ちょっと時間があいてしまいましたが、前回の続きを。
今どんなソーシャルサービスがあれば嬉しいか?を考えるの巻、後編です。
前々回は、ソーシャルサービスに対して飽和状態になっていくユーザ側の時間について考えました。
それでも必要とされるサービスってどんなもの?という点を、サービス提供者側の立場になってつれづれなるままに書き出してみたのが前回。
改めて、前回の図を再掲します。
前回は、上側の分岐「順バリ編」として、時流に沿う形でのサービスの可能性を考えてみました。
今回は、下側の分岐「逆バリ」について考えてみたいと思います。
90年代後半、Yahoo!に代表されるディレクトリ型のポータルサイトが全盛だった頃、思えばキーワード検索はおまけ程度のものでした。速度も精度も今から考えれば信じられない代物で、「検索の鉄人」なるコンテストがあったくらい、検索の技術はユーザ側に委ねられていた時代。
当時のインターネット企業にとっては、いかに自社ポータルにユーザを囲い込むかということが大切で、検索のテクノロジーに関しては、ほぼ競争の外にあったのでしょう。
そんな中、検索窓ひとつをページの真ん中に配したGoogleが出てきました。
訝しみながらもGoogleをはじめて触ったときの驚きといったら。その速さと精度に、「これ、中に占い師がいるみたい!」と騒いだことを覚えています。
後にGoogleはAdsenseで換金の道を得、最強のネット企業となっていくわけですが、それこそポータル全盛だった当時は、ドットコムの寵児たちから見てもふたりの創業者のやっていることは奇妙に映ったかもしれません。
Googleが後にこうなることを周到に予測して、あえてキーワード検索にこだわったのかといえば、必ずしもそんなことはないのでしょうが、人の逆を行く、ということを考えるとき、いつでもはじめてGoogleを触った時のあの驚きを思い出します。
何か一つの流れが恐ろしいまでの潮流となり、膨大なエネルギーがそこに集中しているということは、どこかで必ず飽和する瞬間がやってくる、その前触れとも見ることもできるかもしれません。
そして、そのスピードはどんどん早くなっているはずです。
当時のドットコムバブルを縮尺していろいろなことに当てはめてみると、今まさに目の前にあるソーシャルな情報群は、動き始めたばかりとはいえ、その飽和地点もちらちらと顔をのぞかせているように見えてなりません。
すべてが泡となることはないでしょうが、併せて違うベクトルが必要になる日も、 そう遠くはないかもしれません。
すべての人々が「メディア」となりうる今、溢れる(もしくはやがて溢れることになる)情報を前に私たちはあと何を必要とするでしょうか?
そんなことを軸に、「逆バリ編」を考えていきます。
ソーシャルサービスはフリー、というのが今の常識。
無数のユーザが作り出す情報は、率直で無料、速くて多様。
この嬉しさを、私たちはさまざまなサービスから受け取っています。
今後ソーシャルグラフ等の概念が浸透していく過程で、私たちはより身近な人々の日々の様子、より自分に関連性のある情報を、更に絶え間なく受け取ることができるようになるでしょう。
情報はもっともっと便利に流れ、自分の周辺のネットワークは更に強化されていきます。
が、一方で、「フリー」という土俵の上で情報が限りなくフラットになっていくのも、また避けられないことでしょう。
どれもこれも便利に手に入る。でもどれが本当に必要なの? 全部自分で検証するなんてそんなヒマない!
という事態も想定できそうです。
タダの情報はいつだって貴重ですが、時間だってお金で買いたいくらいに貴重です。
今のソーシャルサービスは、自分自身で情報淘汰の仕組みを持つものが多いですが(ユーザの相互評価等)、それでもやはり「情報リテラシー」はいつだってユーザに委ねられています。
かつて、「検索の鉄人」が求められたように。
情報の海で戯れたい場合はそれでなんら問題はないでしょうが、本当に切実に確かなものを今すぐに必要としている人々もいるはず。
「お金なら払うからなんとかして!」という気分もじわじわと生まれてくるのではないでしょうか。
クラウドソーシングの勢いがますます高まる中で、きちんとオーソライズされたコンテンツをコツコツと作り込む努力は、そう遠くないうちに日の目を見るような気がします。
ただその場合は、単にWeb1.0時代に戻るのではなく、外部とリミックスできるようきちんと情報を構造化しバラバラのノードに分解できるようにデータ設計をしておくことは必須だとは思いますが。
集合知の多様性は確保しつつも、徹底的に信頼度を追求する。そんなベクトルがあってもいいかもしれません。
「タダですが、自己責任で。」もいいけれど 「それなりのお代いただきますが、私がなんとかしますので。」 とも言ってもらいたいのです。
それがユーザに認められれば、広告収入以外のさまざまな収益の可能性を持つことにもなるのではないでしょうか。
何か知りたいことがあったとき、検索窓にキーワードを入れて、情報の断片をかき集めては、なんとか全体像を解釈していく。
もしくは様々なメディアによってレコメンドされる情報の断片を渡り歩いて、関心の域を広げていく。
というのがほとんどの人の情報収集の実際ではないでしょうか。
この「断片」になるべく確度よくあたるために、検索エンジンは日々改良を重ねてくれていますし、巷のレコメンドエンジンの進化にもワクワクします。
この断片を集めるという行為は、必要な時に必要なものだけを取り出す、という点でとても効率がいいのですが、体系だった知を得るには万能とは言えません。
少々冗長でもかまわないから、ある文脈を丸ごと摂取したい、断片を探してつなげることにエネルギーを使わずに情報そのものに集中したい、という欲求も一方ではあるのではないでしょうか。
それに応えるひとつの方法として、情報をあえてパッケージングするという考え方があるかと思います。
情報をパッケージングって・・・なんでしょうか?
