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新聞記事の映画化権

2006/05/15 05:59
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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(Timothy Wu教授によるゲストBlog)

著作権に関わるあまり知られていない慣行として、映画スタジオは新聞記事の映画化・テレビ化権を日常的に買い取っているというものがある。新聞記事はそもそも事実やアイデアを報道するものだが、そのどちらも著作権法の対象ではない。ではなぜ映画スタジオは金を出すのだろうか。

1997年、ニューヨークタイムズはTim “Ripper” Owensについての記事を掲載した。バンドJudas Priestの熱狂的ファンから本当にJudas Priestのリードボーカルになった人物だ。TimesのAndrew Revkinはこう書く:

Mr. Owensはファンからイコンへ、メタルヘッドからメタルゴッドへと登り詰めた。カバーバンドでボーカルを務めるオフィス用品セールスマンから、かつて自分が崇拝したバンドのリードボーカル「リッパー・オーウェンズ」へ。草野球の選手がメジャーリーグでプレーすることを許されただけでなく、カル・リプケンJrになれといわれたようなものだ。

興味深い出来事であり、見事な記事だ。Mark WahlbergとJennifer Anistonが出演した2001年の映画Rock Starの原案となったのも頷ける。聞くところでは、Warner Bros.はTimesから映画化権を購入したという。

だが、映画化権とはなんだろう。著作権法の基本、そして最高裁の解釈によれば、リッパー・オーウェンズの人生に関する事実はだれでも自由に使えるものだ。法律からすれば、わざわざ購入するものはないに等しい。映画の中で記事をはっきりと朗読でもすれば著作権法に触れるだろうが、米国法ではそれ以外に(事実ではなく)表現の借用と見なされることはほとんどない。

つまりこうした権利の存在は、慣行はともかく原則からすれば謎といえる。これに対する説明はいくつか耳にしたが、読者の皆さんのほうが良い理由をご存じかもしれない。

ひとつの説明は、購入したところでそもそもあまり高価ではない――New York Timesが請求するのは記事一件につき数千ドル――からというものだ。見返りとして記者から協力が得られるかもしれない。だが、数千ドルといえどもカネはカネだ。存在しないものに数千ドルも払うものがいるだろうか? まるでネバーネバーランドの土地を買うようなものだ。

上の答えを補足するのは、数千ドルを払うことによって、映画スタジオはNew York Timesから訴訟を起こされるごく僅かなリスクを回避しているという説明だ。この答えはもし事実とすれば興味深い。法律に存在しないとはっきりと書かれている権利でも、喜んで支払う人々がいるということになるからだ。著作権法に「アイデア」は保護しないと定められていても意味がないかのように。映画スタジオは信じられないほど保守的な法律アドバイスで金を無駄にしているということでもある。

最後の答えは、映画化権の購入は単なる業界内での合図に過ぎないというものだ。どの業界でもそうだが、過度の競争は避けた方が都合がいいことはいうまでもない。Rock Starに2バージョンあっては何かとややこしいことになる(観客にとっては良いことかもしれないが)。つまり映画化権に実際に意味があるようなふりをすることによって、競争がおこるのを防いでいるという説明だ。

これもどちらかといえば疑わしい。オーウェンズの例でいえば、バンドJudas Priestは映画の内容に関してクリエイティブ・コントロールを求めるようになり、もちろんストーリーに関してかれらは何の権利も持っていないのだが、結局ワーナーは映画からJudas Priestに触れる部分を取り除くことになり、できあがった映画は(わたしは未見だが)批評家からさんざんな評価を受けることになった。普段は寛大なHollywood Reporterでさえ「まったくありきたりの作品。すべて予想通りに、お決まりの展開で進む」。やれやれ。

(Judas Priestと"Rock Star"の例を教えてくれたJennifer 8. Leeに感謝。)

[オリジナルポスト 5月3日午後11時17分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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