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代替補償制度

2004/10/28 00:47
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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(William Fisher教授によるゲストBlog)

前回のポストでは、オンラインで流通する映画や音楽等の制作者への支払い方法として、代替補償制度(ACS, alternative compensation system)は現行の著作権による仕組みより優れているというわたしの主張を扱ったが、興味深く有益な反応が寄せられた。この話題についての議論は週末までとっておくつもりだったが、すぐに取りあげたいという気持ちは理解できる。ではまず、現状に代わる支払いシステムという考えのわたしのバージョンを非常に簡略化して説明したのち(『Promises to Keep』の導入から)、そうしたシステムへの主要な反対意見を扱うことにしよう。

なにより、ACSを提案しているのはわたし一人ではないと強調しておくことは重要だ。先駆的な仕事にはNeil Netanelのものがあり、研究者ではJessica Litman, Raymond Ku, Glynn Lunneyがこのプロジェクトに重要な貢献をしている。基本的な考え方はすくなくとも一世紀前から存在していた。わたしより先にこのアイデアを扱った人々のなかには、以下の説明の一部に異議を唱える人もいることは確かだろう。それは承知しつつ、わたしのバージョンの概要は次のようになる:

「オーディオやビデオ作品の使用について支払いを受けたいと望む著作権者は、著作権局への登録と引き替えに一意のファイル名を交付される。このファイル名は作品の流通・消費・改変を追跡するために使われる。政府は税を通じて著作権者へ支払う金を集める――恐らく、消費者がデジタル・エンターテインメントへのアクセスに用いる機器やサービスへの課税となるだろう。政府の担当局はテレビ視聴率や上演権管理団体によってすでに確立されている方法を使い、個々の作品が視聴された頻度を概算する。税収は登録済み作品の視聴頻度に基づいて著作権者に分配される。この代替制度の施行に伴い、現行の著作権法は公表された音楽・映画記録物の無許可複製や利用に対する制限の大部分を廃止するよう改正される。こうしたシステムによる社会的利益は、以下に述べるように多大なものとなるだろう。
・消費者の利便。・作品を直接公衆に提供することで妥当な収入を得られるクリエータの大幅な増加。・トランザクション費用や関連費用の削減。・製品化された知的財産の価格が複製費用を上回ることによる経済的な非効率性および社会的害悪の除去。・エンターテインメント産業の集権化の逆転。・暗号化などの制限の廃止による消費者の創造性の拡大。
このようなシステムももちろん完璧ではないだろう。一部のアーティストは自分たちに有利となるような操作を試みるだろうし、消費者のふるまいにもある程度の歪みが生じるだろう。制度を管理する役人が権力を悪用するかもしれない。しかし全体からすれば、これは(加速するエンターテインメント産業の危機に対する)もっとも有望な解決策といえる。」

こうしたシステムへの懐疑派からよく提起される5つの懸念・反対と、それに対する回答の試みを以下に述べる。

(1) この仕組みは国際的に「スケール」するのか?(John Allsoppのコメントを参照)。これはまさにACSの弱点の一つだ。もしただひとつの国で採用されれば(仮に米国としよう)、国境を越えた「漏れ」が生じる――作品が米国内でダウンロードされたフランスのアーティストは米国民から集められた税収の一部を受ける一方、フランス国民は米国のアーティストによる作品に自由にアクセスでき、米国のアーティストはフランスの納税者から支払いを受けることができない。注意すべきなのは、米国のアーティストはこうした制度の下でも現在より損をするわけではないということだ。とはいえ、制度のこうした側面はすでにある程度の規模となりつつある米国内からの反対の声に貢献することだろう。

