最終更新時刻:2008年10月6日(月) 19時43分

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「今ならあなたなら5割引!」 対談4 「位置連動サービス」

公開日時:
2007/03/01 15:14
著者:
宮田拓弥

 「地図」は、インターネットの出現によってその使われ方が最も大きく変わったコンテンツの一つです。インターネットが普及する以前であれば、初めての場所に行く場合、ガイドブックや地図などで事前にそこまでの経路を調べて、実際にそこへ赴く際もガイドブックなどを見ながらという行動が一般的でした。その後、インターネットが普及したことで、新しいスポットの発見やその地図の入手方法はインターネットの検索で、というケースが増えたのではないでしょうか?実際に現地へ赴く際は地図をプリントアウトするか、最近ではそれを携帯電話に転送してという方も増えていると思います。「目的の場所を見つけその経路を調べる」という紙の地図が持っていた機能は、すでに完全にインターネット上の地図に置き換えられてしまったという感もあります。もちろん、紙の地図や地球儀には、知らない土地を眺めていろいろな思いを巡らすといった別の楽しみもありますが。

 今回テーマとして取り上げる携帯電話のGPS機能を活用した「位置連動サービス」は、こうした紙の地図との置き換えに加えモバイルインターネットならではの更なる可能性を秘めたテーマだと思います。

 念のため説明をしておくとGPSとは、Global Positioning System (全地球測位システム)の略で、人工衛星を利用することでそのセンサーの位置(つまり携帯電話の位置)を割り出すシステムのことです。以前は軍事上の理由で意図的に作られた位置のずれなどの問題がありましたが、現在は数mのオーダーの精度でそのセンサーの位置をほぼリアルタイムで測定することができます。携帯電話には、2001年から徐々に搭載が始まり、今年の春からは3Gの端末への搭載が義務付けられるということで、次々と新しい対応サービスが発表されています。

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 紙の地図との対比で言うと、携帯電話にGPS機能が付いたことで実現できる基礎的な要素は、ユーザが自分の「そのときにいる位置が分かる(現在位置)」ということと「移動した履歴が分かる(履歴)」ということです。現在日本国内で提供されている携帯電話向けの主な位置連動サービスは、このうち「現在位置」を利用しており、類型化すると「ナビゲーション」「セキュリティ」「店舗誘導」の三つに分類できると思います。

ナビゲーション
- GPS機能が付属する全ての端末に搭載されている機能で、ユーザが今いる場所から目的地まで音声と地図でナビゲーションしてくれる機能。
- ナビタイムゼンリンなど

店舗誘導
- レストランやお店など検索した場所へユーザを誘導する機能。
- ぐるなびゾゾなび

セキュリティ
- 子供のセキュリティ用機能で、親が子供の居場所をすぐに調べることのできる機能。塾など、いるはずの場所の付近に子供がいない場合にアラートを出すという機能も。
- イマドコサーチKDDI

 筆者も主にビジネスのシーンで頻繁にナビゲーションのサービスを利用しています。最初に自分の位置を計測するGPSの測位にまだ時間がかかるので完璧とは言いがたい使用感ですが、地図をプリントアウトしたりするのに比べれば手間の面でもはるかに便利さを感じます。地図を読むのが苦手な方であれば、そもそも自分の「現在位置」を地図から見つけるのさえ苦労することを考えると大きな違いがあるでしょう。最近特に増えていると感じるのは「店舗誘導」にGPS情報を活用するケースで、早い時期からあったレストランへの誘導などに加え、最近では不動産や衣料などでも活用が進んでいるようです。

 このGPSの「現在位置」情報を活用することで面白いビジネスを展開しているベンチャーに「ロケーションバリュー(以下、LV社)」という会社があります。LV社は、GPS情報を活用して、短期雇用のマッチングをサービスとして提供しています。多くのサービスが「ユーザ」の側のみが移動することを前提しているのに対し、LV社のサービスは「ユーザ」はもちろん「雇用者」側も動的に発生するというのが面白い特徴です。今回、社長の砂川氏に、そのサービスの特徴と現状についてお話をお伺いしました。

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宮田 まず初めに、現在ご提供されているサービスの概要を教えてください。

