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フェアユースとネット中立性

2006/05/30 06:40
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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ネットの中立性(Network Neurality)を巡る最近の論争は、これまではっきりと意識していなかったあることに気づかせてくれた。そのことに気づくと、ネットの中立性について続けられてきた議論がなおさら奇妙なものに思えてくる。

気づいたのは、その根本において、フェアユース(FU)とネット中立性(NN)は同じものということだ。どちらも他者の財産権に対して国家が課す制約といえる。制約そのものはどちらの場合も些細なものだ――著作権者に認められた極めて広い権利はFU(フェアユース)によってほんの少ししか制約を受けないし、ネットワークの所有者に与えられた権利もNN(ネット中立性)によってごくわずかしか制限されることはない。またどちらの場合も、どこから制限されるのかという線引きは曖昧だ。そして両者とも、それを支持する意見は、そうした制限はなんらかの重要な社会的な目的のために重要であって(内容はそれぞれに異なるとしても)、得られる利益は制限を課す費用を上回るというものだ。

こう考えてみれば、FUとNNのどちらも認めない者を理解するのはたやすい(誰だ?)。またFUとNNの双方を尊重する立場もよく理解できる。難しくなるのは、一方を支持しながらもう一方を却下する場合だ。少なくともそれが「政府による規制」を理由にしている場合は。

一方でフェアユースを支持しつつ、「ネットの中立性維持のための政府介入」に反対する立場には一貫性の問題がある。FUとNNはどちらも「政府による規制」であるからだ。政府が定めた財産権に対して政府が定めた制限であり、どちらの場合も政府の役人が(法廷あるいはFCCが)「この財産のこのような使い方は国によって否定される」と告げる。ただし、両者の施行のされかたには大きな違いがあるとはいえる。フェアユースはより複雑、曖昧であり、ネット中立性のための規制よりもなお高価で不確実だ。

さらに、NNに反対する議論はFUにも適用することができる。たとえば問題は市場が解決する、人々は不自由なネットワークを使わなくなるだろうという主張があるが、著作権についても同じことがいえるだろう。マドンナ作品の制約がきつければ代わりにLyle Lovettを、といったように。またある者は、国による介入を正当化するほどの市場力の集中は見られないと主張する。だがその基準に立てば、そもそもFUへの正当化などありうるだろうか? 一体誰が文化に対してそれほどの市場力を持てるというのだろう。また、NNはネットワーク所有者たちのインセンティブを減らすことになり、結果として高速なネットワークを作る動機を失わせるという議論もある。これもまたFUに反対する意見になる――作品に対する完全な支配権を損なうことは、著作権者のインセンティブを失わせるという論法だ。どちらの場合も論理は共通している。一方は財産権への完全なコントロールを支持するものであり、もう一方は財産権の行使に何らかの限界を求めるものだ。

同様に、NNを支持しつつFUを批判する者にも一貫性の問題がある(たとえばこのわたしなど)。わたしがFUに批判的である理由は、人々がNNを警戒する理由とまったく同じだ。この認識はNNへの懸念を理解する助けになってくれた。だがフェアユースを巡る法律上の争いを身をもって経験し、またNN(に相当するもの)を巡る規制のための争いを目にしてきた身としては、FUを支持しながらNNを却下する矛盾のない立場は想像もできない。

もちろん、FUを支持する一方でNNを却下する(あるいはその逆の)人々のなかには、得られる利益が規制を正当化するほどに大きくないと評価している場合もあるだろう。それならば一貫性の問題はない。単にそれぞれの価値観の差を表しているだけだ。

だが、現に交わされている議論に耳を傾けてみよう。アプリケーションやコンテンツにおける競争は重要ではない、あるいは言論の自由とは関わりがない、あるいはその他の理由で政府の介入を否定するという論理を聞いてみよう。そうした意見を聞くことができれば、少なくとも議論を進展させることにはなるはずだ。これまでの論争はただ混乱のまま行き詰まっているようにしか思えない。

[オリジナルポスト 5月21日午後6時22分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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