Billboardに掲載されReutersが配給している記事についてMattが腹を立てている。記事の背景について少々触れておく必要があるだろう。
昨年12月、Billboardは法律関連エディターSusan Butlerの手になる記事を掲載した。冒頭は「国際エンターテインメント弁護士協会(International Association of Entertainment Lawyers)の設立メンバー」というMichael Sukinの、クリエイティブ・コモンズは
「エンターテインメント産業への深刻な脅威」であるという言葉で始まる。記者はこう説明する:
クリエイティブ・コモンズとして知られる非営利団体はそのウェブサイトで、クリエータに対して著作権(米国では作者の死後70年続く)を1ドルの支払いと引き替えに放棄するように求めている。著作者はかわりに14年もしくは28年のあいだ行使できる一定の権利を得るか、誰でも利用できるようにパブリック・ドメインに寄付することになる。
Sukinいわく、この「運動」は「ウィルスのように拡散」しており、「米国の著作権収入」を危険に晒しかねないという。
Mr. Sukin――弁護士――の誇張は愉快だ。だが驚かされたのは、記者Susan Butlerによる「クリエイティブ・コモンズは、($1の支払いと引き替えに)クリエータに著作権を放棄するよう求めている」という主張だ。彼女がいったい何のことを言っているのかなかなか理解できなかった。たしかに、われわれのライセンス群はアーティストに一部の権利を主張しない選択肢を与える――その他の権利は保留したままで (だから"Some Rights Reserved", 一部権利保留だ)。だがこれは著作権に基づいたライセンスすなわち使用許諾条件であって、「著作権保護を放棄」しては機能できない。クリエイティブ・コモンズのライセンスを採用するアーティストの半数以上(2/3)は商利用を許諾する権利を留保したまま、非営利での自由な利用を認めている。非営利で利用する権利を提供することと「米国の著作権収入」にどんな関わりがあるのかはなかなか理解し難い。
そこで、一体何の話をしているのか尋ねようとButlerにコンタクトを取ってみた。メールのやり取りで彼女は確認するといい、次いでFounders' Copyrightを指摘してきた。なるほどこれは、14年あるいは28年で著作権を手放す契約を$1と引き替えに提供している。正直にいって、このライセンスが機能する仕組みについては失念していた[注:$1と引き替えにCCに権利を移し、CCは14or28年のあいだ元著者に全権をライセンスする]。Evanがこの不発に終わったライセンスの二周年を知らせるメールで指摘しているように、現在われわれが取り組んでいる仕事とFounders' Copyrightとはなんの関わりもないことが主な理由だ。わたしの知る限り、現時点ではきっかり三作品がこのライセンスで提供されている(どれも私自身の本)。O'Reillyは手続きを進めている。しかしクリエイティブ・コモンズの取り組みをこのように説明するとは、Mr. Sukinの言葉を検証もせずに受けとったか、事実はどうでも良いと思っていたかのどちらかだ。例えていえば、Billboardとは編集者に届いた手紙を掲載する出版物であると言うことはできるし、厳密にいえば嘘ではない。だがあきらかに、厳密な言葉の上では偽りではないとしても、Billboardとはどのような出版物かという形容としてはまったくの間違いだろう。
そこでわたしは訂正があるべきではないかと伝えた。訂正はなかった。かわりにひと月ほど経ってから、おなじ記者がクリエイティブ・コモンズについて「詳細な」記事を書くことになったと知らされた。奇妙なことだと思いBillboard誌に問い合わせたところ、かれらの真実の基準では、Susan Butlerが書いたものは正確な記事だと知らされた。Butlerが次も同じ仕事をするとも信じているようだった。
恐れていた通りだ。
今回Billboardに掲載された記事は実にうまく書けている――見事な抑揚を備え、批判で彩られた流麗な筆致はやがてMattを激怒させたくだりへと至る。Mattの表現を借りれば、クリエイティブ・コモンズは「AIDSで人々を殺している」。
それでも、そんな主張に至る議論の見取り図を描いてみるのは面白いだろう。記事ではクリエイティブ・コモンズを支持する側としてわたしとHal Abelsonが引用されている。非難する側も二人で、そのうちひとりは再びMr. Sukin、もう一人はDavid Israelite、National Music Publishers' Associationの会長だ。