パッケージングされた情報の最たるものが、本でしょう。
なので電子出版、と言いたいのではなくて、情報の断片を「編集する」ことを誰かが引き受けてくれる、 そういったサービスに価値が出てくるような気がします。
情報を何らかの文脈(Context)に沿って構造的に理解できるように整える、それをマスメディアの理屈ではなくあくまでユーザ側のニーズに細やかに対応する形で行う、そんなイメージがこれからとても大切になるように思います。
今日TechCrunchで見かけた記事で「セレブが着ていた服とそっくり同じ服を買いたければCoolspottersへ」というエントリーがありましたが、これもある種のパッケージングと言えるかもしれません。
ユーザーはこのサイトでお気に入りのセレブについて、動静(場所、イベントetc)、身につけているブランド、出演(テレビ、映画、etc)などの情報をモニタできる。ブランド製品などのモノとセレブとの接点を提供するというのがこのサイトの狙い。
セレブが着ていた服とそっくり同じ服を買いたければCoolspottersへ -- TechCrunch
ここでは、「あのセレブ」というわかりやすい「文脈」があることがキモでしょう。
その文脈に沿ってパッケージングされたコンパクトなファッション情報をユーザは受け取ることができます。
ここで「編集する」ことを引き受けているのは、素材となっているセレブそのものであり、その素材に対してブランド製品等の情報をひもづけるユーザたちであります。
従来の紙媒体が持ってきたパッケージング力に加え、それをユーザ側の事情に倒すプラスαの部分をソーシャルサービスが引き受ける、そんな構図が描ければ楽しいな、と思います。
自分で書きながら、そうそうサクッと語れるようなことでもないでしょ、と思いつつ、最後の二つの分岐「ないものを生む」です。
インターネットは、一個人を商人にもしました。
ネットークションが出てきた頃は、こんな怪しいところでお買い物なんて、と思ったものですが、いくつもの問題に出会いながらもその度にサービスが消えさることなく、CtoCの物販マーケットはすっかり日本にも根付きました。
概念自体はわかるんだけれど、市場としてはまだない。けれども作ってみたらとても必要とされた。
そんなエリアがきっとまだあるのでしょう。
ソーシャルサービスに関して言えば、ユーザの力を更に倍増させるためにも、ユーザが恩恵を被ることができる商圏を作ることには、とても意味があると思います。
売り手はユーザ、買い手は企業、CtoBと言えばいいでしょうか、そういった形も十分あり得るのではないでしょうか。
最近では、Youtubeがユーザに広告料金の一部をバックするなど、 広告への関与によって一般ユーザが企業から収入を得るケースも出始めています。
今のユーザならば、ソーシャルサービスを経由してもっと具体的な価値を企業に提供できるかもしれません。
ひとりのユーザが、たくさんの企業を「顧客」とし、ネット上でじゃんじゃん稼ぐ。
イメージとしてはかなり愉快です。
最後は、まだ見ぬ「概念」。
こればっかりは、それこそ無数の選択肢があるのでしょう。
ここで語ることでもなさそうです。その種は、だれかの頭の中にあるものですから。
先日、CNETに掲載されたはてなの近藤社長のインタビュー記事が、「概念を生む」ということに関して示唆に富むものでした。
そこで語られていたのは、具体的な方法論というよりも、新しいものを生み出す「構え」。
共感したフレーズをいくつか抜粋しながら、そろそろ閉めたいと思います。
だって新しい仕組みって“変”じゃないですか。いまは無いものなんですから。
基本的にぼくは、新しいものを作ることは“勘違い”だと思うんです。それが本当に次のスタンダードになるかどうかなんて、はっきり言って誰もわからない。
だから、新しいものを作って世の中に出すことは、「これが絶対に成功すると思う」っていう勘違いをどれだけ強く実行できるかということだと思うんですね。
実用性については、なるべく普遍的な問題をいかに見つけるかが重要だと思うんです。
1000万ユーザー規模のサービスを京都から--はてな近藤氏が目指すもの -- CNET Japan
はてなは何をするでしょう? 楽しみですね。
最初に勢いで二点分岐の図を書いたがために、全部追うのに長くなってしまいました;
それでも、当然ながら、この分岐の先っぽの8つのオプションは、事象全体をとらえたものではありません。
たまたまその時の自分の感覚が、その時分け入った方向で出会ったもの。
きっと選択肢は無数に散らばっているのだろうな、ということを、書きながら実感していました。
機会があれば、また分け入ってみたいと思います。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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このシリーズはおもしろかったです。「ネットビジネス」なんてひとくくりにできるほど、甘くない世の中になったことを考えれば、やりたい方向性のポジション確認やコンセンサス形成のために、今回のようなフレームワーク思考法は必須ではないでしょうか。サービス提供会社はこうした思考プロセスをコンサルファームに任せすぎるところがありますね。逆にいえばこうした思考法を使えれば、コンサルファームとも良いクリエイティブな仕事ができそうです。