お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

雨プロジェクトはアメダスを超える? ミクロな情報網のケーススタディ

2005/11/11 16:25
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

松村太郎

携帯電話の機能進化が進む中、アーリーアダプター層がどのように携帯電話を使いこなし、生活がどう変わっていっているのかについて、携帯電話と社会のあり方について研究するSFC研究所の松村太郎さんが紹介します。
ブログ管理

最近のエントリー

Mr. Morishita & Mr Ishibashi, weathernews inc. 4 前回、渋谷の街のフィールドワークから、個人が持つメディアであるケータイを社会調査の仕組みとして活用していくことができるのではないか、という可能性について触れた。実は、すでにケーススタディとしてケータイを活用した調査を大規模に行っているサービスも存在している。それはウェザーニューズ社が提供しているケータイコンテンツ「天気Plus」内で実施した「雨プロジェクト」である。気象が大好きな僕も、多分に漏れず参加させて頂いたこの雨プロジェクトはとても興味深いものだった。 雨プロジェクトの真相を聞きたい。そこで、早速ウェザーニューズ社にお邪魔し、広報を担当している森下良治さん(写真左)、モバイルのリーダーを努める石橋知博さん(写真右)に、雨プロジェクトの秘密からお話を伺った。「5000くらいのつもりが…」 「雨カップを5000くらい配れば相当面白いんじゃないかと思ったんですよ」。雨プロジェクトの企画を実行に移した石橋さんは苦笑いをしながら話し始めた。この5000という数字はある意味で少なすぎたようだったのだ。「雨カップの募集を始めると申込みが殺到して、2〜3日で予定の5000個がすぐにはけてしまったんです。これはまずいと言うことで、急遽もう5000個を追加募集しました」(石橋さん)26mm 雨プロジェクトとは、2005年の梅雨のシーズンに行われたユーザー参加型のコンテンツだ。応募したユーザーは、ウェザーニューズから送られてきた写真のようなプラスティックのビーカーを自宅のベランダなどに設置し、日々の雨量観測を行う。ビーカーの設置場所、日々の雨量の報告は、ケータイから送信する。ウェザーニューズがそれを毎日集計して、ユーザーは、前の日に日本全国や地方ごとに降った雨の水量の推定を閲覧できるという仕組みだ。 「弊社からコンテンツの企画を提案する際にはいつも、どのくらい反応があるものかという予測を立てるのですが、回を追うごとに予想を上回る反応を頂いています。単純なページビューの伸び以上に、参加率が上がっています。ありがたいことですが、サポーター(参加型コンテンツにコミットするユーザーのこと)の皆さんの方がアイデアをたくさん出してきてくださるので、ご期待に添えない点も多々出てくるようになってしまいました」(石橋さん) 。なぜこんなにも反響が出るようになったのか? 天気の情報の流れを変えた快挙 「そもそも天気予報は、気象庁や我々から一方的に公開される情報でしたし、ユーザーの皆さんの間にも一方通行で与えられる情報であるというイメージがあったと思います。ところが昨今の環境問題への関心の高まりの中で、日々の気象は最も身近な環境問題に当たります。環境問題を考える、その基礎となる情報をみんなで一緒になって情報を作っていく。そういう意識の高まりが背景にあるのではないでしょうか」(石橋さん) 環境問題への意識の高まりとともに、身近に情報共有を行うことができるケータイというツールの浸透もまた、ユーザーを参加に踏み切らせる敷居を下げている1つの要素ではないだろうか。あるいはもっとシンプルに、毎日どのくらい雨が降っているのだろう、という小さな好奇心を満たしているにすぎないのかもしれない。しかしこの小さな好奇心の集まりが、日本全国に1万カ所もの、私設雨量観測地点を設けるに至り、梅雨の時期に雨が降ると日々の雨量がケータイから送られてくるのだから面白い。 「降水量のデータを集めよう、というシンプルな企画がケータイのネットワークに乗ったときに、我々は、果たしてどのような量や質の情報が集まるのか、その情報から何が分かるのかという、誰も把握していないミステリアスな結果を求めている部分があります。インフラや手法は我々が用意するが、その結果がどうなるかはサポーターの皆さんがまさに作っていくんです。