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おサイフケータイが普及したら -- 生活メディアの一番手を考える

2006/01/10 18:55
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松村太郎

携帯電話の機能進化が進む中、アーリーアダプター層がどのように携帯電話を使いこなし、生活がどう変わっていっているのかについて、携帯電話と社会のあり方について研究するSFC研究所の松村太郎さんが紹介します。
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 本年もなにとぞよろしくお願いします。 さて早速だが、2006年のケータイに関して考えてみることにしよう。基本的に「ケータイのアーミーナイフ化」がさらに進んでいくと考えている。今まではコミュニケーションメディアとしてのアーミーナイフ化が進み、表現メディアを飲み込んできた。そしてこれからは生活メディアとしてのアーミーナイフ化が本格的な浸透をスタートさせる。アーミーナイフ化というのがちょっと漠然とした表現なのでご説明したいと思う。 まずアーミーナイフを思い浮かべて欲しい。たばこほどの長さのコンパクトなボディながら、ナイフやドライバー、缶切り、のこぎり、ハサミ、レンチ、つまようじからピンセットまで多くの役割をこなす。どれも専用のナイフやドライバーに比べれば小さくて使いにくいが、ポケットに入るサイズでこれだけの役割をこなすというメリットがあるし、モノとしての面白さもある。 ケータイの話に戻る。人とのコミュニケーションやネットの利用に関して、このアーミーナイフ状態になっているのが現在のケータイだ。通話、メールといったコミュニケーション機能をはじめ、ウェブの接続や音声・動画の再生機能を持ち、静止画・動画のカメラが入っている。ケータイとアーミーナイフと違う点は、ケータイでは納められている機能を相互に連携させることができるところだ。アーミーナイフでハサミと缶切りとを連携させて使う事は難しいだろう。しかし、ケータイでは、カメラ機能で撮影した写真をメール機能で送信する、といった芸当が可能だ。 ここにいよいよおサイフケータイが割って入ってくる。現代の生活において必需品であるサイフが、現代のアーミーナイフたるケータイの機能として加わるのだ。 すでに電子マネーやポイントカードがおサイフケータイで実用化されているが、2006年1月末にスタートするモバイルSuicaを皮切りに、各種クレジットカードも使えるようになり、さらに利用者数は伸びるだろう。その普及のスピード、動向も注目したいが、サイフの機能が「新規参入」してくることでケータイというアーミーナイフがどのように変化するのか楽しみだ。 サイフが日常生活の中で使われる生活メディアだと位置づければ、ケータイがコミュニケーションメディア(メール・ウェブなどのネット)や表現メディア(写真・ムービーのカメラによる画像、メールなどの文章)だけでなく、生活メディアをも飲み込むことになる。 将来街に出るときは現金もカードも持たず、ケータイ1つで済むようになる、これがおサイフケータイの最終形態だとしよう。ならば、どうやったらその状態をいち早く体験できるか? 手段として考えられるのは、生活の出費のすべてをクレジットカードで行うということだ。 クレジットカードがケータイに入ることが最終形態と言うわけではないが、実は僕自身、2005年4月から財布を持たず、カードケースにクレジットカードと非常用の2000円札2枚を入れただけの生活を実験として続けている。コーヒー1杯から、駐車場代、気に入った手袋まで、すべてをクレジットカードで決済するのだ。 実験はまだ続けるつもりだけれども、簡単に報告を。東京で過ごしている僕の結論は「1人で過ごしている分には何ら問題がない」ということだ。持ち歩くサイフをケータイだけにする状態に早く移行してしまっても、そこまで大きな不便に見舞われることはなさそうだ。 今までと大きく変化するのは、お金を使う行為に貨幣が伴わなくなること。店頭ではカード決済をし、銀行で使った分が引き落とされるという、完全なる数字とモノ・サービスの交換ということになる。カードというとすぐに心配されるのが「使いすぎるのではないか」ということだが、現金を使わずカードだけですべての決済をこなすと、自然と毎月引き落とされる金額が同じ数値で推移するようなってきた。これは自分でも驚きである。 すべてカードで支払いをするならすべて現金で支払いをする生活と出費の感覚は変わらない。使った金額はネットで照会できるし、毎月の明細が送られてくるので、むしろ出費へのルーズさは減ったのかもしれない。僕の性格だと、300円のコーヒーを帳簿につけることはまずなかった。 今回は実験という要素が強いからかもしれないが、カードが使える店を選ぶようになった点は自分でも気づくほど顕著に現れた。