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引き続き、ウェザーニューズ社の森下良治さん、石橋知博さんへのインタビュー。 1999年に僕は大学生になった。進学すると同時にケータイをNTTドコモのN501iに機種変更して、iモードユーザーになったのを覚えている。ウェザーニューズのケータイサービス「天気Plus」のスタートは、その1999年にさかのぼる。僕が高校3年のときの1999年2月の段階で、約40人のクラスメイトの中で1人だけがケータイを持っていない状態。その1人も4月に大学生になってからケータイを買ったそうだ。なんとなく、時代背景を思い浮かべていただければ。 さて1999年、そんなiモード端末を使い始めた頃から使っていたコンテンツサービスが天気Plusである。当時のiモード端末である501iシリーズでは、モノクロ液晶を備え、文字に加えて絵文字に対応。加えてGIF画像にも対応しているというのが基本的な仕様だった。カメラの画像はおろか、絵文字だってモノクロの表現にとどまっていた。そこから端末は現在もなお進化を続けているが、天気Plusのコンテンツはどのように発展してきたのだろうか?ケータイというパーソナル・ハイブリッド・メディア 「ケータイの良さは、常にメディアが身近なところにあるということ。本当にちょっとした発見を知ることに向いていると思います。これまでマスメディアなどを通じてプッシュ型で伝えてきた気象情報に対して、ケータイはちょっとしたプル・メディアの要素を加えることができました。ケータイでは限られた画面でしか情報提供できないので、ユーザーが素早く必要な情報にたどり着くように設計しています」(石橋さん) 一方で、ケータイではより一層プッシュ型に気を遣うことが重要だ、と石橋さんは話す。 「プッシュ型のメールサービスでは必要最低限の情報をピンポイントに提供することに努めています。例えば雨が降りそうなときだけメールでお知らせをしてあげる(雨雲アラーム)、地震が起きたら震源の情報を配信する(地震情報)。身近なメディアになったことで、必要な人に対して、必要な情報だけをシンプルにまとめ、即座に流す、新しいパーソナルなプッシュ型メディアとしても、ケータイを使うようになりました」(石橋さん) 雨雲アラームというメールサービスはユニークだ。自宅や職場などの郵便番号を登録しておくと、その地域に雨雲が近づきそうになったら、メールで知らせてくれる。例えば近所のスポーツセンターでテニスをしている主婦が、夕立の雨雲が迫っていることを察知して、洗濯物を取り込むのにちょうど良い時間に帰れるようになる。アラームのメールに付いているリンクから降水予想のアニメーションを見れば、これから降る雨がどのくらい続くかも知らせてくれて、傘を出先で買うか買わないかという判断にも役立つ。 このサービスは、人の勘を拡張してくれている気がする。今まで、空を見上げて「雨が降りそうな空をしている」だとか、大きく息を吸い込んでみて「雨のにおいがし始めた」だとか、勘のいい人は雨の降り始めを察することができたかもしれない。しかしこの雨の降り始めの気配を情報として提供できるようなった。しかも自分のいる位置情報に即した情報が受け取れるのである。 この点で、ケータイというプッシュメディアのパーソナル性という新しさは特筆すべきだ。さらに詳しい情報を知りたい人を自然にウェブ上の情報へと誘導できる点もまたシンプルで実用性が高い。 雨雲アラームを例にしたが、天気Plusの情報サービスは、ケータイの上でプッシュ・プルの両面をうまく組み合わせて気象情報を提供していると言える。これに合わせて、前回の記事でご紹介したサポーターからの情報提供・投稿などの双方向性が加わり、ケータイのハイブリッドな情報メディアの姿を作り出している。トランスメディア ウェザーニューズでは、現在はケータイでの情報提供が中心的なビジネスに成長してきているが、ケータイでiモードサービスが始まる以前から、気象情報のサービスを展開していた。例えばケーブルテレビにはほぼ必ず用意されているお天気チャンネルの番組制作や企業への気象情報サービスなどがそれに当たる。これらの複数のメディアについて、どのようにとらえているのか。 「ウェザーニューズではテレビ、インターネットのウェブ、ケータイ、その他の紙媒体などへ気象情報を提供しています。PCで見るウェブは、自分が欲しい情報を、より深く追求して得ることができるようにすべきメディア。