私はサービス業にチェックを入れています。これが日本の現状です。
3番目の業務用アプリと組込や基本ソフトに関しては、元来コンピュータの発展は金融システムの発展と切り離して考えることはできません。IBMがInternational Business Machineの略であるようにビジネス分野の数値演算処理をコンピュータが得意としていることは揺るぎない事実です。そして、この分野はホストコンピュータを中心とした大規模システムの活躍の場で、大量の人員を抱えて大規模なプロジェクトを正確に遂行するという、どちらかというと工場における開発に近いものです。片や、基本ソフト、組込ソフトの開発は、精鋭されたソフトウェア・
エンジニアがアルゴリズムやアーキテクチャを構築して、プログラミングにより具現化する世界で同じソフトウェア開発でも性質が全く異なるものです。日本は前者の開発は比較的得意としていますが、後者は米国が圧倒的に優位にあります。特に、第五世代コンピュータの国家プロジェクトが失敗して以来、日本には画期的な成果が見られていないように思います。糸川英夫氏もよく言われていましたが、日本人はきちんと評価することができないということでしょう。
最後のマーケティングに関してですが、実はこのことがベンチャー企業では一番重要となります。
今回の討論で全く抜けている部分ですが、
☆技術志向のベンチャーの場合、既存のマーケットをターゲットとするのではなく、新しいマーケットを創造する活動が必要となります。
☆またコア技術の場合、開発をしてから利用方法を考えるのではなく、開発当初からエンドユーザがどのような利用をするのかのイメージをブレインストーミングしておき(確信は必要ありませんが)、それにはまるように技術開発(Enabling Technologyとして)のベクトルを向けておく必要があります。
☆折角、全世界ほぼ同じOSの上で、音楽と同様にプログラムという世界共通語で作られた作品を開発するのですから、若いソフトウェア・エンジニアには、最初からワールドワイドをターゲットとした技術および製品開発を目指すことを望みます。
最後に、全体的なこととして、ベンチャー企業の場合、スピードが命ですから、経営者、社員全員がプロフェッショナルである必要があります。そういう意味では、経営者は技術に精通している必要はなく、会社経営のプロであることが必須条件となります。米国では、全く異なる業界からCEOが抜擢されることが頻繁にありますが、このことからある業界での人脈や経験、知識とは切り離されて経営者という職種が分業化されていると考えられます。
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米国では,最初から世界をターゲットに動いてるのに対し,日本では,ターゲットが日本で終わっちゃってますよね.日本で成功したら,世界(といっても大半は米国ですが)へ進出する,という流れだと思います.
これは日本国内でも,東京の人は日本全国がターゲットなのに,地方の人は地方がターゲットだったりします.
国民性というところはあるでしょうが,それも日本と米国の差かもしれませんね.