最終更新時刻:2008年10月7日(火) 6時58分

-

「パーソナライズ」「集合知」対談2 「検索」 後編

公開日時:
2007/01/13 15:12
著者:
宮田拓弥

前編はこちら

-------------------------------------
宮田 紺野さんが前編で指摘されたような検索結果の精度の問題以外にも、キー操作の制限により一番上に表示されたものが広告であったとしてもクリックされやすい、というようなモバイルならではの問題もあると思います。今後、モバイルにおける検索はどのように方向性で発展していくとお考えでしょうか?

紺野 まず、PC・モバイルという違いはさておき、検索エンジン自体の発展の方向性としていわゆるセマンティックウェブ的な概念を取り入れる動きは今後出てきています。つまり、検索エンジンがページに書かれている情報をこれまで以上に理解することで、検索の精度を上げていくという技術に対する取り組みです。これは、もちろんモバイルにおいても精度という面で大いにプラスになると思っています。加えて、今後のキーワードをあげるとすると、「パーソナライズ」と「集合知」でしょうか。
「パーソナライズ」とは、文字通りユーザ毎に検索結果を変えていくという仕組みで、GoogleなどはすでにPC向けには導入しており、過去の検索履歴を活用して検索結果画面を個人毎にカスタマイズするオプションがあります。モバイルにおけるパーソナライズも、「場所」や「時間」といったシチュエーションによって変わってくると思われますので、これから試行錯誤が行われることでしょう。これは、キャリアがどの程度まで情報を提供してくれるのかという点にも依存してきますので、今年の中盤頃から方向性が見えてくると思います。
もう一つの「集合知」は、いわゆるCGM的な発想で、単なるシステム的な検索ではなく、ユーザ同士が情報をシェアしあったり、ユーザ自身がデータベースを構築していくような仕組みのことです。これはビジネスモデルにも関連する話で、ポータルサイト的なビジネスを展開しているYahoo!のようなサイトからすると、単に効率よく検索が行えてその検索結果から他のサイトに短時間でユーザ流出する仕組みを作っても仕方がない。つまり、ユーザに対して検索機能としての満足度を提供しつつも、自分たちのサイトにユーザが滞留する仕掛けをつくろうとすると、CGM的な発想になるわけです。

宮田 携帯電話は、そもそも「電話番号」や「メールアドレス」という個人情報が組み込まれているデバイスであるという点で、検索に限らずユーザがサービスをパーソナライズされることを受け入れやすいというのは同感です。では、どのようなレベルでパーソナライズは進むとお考えでしょうか?

紺野 パーソナライズって意外と難しいですよね。同じ情報でも、最初に欲しかった情報が、次に見たときにはそうではなかったりする。 モバイルがPCと違うのは、すでに生活に密着してある種の生活プラットフォームになっている点です。そのため、ユーザがわざわざパーソナライズしようと意識しなくても、検索エンジン自体が勝手にそのユーザに最適化していくということができるのではないかと考えています。例えば、年齢・性別といった基本情報などはユーザが登録するとして、自動的に端末から取得できる位置情報、有料課金コンテンツの利用情報などをユーザ情報として検索エンジンの側に供給していく。ユーザが求めているのは、いかに短いリードタイムで自分の欲しい情報まで行き着くかなので、いま存在しているキャリアのトップメニューなどに検索が勝てるような仕組みを作れるかが大きな分かれ目だと思います。セッション毎に「この人は、今こういう状況だからこういう情報を求めているはず」ということが見えるレベルまで情報が供給されるようになれば、現在の状況よりは精度が上がってくるはずだと思っています。

 宮田 なるほど。個人的にはパーソナルデバイスという側面を大いに活かして、パーソナライズ検索を追及して欲しいなと思いますね。一方で、端末の中にある個人情報を取られるという見方をして気にされるユーザも少なくないと思いますが。

 紺野 当然ハード側の公共性と、個人のプライバシーのバランスをどうとっていくかという点は重要だと思います。もしかすると、ユーザが主導するオプトイン、オプトアウト的なものに依存するかもしれません。特に日本の場合は、検索エンジン主導でというよりも、キャリアの力が強いという側面があるので、彼らがその辺りをどう主導していくのという点に注目をしています。

宮田 なるほど。その他に、モバイル向けの検索を考える上での問題点などはありますでしょうか?