テレビは完全な片方向のメディアで、普段は柔らかいテイストでコンテンツを制作し、台風などの防災時は現場の声をマスに伝える役割を担うメディア。このように、それぞれのメディアの特性を意識しながらコンテンツを組んでいます」(石橋さん) 気象情報を様々なメディアで提供しているウェザーニューズ。けっしてワンソース・マルチユースという形で、1つの情報を少し削ったり足したりして提供するわけではないそうだ。そのメディアの特性にあった形で情報作りをして、各メディアに展開する戦略でコンテンツ運営をしていく。この考え方を「トランスメディア」と呼んでいるそうだ。 「トランスメディアというのは、全てのメディアを肯定するということです。天気予報を新聞で見る人もまだまだたくさんいます。朝ぱっと確認するには最も手軽なメディアです。朝、新聞を見る人も、外へ出ていて変化の激しい天気の場合はよりインタラクティブなメディア、ケータイやPCのウェブサイトで逐一確認して頂く。これがトランスメディアが作り出すメディアの世界です」(森下さん) 「けっして、リッチなコンテンツが本当に良いコンテンツとは限らないと思います」、森下さんはこう付け加える。地震が発生した際に、画像入りのコンテンツを送信すると10秒かかるが、テキストだけなら1秒で済む。この場合、いくらケータイの表示能力が発達していても、テキストによる情報提供を選択する。届ける内容を目的に応じて自由自在に変化させながら、最適なものを選択すればよいのだ。 このトランスメディアの考え方は先進国の人たちの生活にフィットする情報提供を行うだけでなく、ウェザーニューズがグローバル戦略に対応することにもつながっているそうだ。 「例えば開発途上国では、モバイルやインターネットが行き届いていない状況があるが、もし防災について知らせなければいけないときには、ビラを配っても、街宣カーで伝えても良い。テクノロジーを使わない方法であっても、片方向・双方向のコミュニケーションが成立することが重要なのです」(森下さん)ケータイの発展にフィットさせるデザイン 当初のモノクロのケータイに対してスタートさせた情報コンテンツと、現在のケータイコンテンツとを比べると、Flashが使われたり、ムービーが使われたり、アニメーション画像付きのメール配信が行われたりと、劇的に変化している部分もある。一方で地震のメールなどのように、iモード開始時から変わらないシンプルで的確な情報提供に徹し続けている部分も存在している。 ディスプレイがカラーになった、ムービーが扱えるようになった、Flashが使えるようになった、メールに画像が貼り付けられるようになった、と端末の発展が進んできたのがケータイの世界だ。 「リッチなコンテンツは面白いので、ついついやりたくなっちゃうんですけれどもね」--石橋さんは本音を漏らしつつも、コンテンツとしてリッチさとシンプルさを適材適所で採用していく。テレビ向けなどのコンテンツ制作のノウハウを生かしながらケータイに最適化されたコンテンツを、新たに作り出して提供していく。これがウェザーニューズのトランスメディア流のモバイルコンテンツデザインの現場である。 「リッチなコンテンツの未来像として、五感で感じられるすべての感覚をフォローするところまでは行きたいですね。最終的にはにおいなども面白そうです。花のにおいだとか、雨が降り始めるにおいだとか。それこそリッチな体験だと思います。テクノロジーの進化を待つ必要はありますが、リッチであることに価値がなければ仕方ないので、リッチな情報をどのようなバランスで取り入れていくかを考えることが重要です」(石橋さん) ケータイの端末がにおいを表現できるようになるかどうか?その時期はいつか?これはまだ分からない。しかしテクノロジーの発展を待たなくても、例えば花が咲いた写真を集めることで、その花の香りを感じられるようなコンテンツを作ることもできる。五感をヴァーチャルに伝えるコンテンツを設計することは可能だ。そしてテクノロジーが追いつけば、そのにおいという情報の要素をコンテンツに取り入れれば良い。 こうして端末に新機能が入るたびに、新たなコンテンツのカタチをデザインしてきたウェザーニューズ。今までの端末の進化の中で、最も大きなインパクトは何だったか?と訪ねてみたところ、「ケータイにカメラが入ったこと」との答えが返ってきた。なぜカメラがそこまで大きなインパクトだったのか。そのカメラを使って今後どのようなコミュニケーションを作ろうとしているのか。この次に触れてみたい。
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