実のところ、IsraeliteはわれわれCCについて何ひとつ語っていない。かれが心配しているのはCCに協力する人々のことだ。いわく、
「わたしが懸念するのは、クリエイティブ・コモンズを支持する人々の多くが、自分の財産で何をするかという著作権者の選択を奪おうとする考え方を支持していることだ。」
Butlerは続ける:
人々がクリエイティブ・コモンズ・ライセンスでみずからの財産を他者に与えていることについて、Israeliteはこう語る。「本当の問題は、なぜ他の人々までが財産を放棄するように強制されなければならないのかだ」。
誰かがわたしの主張の「本当の」意味を教えてくれることほど楽しいものはない。クリエイティブ・コモンズのそもそもの大前提はアーティスト自身が選択するということだ。われわれはクリエータにライセンスを提供する。クリエータに手段を提供することがなぜ「本当の問題は、なぜ他の人々までが財産を放棄するように強制されなければならないのかだ」となるのかわたしには理解しがたい。この考え方でいけば、Bill Gatesが世界の貧しい人々のために$20,000,000,000を寄付しているのは社会主義を主張するためということになってしまう。
Sukinの非難はさらに訳が分からない。記者Butlerの引用によると、Sukinは「レッシグとその追随者はより短い著作権保護期間を提唱している」と発言しているが、この事実がクリエイティブ・コモンズとどんな関係があるのかはあえて曖昧なままにされている。RIAA (米レコード協会)は音楽をダウンロードした子供に対して訴訟を起こすことは適切であると信じている。RIAAはまたクリエイティブ・コモンズの賛同者でもある。ではクリエイティブ・コモンズも、音楽をダウンロードした子供を訴えることに賛成の立場ということになるのだろうか? クリエイティブ・コモンズは幅広い層から支持を受けているが、なかにはお互い根本的に意見が対立している人々もいる。わたしはそれをクリエイティブ・コモンズの美点と思いこそすれ、欠点だとは思わない。
記事にはしかし、本当にわたしを悩ませる部分もある。最後のドラマティックな展開ではない(ハリウッドの雑誌だということをお忘れなく。悪役がAIDSで犠牲者を殺すシーンもない物語などどうなることか)。わたしにとって法外と思えるのはこの部分だ:
[最高裁のGrokster裁判に関して] RIAAおよびMPAA(米映画協会)会員企業の訴えを却下した控訴審判決を支持する内容の意見書のなかで、クリエイティブ・コモンズは様々な賞を受賞したプロジェクトであり、元RIAA会長Rosenおよび前MPAA会長Jack Valentiを含む多数の支持者を持つと自称している。またWired CDに曲を提供したアーティストたちの名も支持者として列挙されている。
後にはもちろんButlerとRosenのやり取りが続き、もちろんRosenは自分の名前の使われ方(少なくともButlerが伝えた使われ方)に異議を唱える。ここに至って記者は役者になり、記事が標的とする団体は果たして信用できるのかと疑念を煽りはじめる。
意見書はここにある。読めば分かるように、われわれがRosenとValentiの名を挙げているのは"Interest of Amicus"の部分、つまりAmicus brief (第三者による意見書)において、この意見書を提出するのはどのような団体であるかを説明する部分だ。われわれはこう述べている。
「当プロジェクトは前MPAA会長Jack Valentiならびに前RIAA会長Hilary Rosenの賛同を得ている。」
われわれが意見書で展開する主張までもRosenやValentiが支持しているとはどこにも書かれていない。書かれているのは、かれらが"プロジェクト"に支持を表明したということだ。それは事実だ。
さらに法外なのはWired CDに曲が収録されたアーティストに関する記述だ。ふたたびButlerの文を引用すると:
[意見書には] またWired CDに曲を提供したアーティストたちの名も支持者として列挙されている。
実際にはこう書かれている:
クリエイティブ・コモンズを扱った特集の一環として、Wired magazineはクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで提供される16の楽曲を収めたCDをリリースした。アーティストにはBeastie Boys, David Byrne, Gilberto Gil, Chuck D, Le Tigre他が含まれる。