砂川 「おてつだいネットワークス」という、今手が空いているユーザと、すぐに人手が欲しい企業とのマッチングサービスを提供しています。ユーザが「今暇です!」と手を挙げるとそれが弊社の地図上に表示されます。一方、ここで今人が欲しい、と企業が登録をするとユーザの中から条件にマッチする人をシステムが見つけて連絡を取ります。そこで応募があると、企業さんの方は過去の仕事の評価などを見て採用を決めるというフローになっています。従来の人材派遣会社だと最低でも8時間からのオーダーが一般的ですし、今すぐに見つけるということは難しいですが、弊社のサービスでは1時間とか2時間と言った非常に小さな単位でも依頼することができるのが特徴です。

map_t.jpg

今朝(3/1)の時点でのお手てつだいネットワークスの地図。
紫色が現在休職中のユーザ。実際に人材を探しているオレンジのアイコンもある。

宮田 動的に発生する人材ニーズを携帯電話上でマッチングするということですが、近くに居て暇であるというだけではなかなか企業の側は採用まで行きにくいのではないかと思いますが?

砂川 我々のサービスを最も利用されているのがいわゆる軽作業系の人材採用なのですが、そもそも人材が絶対的に不足しているという実態があります。そうすると、そもそもスクリーニングのプロセス自体が非常にシンプルにならざるを得ないのですが、弊社のサービスでは前の雇用者からのフィードバック(評価)が事前に分かるという、従来の人材派遣や採用のプロセスでは全くなかった情報が付くようになっています。雇用者側は、単なる経歴書だけでなくそうした情報を見てから採用を決めることができるようになっています。実際に、普通の求人広告媒体で0.2%くらいの採用率であるのに対して、弊社のサービスは約70%と非常に高い率になっています。

宮田 実際の利用の状況はどのような感じですか?

砂川 ユーザ数は、約1万人です。年代で言うと、10代が11%、20代が50%超、残りが30代です。プロフィールでいうと、学生25%、フリーター25%、会社員23%、1割が会社員、残りが主婦層です。現状で大体、一日に20〜30件程度マッチングがあります。あと面白いのが、地方での利用が意外と多いです。紙の求人広告であれば当然ある程度求人のある都市を中心に展開せざるを得ませんが、携帯であれば全国カバーができます。GPSとインターネットを使って動的に情報を表示できますので、急に人材が必要になったというような雇用ニーズに対して隣町のユーザをマッチングすることも可能なわけです。


ロケーションバリュー社 砂川社長

宮田 面白い使われ方の事例などありますか?

砂川 学生さんや主婦のアイドルタイムを有効に使いたいと考えているユーザに受けていると思っています。例えば、以前「1時間1800円」というチラシ配りの募集が出たことがあって、さすがに時給が高くてもトータルで1800円では誰もやらないだろうと思ったら、予想に反してかなり沢山応募がありました。「1時間ちょうど空いてたよ」みたいな感じでしょうか。あと、ヘビーユーザはバイトのはしごをします。1回入って、入ってる間に応募して、こっち入って、また応募して、ここに入ってみたいな事を3回やって、だんだん家に近づいていって家に帰る。紙の求人広告や人材派遣会社ではできない使い方だと思います。

宮田 今後のどのような展開を考えられていますか?

砂川 弊社は、人材紹介の会社ではなくて、位置情報の会社です。人材紹介のサービスはその第一弾のサービスです。「おてつだいネットワークス」のサービスを通して蓄積されたSNSのノウハウや、人に位置情報を発信させる為のハードルがどれくらいかといったノウハウなどを活用して新しい位置情報サービスを展開して行こうと思っています。現在、弊社は会員1万人の位置情報をリアルタイムで持っていることになりますから、そういったもののデータっていうのが今後非常に大きな価値を生むことになります。もちろん、それを公開するという意味ではなく、統計的なデータベースとして活用したときに価値がでると思っています。
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 雇用のニーズを動的にマッチングする。理論上はありそうですが、実現の難しそうなサービスを、信用の問題などを様々な工夫で乗り越えて実現しているという点で非常にユニークな位置連動サービスだと思います。

