
(Geoffrey Stone教授によるゲストBlog)
市民的自由をめぐる南北戦争中最大の問題は、Lincolnによる人身保護令状の停止に関わっている。人身保護令状(writ of habeas corpus)とはどんなものだろうか。通りを歩いていたら警察や軍の人間に逮捕されたとしよう。あなたか代理人は裁判所に人身保護令状を求める権利を持っている。この令状により、裁判所は政府に逮捕理由の説明を求め、理由が正当でないと判断したときには解放を命じる権限を持つ。人身保護令状は憲法のシステムを守る砦だ。これがなければ行政府は一方的にあなたを逮捕することができ、あなたには逮捕が合憲かどうか独立した政府部門に審査を求める権利もなくなってしまう。あなたの運命は完全に大統領の思うがままとなるのだ。
とはいえ、憲法には侵略もしくは叛乱に際しては人身保護令状を停止できると記されている。南北戦争はたしかに後者にあたるだろう。Lincolnが最初に人身保護令状を停止したのは1861年、Fort Sumpterの襲撃からまもなくだ。メリーランドの分離主義者たちは暴動を起こし、首都を守るためボルティモアを通過しようとする北軍を妨げた。秩序の回復は地元当局の手に余り、Lincolnは(いやいやながら)人身保護令状を停止し、軍による民間人の逮捕と拘留を認めた。
南北戦争の期間を通じて、Lincolnは八つの異なる状況で人身保護令状を停止させている。もっとも範囲が広かったのは北部諸州全土に適用された1863年の停止であり、「国家に反抗する行為」についてあらゆる人間を逮捕・拘禁できる権限を軍に与えたものだ。これら人身保護令状の停止によって軍当局に逮捕された北部民間人は38000人に上る。その大半は徴兵忌避、逃亡、サボタージュによるものだったが、扇動的発言によって逮捕されたものもいた。
なかでも最も有名なのは、民主党和平派いわゆる"Copperheads"のリーダーであったClement Vallandigham元議員だ。Vallandighamは戦争に反対していた。かれの考えは、南部諸州をかれら自身の意志に反して合衆国に留めようとすることに意味はないというものだった。後に60万の兵士が命を落とすことになる無惨な戦争を選ぶよりは、南部諸州に離脱を許すべきであるとかれは論じた。Vallandighamはまた徴兵、人身保護令状の停止、そしてかれの判断によれば違憲な大統領令である奴隷解放宣言にも異を唱えた。1863年、こうした主張を訴えるためオハイオに向かう途上、VallandighamはAmbrose Burnside将軍によって捕らえられ、「反逆的言辞」によって北軍に対する叛乱と脱走を煽った罪で軍事法廷の裁きを受けることになった。Vallandighamは有罪を宣告され、戦争が終わるまでのあいだ軍施設での拘禁を言い渡された。
嵐のような抗議が共和党そして民主党からも巻き起こった。共和党員の多くは、われわれが戦っているのは合衆国の自由を破壊するためではないと主張した。Lincolnはジレンマに陥った。公に決定を覆すことで将軍たちに屈辱を与えるわけにはいかない。しかし一方で、Vallandighamが政治的な殉教者に祭り上げられるのも望ましくない。Lincolnの決断はVallandighamを連合国に追放することだった(これは合衆国の忠実な市民を任じていたVallandighamの望むところではなかった。かれはただちに南部を脱出し合衆国に舞い戻り、1864年の民主党大会に堂々と参加した。)
南北戦争後に最高裁は、Ex parte Milligan事件において、通常の法廷が十分に機能している地域(例えば1863年のオハイオ)に戒厳令を布くことは、国軍最高司令官としてのLincolnの権限を逸脱していると判断した。
さて、ここで質問がある。二年以上前、現政権はオヘア空港でJose Paddilaを逮捕した。かれがいわゆる"dirty bomber"であると疑ったからだ。政府はPaddilaを「敵性戦闘員」として軍施設に拘禁した。独房に隔離され、弁護士や家族や友人に連絡する手段も与えられず、拘禁の正当性について法的な審査もないままにだ。政府の説明は、Paddilaが米国市民であり米国内で逮捕されたとしても、大統領がPaddilaは敵性戦闘員であると認定した以上、かれに法的審査を求める権利はないというものだった。Paddilaはいまだに軍施設に監禁されている。
いかがだろう。Paddilaの例と人身保護令状の停止とを比較して、あなたはどう思われるだろうか。
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