アーティストたちがクリエイティブ・コモンズの「支持者」であるといった主張はどこにもないことに注意。単にCDに収録されたアーティストを並べているだけだ。われわれがこのアーティストたちの名を「支持者として」列挙したというButlerの主張はあきらかな偽りだ。
まあまあ、それくらいは大目に見てやろうじゃないか、Billboardに書いているジャーナリストに過ぎないんだから、と思うかもしれない。だがButlerはわたしに、自分は実務に就いている法律家であると繰り返し強調してきた。Billboard誌の編集者も同じことを言ってきた。だからわたしには、陳述書も読めない弁護士というものをどう理解して良いのか分からない――それをいうなら、作品を「パブリックドメインに置く」ことと条件を課してライセンスすることの違いも知らない弁護士も。もちろん、ただの間違いであのように書いてしまう場合もあり得るだろう。だが彼女のような経験を持つ人間がそうするのは驚きだ。
記事にある公正な批評は、ライセンスを利用する人々にわれわれが十分な警告をしていない、あるいはまず弁護士に相談することを勧めていないという点だ。これは正当な指摘で、われわれは参照の仕組みや、既に取り組んでいる以上にCCを理解してもらう方法について考えている。この点に関する協力は大いに歓迎だ。
また、クリエイティブ・コモンズと例えばわたしのような個人の意見との境界が(Butler曰く)「曖昧に」見える点があるという指摘もその通りだ(私の意見はもちろん、Israeliteが批判している何かとはかけ離れてはいるが)。わたしの役目を引き継ぎ、この「曖昧さ」を払拭してくれる人物がいれば実に――心の底から――嬉しいと思っている。わたしはクリエイティブ・コモンズじゃない。わたしが思いついたアイデアでもない。わたしはただできる限りの時間を捧げて、そのメッセージと道具を広めようとしているだけだ。費やす時間を減らせる方法が見つかれば本当に幸せだ。
この記事でもっとも気に入ったのは、RIAAのCary Shermanが引用されている次の部分だ。Shermanに幸あれ。いわく:
「クリエータが作品を公共に捧げたいと思ったり、クレジットを表示する条件であれば利用して欲しいと思っていても、それを周知するための仕組みはこれまで存在していなかった」RIAA会長Cary Shermanは語る。「"コモンズ"のアプローチは基本的にはこの問題を解決するものだ。」
まさにその通り。われわれはアーティストに無償のツールを提供する。それで何をするかはかれらの選択だ。だが記事にあるAndy Fraserのように、「誰もアーティストが権利を手放すに任せるべきではない」と信じる人々も多い。“任せる”。もう一度読んでみよう:“任せる”。
わたしの考えでは、権利を持つのはアーティストだ。そして誰も決定の役割をアーティストから取り上げるべきではない。またアーティストが自分にとって最善と思うことをする邪魔をすべきでもない。もちろん、前にも述べたように、正しい理解こそ鍵だ。だれも騙されてはならないし、自分の行為を理解しないまま権利を手放すべきでもない。だがしかし、アーティストがみずから選択した通りに行動する自由を奪うための戦争を起こす権利を持っているなどとは誰も考えるべきではない。あるいは、もし本当にそのような戦争を起こしたいと思うのならば、少なくともその立場のパターナリズムを認めようではないか。アーティストがクリエイティブ・コモンズを選ぶに「任せる」ことを止めれば、かわりにレコード契約を結ぶに「任せる」ことになるというのだろうか? これは断言できる:クリエイティブ・コモンズが可能にする露出よりも、獲得したレコーディング契約に怒りを感じているアーティストのほうが遙かに多くいるのだ。
Butlerの最初の記事は、Mr. Sukinがクリエイティブ・コモンズに反対する「ロビー活動」を展開していると述べている。Mr. Sukin、われわれはそろそろオープンな話し合いを持つべきだ。私はあなたに対して、穏当な人間が行う種類の決闘、ディベートを申し込む。双方の主張が聞かれるに「任せ」、しかるのちにアーティストの判断に「任せる」ことにしようではないか。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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