 位置情報サービスは、どうしても「GPSで何ができるか」という技術視点からスタートしがちですが、LV社のように「1時間だけ働きたい人がいる」というような働き方のニーズ自体が多様化しているという社会構造の変化もじっくりと観察することで新しいサービスが産み出せるのかもしれません。

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 GPS情報の「現在位置」を活用したサービスは、LV社の「人材」やゾゾナビの「ショップ」などの店舗誘導など特化型のサービスがこれからも次々と出てきそうです。一方で、ポータル的(汎用的)な展開を考えた場合は、まだもう一ひねりが必要な気がしています。GPSの「現在位置」情報をベースにした情報配信とPCでのキーワード検索連動広告を比較すると、キーワード検索連動広告の場合ユーザが知りたい情報は間違いなくその検索したキーワードに関連した情報であるため、そのキーワードに関連した広告は効果が高くなります。一方で、GPSの「現在位置」情報は、ユーザがそこにいるという事実は間違いがなくても、実はそこで何をしようとしているのか、何のためにそこにいるのかまではわかりません。特化型サイトであれば、そのサイトにくる時点で興味は明確ですが、ポータル的な展開を考える場合、現在位置の情報だけで広告を配信してもなかなかマッチングレベルがあがらないと想定されます。

 そこで、筆者は位置連動サービスの次のステップとしては、「移動履歴」「独自商品開発」「ソーシャル」といった分野がキーワードになると考えています。

 まずは、「移動履歴」です。これはまさに最近PCの世界でも注目されている行動ターゲティングのリアル版のような発想で、「今どこにいるか」だけではなく、「何のためにここにいるか」というのを理解しようということです。先述の通り、GPSでは「現在位置」に加えて「履歴」をとることができます。その情報を分析することで同じビジネスマンが銀座で歩いているのでも「客先に行く前にお土産を買いに行く」のか「疲れをとるためにマッサージ店を探している」のか、をある程度推測することができるはずです。広告にしても、サービスにしても、「位置」という軸だけでなくもう一つ以上の軸で切った上で情報配信することでよりマッチングのレベルがあがると思います。当然、どうやって履歴をユーザに提供してもらうのかというのはまた別の問題があります。昔PCの世界でもあったように、ユーザ情報を特定しないで行動履歴を蓄積してそれを提供するというようなビジネスが生まれるのかもしれません。

 次は「独自商品開発」です。これは「今ある商品を位置情報をベースに売る」という従来の発想の逆で、「位置情報をベースにして商品を開発する」という発想です。朝の通勤時間帯にコーヒーショップが店頭で持ち帰りのコーヒーを販売していることや、夕方の時間帯にビールが100円で飲めるハッピーアワーと基本的には同じ発想ですが、さらに個人の単位で考えることでそれぞれ単価を変えたり、配信するクーポンの内容を変えたりすることができると思います。随分先の話だとは思いますが、危ないところには行かない人は保険料が安いGPS連動保険なんていうのも楽しいですね。現在でも大規模なフランチャイズチェーンやコンビニなどではGISを活用して実現していることですが、GPSを使うことで小規模なお店でも同様のことができるかもしれません。

 最後に、「ソーシャル」という発想も位置情報サービスの設計には非常に重要な要素になってくると思います。弊社が提唱している「LENS(レンズ、Location Based Experience Networking Service)」というコンセプトでは、いわゆるSNSでいう「人と人のつながり」に加えて、「もの」や「店」とユーザとのつながりも含めて考え、その関係性の動的な変化に着目します。人と人のつながりが位置や時間によって動的に変化することに着目しているのが、いわゆるMososo的なSNSのサービスで「今近くに居る2 degreeの人と会う」というような発想になります。加えて、同じ金沢という場所にいるのでも、観光で来ている人とビジネスでいつもそこに居る人では求めている情報は違うというのがLENSの発想です。携帯電話では、友人や家族とのコミュニケーションに加え、お店や会社との間のコミュニケーションにも当然使われる端末です。最近では、ICカードという出口も加わったことで、よりリアル、お店や場所との結びつきが強くなってきています。ユーザの日々のリアルな空間での行動に連動した部分、そこに位置連動サービスの未来があるような気がします。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

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