特急列車に乗っていたり新幹線に乗っていたりして、車両の入り口付近を眺めていると、人が自動ドアを通って車両に入ってくる。トーキョー近辺を走る特急はたいていそういう仕様になってますよね。ところが、ドア付近の席を陣取る客にとっては、この自動ドアはやっかいな存在だ。荷物を出そうとしたり、ちょっとノビをして腕をぐっと伸ばしたりすると、「グイーン」と反応して自動ドアが開いてしまうのである。
荷物整理をする時なんて最悪だ。上から荷物を取ったときに「グイーン」、ごそごそと荷物の中を整理しているときにも「グイーン」、そして再び荷物を戻そうとしたら「グイーン」と、少なくとも3回は自動ドアが開閉する。端から見ていればシュールな図だと思う程度で済むんだけれど、荷物整理だかさがしものをずっとしている人がそこにいたら、1駅の移動中ずっと「グイーン」「グイーン」と言い続けてうるさいし、もし自分がそのドア近くの席に座っていたら、それだけで気恥ずかしくなってしまう。
自動ドアからすれば、職務を全うしているだけである。けれどもそれはドアの近くにいる人間の意志を反映しているわけではない。人間と機械とのすれ違いを何とかしたい、と目の前で「グイーン」「グイーン」言い続けている自動ドアを見ながら思ったのである。R25で取材を受けたときに、「人間がケータイに気遣っているのが現状で、ケータイが人間に気遣うようになるべきだ」という話を書いたが、ケータイを自動ドアに置き換えても同じコトだ。
自動ドアが列車の車両の入り口に取り付けられているのは、特急列車だとたいてい荷物が大きくて、荷物をドア口において重たい鉄のドアを引っ張らなくてもいいように、という理由が創造できる。もちろん大きな荷物を持っている人だけじゃなく車いすの人だったり、お年寄りで重たいドアを引っ張るのがつらい人にとってもありがたい配慮だろう。いわゆるバリアフリーに対応する手段として設置されているのが自動ドアなのだろう。
とはいえ鉄の扉を引っ張る力もあるし、さして荷物を持っていない時の僕でも、車両に入るときの自動ドアは気持ちが良い。だって僕が近づいていって、ドアの前に立てば勝手に扉が開いて中に入れるのだから。それが列車の中に設置されていて受ける印象は、バリアフリーになっているのだなと言うことではなく、ちょっとした高級感だったり心地よさだったりするのかもしれない。だからこそ、荷物整理をしている間には「グイーン」「グイーン」とは働いて欲しくないし、必要なときに開閉してくれればそれで良いと思ってしまうのだ。
だったらどうやって、ドアの開閉が必要か、と言う僕の意志を自動ドアに感じてもらうのか、と言う問題が出てくる。先ほどは自分が自動ドアを通りたいかどうか、と言う意志の問題で、それを感じ取ってくれれば荷物整理中にはドアの開閉はないのだ、という考えを書いた。しかしながら、世の中にこれだけ普及している自動ドアである。普通に考えたら、そこら中の自動ドアに僕の心を読まれるのはちょっと気持ちが悪いし、僕みたいにひねくれた人間だったら、何とかして裏をかいてやろうと意地悪をするかもしれない(それを考えたら全部の便利なモノが否定されますよね)。
まあそれはともかくとして、全ての場所の自動ドアが自分の気持ちを読んでしまうのが、やはりちょっとオープンすぎやしないか、と思ったのだ。そこで、いつも身につけているケータイを使ってみてはどうか、と考えてしまうのは職業病だろうか。それも、ケータイが人間に気遣うようになってからの話である。
技術的にはBluetoothあたりの近距離通信を使っても良いし、もうちょっとICタグを使って車両内の動きをナビゲートする機能と関連させても良い。将来的にモバイルSuicaで特急指定席券や新幹線のチケットを買うようになるのならば、この人はいまどこの車両にいて、どこの車両まで行く必要があるか、という情報から自動ドアを制御しても良い。ちょっと自動ドアと人の意志からは離れてしまったが、「似たようなこと」を実現できているように思える。
もうちょっとヒトとケータイとの関係を肯定的に捉えるなら、ケータイにだけヒトが気を許していて、ケータイは周りの環境にタイして、ヒトの行動のアシストをするように整備してくれる、というようなモデルが出来ればいいのではないか、と思う。
僕にはBlogやSNSで実名を公開するようなプライバシー感覚のある種の麻痺が起きているけれど、果たして気持ちまでデジタルやネットに許す感覚がどのようにして生まれ、それが必要だ、快適だ、と思えるようになるのか、もう少し考えてみる必要がありそうだ。
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