紺野 非常に基本的な話なのですが、検索の精度以前の問題として、企業側は実はモバイルサイトを持っていないという問題もまだまだあります。また、企業サイトは持っていないのに、キャンペーンサイトだけ持っているという会社も多い。これまで、大手企業でのモバイル活用は良くてキャンペーン利用だったので、特定の部署やサービス単位でサイトが作られているというレベルだったりします。この辺りは、検索エンジンの普及と並行する形で徐々に企業側の意識が変わってくれば解決されていくと思います。
 
宮田 そもそも検索すべきサイトが存在しないというのは、改めてモバイルの検索というものが草創期にあるのだということを感じます。さて、最後になりますが、「モバイル独自」の検索の仕組みというものの可能性についてはどのようにお考えでしょうか?例えば、90年代に固定電話向けに試験的なサービスがいくつかあった「音声検索」や、弊社も含めて取り組みがされているカメラを使って見たものをそのまま検索する「画像検索」などがありますが。

紺野 音声と画像は間違いなく今後のキーになってくると思います。ただ、一方で、やはりこれまで普及しない足かせになっていた「精度」の問題がどれだけクリアされているのかがポイントになると思います。その辺りがクリアになれば、音声や画像による検索というのは間違いなく来るのではないかと思っています。特に、画像という切り口で言うと、YouTubeなどの成長により、「動画の最適化」という視点がすでに出てきています。一つ一つの企業が動画によりいろんな情報を発信していこうとし始めている中で、それは例えばIR情報のストリーミングであったり、PRであったり色々な情報が含まれると思いますが、そういった動画がどのような形で検索にかかってくるのかというのを管理したいという企業側のニーズが出てきています。まだ、画像検索や動画検索はそれほどされていないという状況はありますが、企業側の動きが先行してそうした流れを作っていく可能性を感じます。

irep1.jpg

-------------------------------------------------

 ようやくという感じで昨年急浮上した「検索」機能ですが、今回伺った実際の検索クエリーの内容や結果の例示を見てみると、ユーザの期待に応えられるレベルにはまだ到達していないように感じます。一方で、紺野さんが提示された「パーソナライズ」「集合知」というキーワードにあるように、PCインターネットの発展の中で見出されたモデルを活用できるという強みがあるのも事実なので、そうした点とモバイルの特徴をうまく組み合わせた新しい形が今後開発されることが期待されます。
 「検索」というアプリケーションは、現在のPCインターネットでの検索の形の印象がどうしても強いですが、改めて因数分解してみると、「入力手段」「データベース(インデックス)」「アクション」の3つの組み合わせで成り立っています。特に、携帯電話における検索を考える場合に、一番革新が期待されるのは「入力手段」の部分で、すでに「文字(キーボード)」「音声(マイク)」「画像(カメラ)」「位置(GPS)」「店舗(ICカード)」「赤外線」といった様々なものが存在しています。昨年急速に普及したQRコードなども携帯電話ならではの面白いある種の検索手段といえると思います。従来の検索エンジンの精度向上の部分に期待するとともに、「モバイル独自」の検索エンジンの形にも期待したいと思います。
 次回は、その一つ「カメラ」の可能性について、画像技術がご専門の慶応大学斉藤教授とカメラメーカー、オリンパスの古橋氏と三人で対談いたします。現状の携帯電話のプラットフォームの枠にとらわれず、「カメラ×携帯電話」という切り口で何ができるのかについて、話を伺いたいと思います。

次回以降もよろしくお願いします。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。

このエントリーへのコメント

ブログにコメントするにはCNET_IDにログインしてください。

この記事に対するTrackBackのURL: 

このブログについて

ブロガープロフィール

アーカイブ

2008年10月
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 

カテゴリ

ブログネットワーク

アルファブロガー

村上敬亮 情報産業の未来図ネットワーク型産業構造への衣替え?
村上敬亮 情報産業の未来図
クロサカタツヤの情報通信インサイトグッバイ、レバレッジ!(1)
クロサカタツヤの情報通信インサイト
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」9月イベントお知らせ
末吉隆彦 ロケーションウェアの「空」と「実」
ケータイ時代のスタンダードiPhonista Nightの事後報告
ケータイ時代のスタンダード
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance新サービスをローンチしました
江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance
鈴木健の天命反転生活日記パラレルワールドとしての電脳コイル
鈴木健の天命反転生活日記

