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別世界

2005/01/29 06:43
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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憲法のクラスを終えて空港へ向かい、シカゴ、サンパウロ、ポルト・アレグレへ飛び、車に乗り換えて辿りついたのがこの場面だった。ブラジルは世界社会フォーラムをホストしており、Barlowとわたしは土曜のパネルにManuel CastellsとGilberto Gilと共に出席することになっている。だがその前の木曜の夜、わたしたちはYouth Campを訪れた。今年のYouth Campでは他のプロジェクトとともに、フリーソフトウェアとフリーカルチャーを支援するツールのデモンストレーションおよび開発が主題となっている。

到着したのはコンサートの最中だった。話を求められたGilがマイクに近づくと、数百人が詰め込まれたテントの中は静まりかえった。論争が始まったのはフリーソフトウェアとフリーカルチャーを推進するLula大統領の政策についてGilが説明しているときだった。わたしはポルトガル語が分からないが、英語を話すブラジル人がBarlowとわたしに教えてくれたところによると、Gilと若者の議論は自由ラジオ放送に関するものだった。やりとりが始まって二分ほど経ったところで、マスクを着けた8人の抗議者がテントの端の椅子に登り、自由ラジオを要求するポスターを掲げた。大論争が沸き起こったが、大臣(Gil)は多くの人々と直接言葉を交わし、また多くが会話に加わってそれぞれの見方を付け加えた。議論はおよそ20分ほどで終わり、バンドは再び演奏を始め、Gilは歌を求められた。それから20分のあいだ、この驚くべきアーティストは1960年代以来書き続けてきた曲を披露し、観客も皆(Barlowとわたしを除いて)声を合わせて歌った。コンサートが終わるとBarlowとGilとわたしはテントの外に導かれたが、何百人もの人々がサインや写真を求めてGilのもとに殺到したためほとんど身動きもとれない有様だった。一歩進むごとに誰かが論争を挑み、Gilはそのすべてに足を止め答えていた。車に乗りこんだ後でさえ、どこかの若者が窓を叩き荒々しい言葉を投げかけた。Gilは聖人の寛容をもって窓を開き、若者の言葉に応えた。

この場面にはあらゆる意味で衝撃を受けた。わたしはフリーソフトウェア支持の集会を世界中で目にしてきたが、これはそのどれとも違う。たしかに技術系のギークもいたが多くはなく、出席者たちは若く、幅広い層からなっており、まるで大統領候補を迎えるようにフリーソフトウェアに声援をあげていた。

だがなお感銘を受けたのは、この民主主義の力強さそのものだ。上に掲げた写真はBarlowが撮ったものだが、ある意味すべてを捉えている。一国の大臣が、支持者そして反対者とも向き合う姿だ。かれが語り、人々が異議を唱え、かれは抗議の言葉に応える。情熱的にそして直に、抗議する人々と同じ高さに立つ。間に距離はなく、「言論の自由ゾーン(free speech zone)」もない。いわばブラジルがfree speech zoneであり、Gilはそのルールを実践している。

スピーチが終わったあとも議論は続けられた。どこにも“保安のため”はなく、あらゆるところで意見の交換があった。政治家になったロックスターが、ロックスターとして政治家を務めているのだ。

初期のホワイトハウスについてJeffersonがこぼした不満を読んだことがある。一般の人がたびたびホワイトハウスの扉を叩き、大統領に会わせろと要求していたのだ。そのような民主主義の無遠慮さがここブラジルでは生きている。ここで実際に体験するまで、われわれの民主主義がそうした率直さからどれほど隔たってしまったか真に理解することはできないだろう。“This is what democracy looks like.”「これが民主主義だ」。すくなくとも、指導者が群衆のなかに立ち、抗議者が怒りに満ちた声を上げても、「セキュリティ」が雑音を黙らせることのない民主主義だ。銃もなく、黒服の男たちもパニックもなく、あふれるほどの記者たちがいる。想像してほしい。

[オリジナルポスト 1月28日午前4時10分]

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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