現金がないので、コーヒーを飲むとしても、カードが使えるお店を選ばなければならない。1人で過ごしているなら自分で店を選べばいいが、誰かと打ち合わせをするときなど自分で店を決められないのであれば、現金がないと困ったことになる。これが「1人で過ごしている分には何ら問題がない」という1つの理由だ。 また何人かで食事をしている時も問題が出てくる。別に1人で建て替えきれないほど高級な食事を取ることはないから、カードが使える店なら建て替えておいて、割り勘の分を後で現金でもらえばいい。この割り勘はいわば、サイフの中身と人のコミュニケーションとがクロスするポイントだ。僕が困ったのはサイフを持っていないから現金をしまう場所がないということ。しかも負担金額の帳尻は合っているが、クレジットの明細では多い建て替えた金額が記録されているのでややこしいですね。 そんなとき、現代のアーミーナイフたるケータイならではの、内包した機能を連携させるという特徴を生かして、ケータイに入っているメールや赤外線などのアドホックな通信で、数字のやりとりをして決済してくれれば良いのに、と思った。端末側に割り勘機能をつけて、1人ずつケータイをタッチして出て行けばいいようにしてくれても良い。現金が入っているサイフでできることは、カタチや方法が変わってでも、最低限おサイフケータイでもできる必要があるということだ。 クレジットカードには普及のためにポイントなどのインセンティブが付いている。たとえばショッピングモールが発行しているカードは、そのショッピングモールで決済すると、買った金額の何%がポイントとして還元されたり、優待が受けられたりするという具合だ。カードだけで生活を始めると、生活サイクル・パターンの中で明らかにお得になるということになれば、そこで新たにカードを作る。 決済金額は分散するから増えないものの、持ち歩くカードの枚数は増える。このインセンティブ方式のビジネスがどこまで続くか分からないが、消費者目線からすると、買い物をする場所が利用者に専用のサイフを持たせる状態が、このカードの枚数の増加を物語っている。そのとき今までバラバラだったカードというモノ、もしくは別々に発行されていた会員IDを1つにまとめて連携させていくのがケータイの役割かもしれない。すでにケータイの上での連携が実現している電子マネーEdyとANAマイレージクラブは良い例だ。 まあ近々このストイックな実験を終えるとして、当分の間はまだまだサイフ(現金)が必要なので、長年ぼろぼろになったサイフはあきらめて新調しておいた方が良いですね。ただ、サイフを買うのはこれが最後かもしれないので、とあるブティックに勤めている後輩に良いサイフを見立ててもらうことにします。 さてサイフの話の中でも出てきたキーワードで今年注目しているのが「アドホック通信」。現在街の中でアドホック通信が使われているモノを探すと、ニンテンドーDSやPSPなどのゲーム機、カラオケボックスの電子歌本(無線LANやBluetoothが採用されてインテリジェント化が驚くほど進んでいる)など、意外とたくさんある。ケータイ同士が公衆網を介さずに通信する手段は一部の端末のBluetoothや赤外線に限られているが、パケット定額制のユーザーが増えれば、別に新たな通信手段を採用することもない。次のケータイで当たり前のように行われる通信がアドホック通信である。 アドホック通信に関しては2006年中に一般化することはまだないだろうと感じている。技術的な解決はさておき、使う側の人間のアドホック通信を使いこなす経験への心配である。仲間内でも、自分のプライベートなモノであるケータイが、他人のケータイとやりとりする感覚に慣れなければならない。たとえばおサイフのやりとりなんて、いくらセキュアだと言われても、自分のサイフの中身に他人からアクセスされるなんて、ちょっと心配になってしまう。 ただし、現在のケータイがまったくアプローチしていないかと言われるとそんなこともない。昨年末に使ってみたNTTドコモのPush To Talkサービス「プッシュトーク」を使ってみるとアドホック的な通信の新しい感覚だった。同じくドコモの新しいおサイフケータイの機能である「トルカ」も、ICカードの情報を流通させるの際に同じような感覚になる。それは1人が複数人に対して何らかの情報を発するという「モード」が備わった、という感覚である。アドホックの感覚を早くからゲームで養っている世代をうらやましく思ってしまう。 サイフの話からアドホック通信の話に話が飛んできたが、2006年もケータイに関して未来を知りたければ、とにかく経験してみて感覚をつかんでみることだと思う。CNET Japanで書かせていただいているブログなどを通じて、今年もその経験と感覚をいち早くお伝えしていければと考えている。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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