読者ブロガー

ネットのニュース.logiPhone2.2では、絵文字に対応?
ネットのニュース.log
それでも開発は続くよすでに土砂降りのIT業界
それでも開発は続くよ
オープンソースJoomla CMSCMSでのSEO対策効果を実験している
オープンソースJoomla CMS
電子政府パブリックコメントの抜粋平成 14 年の、医療体制に関する意見募集を偶然発見
電子政府パブリックコメントの抜粋
レンタルサーバの裏事情割賦販売制度の副産物
レンタルサーバの裏事情
Windowsラブなただの主婦XPへのダウングレード権がさらに延長
Windowsラブなただの主婦

企画特集

エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」エンタメCGM「gooメーカー☆メーカー」
【第1回】開発者に訊く!各機能と開発の狙いとは
KDDI「SaaSソリューション」KDDI「SaaSソリューション」
〜社内コミュニケーションの課題への解決策とは〜

新着コメント

Eatta さんのような、詳しい方のご意見をぜひ伺いたいと思っておりました。 ......
車の両輪が私有地に接地した状態でないと走行できない公道(架空の例)
投稿者:sumimotoshohei
国土調査前の土地の図面(旧字図)は、縮尺ことあるが精度は無いに等しいもので......
車の両輪が私有地に接地した状態でないと走行できない公道(架空の例)
投稿者:Eatta
はじめまして。 ご指摘のことは、日本でも行われていると考えられます。 架......
グーグル、社員の個人情報を盗まれる--人事業務の外部委託が原因 (米国)
投稿者:moroi
mugendaiさんコメントありがとうございます。 お金持ちに優しい世の中である......
「誰でもよかった」の匂いがする個室ビデオ放火事件
投稿者:きむこう
みなさん、コメントありがとうございます。今回、個室ビデオ店放火事件を取り......
「誰でもよかった」の匂いがする個室ビデオ放火事件
投稿者:mugendai

ブログネットワークとは?

CNET Japan ブログネットワークは、元はCNET Japanの一読者であった読者ブロガーと、編集部の依頼により執筆されているアルファブロガーたちが、ブログを通じてオンタイムに批評や意見を発信する場である「オピニオンプレイス」、また、オピニオンを交換するブロガーたちが集うソサエティです。

広い視野と鋭い目を持ったブロガーたちが、今日のIT業界や製品に対するビジョンや見解について日々熱く語っています。

あなたもブログを書いてみませんか?

CNET Japanやその他サイトが提供するITニュースやコンテンツへの意見や分析、 ビジネスやテクノロジーに対するビジョンや見解について語っていただける方を 募集しています。ご応募はこちらから

ブログの投稿・管理

ブログの投稿はこちらから(※ブロガー専用)

ブログアワード2007開催決定!

今年最も活躍したブロガーを表彰します。詳細はこちらから

αマークって?

これは、CNET Japan 編集部の依頼に基づいて執筆されているCNET Japan アルファブロガーによるブログの印です。

Good!って?

CNET Japan ブログネットワーク内で拍手の代わりに使用する機能です。ブログを読んで、感激した・役に立ったなど、うれしいと思ったときにクリックしてください。多くGood!を獲得した記事は、より多くの人に読まれるように表示されます。

レビュー

[レビュー]2011年画質を備えた高画質、多機能Blu-ray--ソニー「BDZ-X95」
ソニーのBlu-ray Discレコーダー新製品が登場した。2007年から引き継がれる「やりたいことから選ぶ」シリー
今週の新製品総チェック:よりモバイルPCとして進化した「Let's note」が登場
松下電器産業の「Let's note」、デルのデスクトップPCとPC新製品が数多く登場した。Let's noteは9時間駆動
今週の新製品総チェック:フルサイズCMOS搭載のキヤノン「EOS 5D Mark II」が登場
キヤノンからもフルサイズCMOSセンサを搭載した「EOS 5D Mark II」が登場した。合わせてコンパクトデジカメ
今週の新製品総チェック:第4世代iPod nano登場、ソニー「α」、松下「LUMIX」に新機種も
デザインを一新したiPod nano、容量増されたiPod touchなど、新iPodファミリーが登場した。その後を追うよ