企画自身に成長していく要素を持たせていることが、皆さんに受け入れて楽しんで頂いている理由ではないかと考えています」(石橋さん) 「コミュニケーションが面白いのでしょうね」。森下さんも指摘する。「気象現象を対象としたモバイルネットワークを活用したコミュニケーションというのは、シンプルな好奇心をかき立てて面白いんだと思います。天気や自然は老若男女、地域全く関係なく観察することができるものですし、桜前線や紅葉前線などのように地域差があるからこそ、情報交換をして楽しめるのだと思います」(森下さん) 天気・自然への地域差が現れやすい対象についての興味、関心事を、ケータイでうまく掘り起こす。そして情報を受け取るだけでなく、情報を出してもらうことにも成功したのが、ウェザーニューズのサポーター参加型のコンテンツであると言える。ミクロな情報網の活用方法 気象庁が設置しているアメダス(AMeDAS、Automated Meteorological Data Acquisition System)は降水量を観測する地点が全国に約1300カ所ある。これと比較すると、1万を誇る雨カップの配布数は、実にアメダス観測網の7.7倍を誇る細かさを実現しているといえる。もちろん観測の方法や観測機器としての正確さは定かではない。ただ「観測データの量の豊富さは、後々質に変わってくる。そこが作れたら、かなり面白いのではないか」(森下さん)と話すように、すでにデータ量が質に変わっている例も見られ始めたという。 「実際、アメダスでは計測できていないような、局地的な雨の降り方の特性をつかむ手がかりになるデータが集まってきている地域もあるんです。アメダスでは多くの降水量が観測されている地域でも、谷の中のエリアの人たちからのデータでは、そこまで雨量が観測されていなかった場所があった。これは気象学的にも興味深いデータが取れていると思います」(石橋さん) この他にも、ベランダに吹き込んでくる雨や、建物の方角によって、観測される雨量に変化が見られたそうだ。例えば風がそんなにない雨であれば、ベランダに洗濯物を干していても雨で濡れることはないかもしれない。北風が吹いてる日の雨ならば、南向きのベランダでは雨が降り込んでこない。地域全体で雨量と風向風速からシミュレーションできたとしても、個々の家庭のミクロな情報を提供することはとうていできなかった。 しかし雨プロジェクトに集まった情報ならば、地域が同じで建物の向きも同じである他のユーザーの投稿を探せば、雨の降り方と洗濯物が干せるか干せないか、という参考になる情報を得ることができる。決して数値や観測結果に正確さを求めてはいけないのかもしれないが、生活に必要な情報としてはとても価値がある。これは全国1万カ所の雨カップによるミクロな観測網だからこそ提供できる情報と言える。 このようにユーザーは活発に情報を提供してきてくれる。その集まった情報をどのように活用するかという点が課題だと森下さんは話す。「集まった情報を我々でどのように分析するのか、それをユーザーにフィードバックするのかという点はこれからますます考えていかなければならない点だと思います。また気象データならではの観点ですが、このプロジェクトによって予報精度の向上につながるところまで持って行けたら、ものすごい価値になる」(森下さん)。

◇ ◇
Autumn Palette 2 ウェザーニューズ社のケータイサービス「天気Plus」では、早速秋から冬へと移る季節に対応したサポーター参加型コンテンツ「全国 紅葉情報」をスタートさせている。これは紅葉前線を独自に作り出そうという企画で、「秋色パレット」と名付けられた紅葉の色の投稿フォーム(写真)が用意される他、「絶景紅葉写真館」と題したケータイによる写真投稿の企画も同時進行している。 お役ご免になったかに思われた雨プロジェクトの雨カップは、台風シーズンには台風による雨の降り方の観測に使われ、今度は「発見 初氷」の観測器具として、再びその任務が与えられた。この企画力にも脱帽だが、日本の気象はそれだけ、コンテンツ性が高く変化し続けているという証でもある。そしてそのコンテンツ性が高い対象物に、ケータイ+サポーターという観測地点・センサーが、生き生きと機能している姿は、ケータイ参加型コンテンツの1つのカタチとして強烈な印象を与えてくれる。 森下さん、石橋さんには、まだまだ興味深いお話を伺っている。次回は、ケータイの発展とウェザーニューズのコンテンツについてご紹介したい。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー

個人情報保護方針
利用規約
訂正
広告について
運営会社