この状況を解決する方法はあるだろうか。関連する国際協定(おそらくはTRIPS協定など)の改変によって、近い将来のうちに他国に同様のシステムを導入させられるとは極めて考えにくい。よって制度の調和は他国からの自発的なACS導入によって起こる必要がある。『Promises to Keep』の第六章ではこのように説明している:「制度の成功が、米国以外の国での同等の制度の導入を促すかもしれない。各国はそれぞれの国民が加入するISP料金および電子機器の購入に課税し、オーディオやビデオの登録システムを開始する(究極的には、各国の登録局はデジタル作品のグローバルな登録システムによって置換または補完されるかもしれない)。各国はすでに述べたような仕組みによって作品が消費される相対頻度を求め、税収を国内外に分配する。各国のこうした制度の組み合わせは、前節で述べた税とロイヤルティ制の三つの大きな欠点のうち第三、つまり国境を越えた漏洩の問題を解決できる。もちろん、各国の制度は依然として漏れを続けるとはいえ、それは双方向に起こるものであり、各国の消費者がどの程度他国のアーティストによる作品に依存しているかを正確に反映したものとなるだろう。」

(2) アーティストは作品が消費された頻度に応じた報酬を本当に受けられるのか? この点への疑問は2つの非常に異なる形をとっている。一部の人々(例えばワーナーブラザースのJeremy Williams)は、エンターテインメント作品全体により小さな貢献しかしていないマイナーな作者に過大な金が支払われ、映画スタジオには現代の高額な制作費を支えるだけの収入が見込めないのではないかと懸念する。また他の人々は(John Allsoppのコメントのように)反対の心配をしている――作品が少数しかダウンロードされない大多数のアーティストは正当な分け前を得られないのではないか?。双方の不安を和らげることができるかどうかは、消費率を計測するサンプリングシステムの質に依存する。第六章では、どうすれば効率的なサンプリングシステムをデザインすることができるかという議論に大きな紙幅を割いている。要約すれば、必須の要素はつぎのようなものだ。

「著作権局は、どの作品が実際に視聴されたかのモニター対象を、調査に同意した人の中からランダムに選択する。(視聴率調査の)ニールセン方式の不完全性はつぎの三点の補正によって回避(もしくは軽減)できる。第一に、消費者のふるまいに関するデータの収集は自動化でき、また自動化されなければならない。再生機器やピアツーピアファイル共有アプリケーションに“プラグイン”として同梱されるソフトウェアによって、サンプル対象が視聴する音楽や映画の登録番号はすべて自動的に記録され、定期的に著作権局へ送信される。よってサンプル対象は不便を感じることもなく、また虚偽の申告をする機会も少ない。次に、サンプル対象の数はニールセンが用いるサンプル数よりも圧倒的に多くなければならない。これは視聴される無数の音楽や映画の集合すべてについて妥当な精度を持った推定のためには不可欠となる。自動化された報告システムの低いコストがこれを可能にするだろう。第三に、消費者を代表しうる数の世帯から消費パターンのモニター対象となる同意を得るには、信用できるプライバシー保証が必要となる。つまり、著作権局が収集するデータはアーティストへの支払額を算出する際には総計として扱われ、月毎の計測後には破棄されること、またいかなる公的・私的機関にも提供されないことが保証されなければならない…。」

とはいえ、こうした措置の有効性は実際の運用によって証明される必要がある。Berkman Centerでは、上記のようなサンプリングシステムを構築し、自発的なエンターテインメント企業の協力のもとに試験することを望んでいる。われわれの大きな目標のひとつは、ACSの下ではある種のアーティストが不当に低い、あるいは高い支払いを受けることになるのではないかという正当な懸念に対処することにある。

(3) 悪徳なアーティストや外部の団体がシステムに「不正」を働き、かれらの作品が「消費」された頻度を水増しすることで、他のアーティストが受けとるべきACS基金の正当な分け前を減少させるのではないか? この深刻な懸念の源への主要な答えもまた、消費率を推定するサンプリングシステムの精度に大きく依存する。二次的な答えとしては、「不正操作」の問題はダウンロードに関しては深刻だが、ストリーミング形式については比較的問題にならないという点がある。一人ひとりがオーディオやビデオの永久的なコレクションを作る世界から、「ストリーム」された音楽を聴き「ストリーム」された映画を視聴する世界にますます移行するにつれ、「水増し」の問題も減少してゆくだろう。

(4) こうしたシステムのための税は消費者個人ではなくISPが負担すべきではないか?
 その通りだが、ISPは間違いなく大部分を加入者に負担させるだろう。

(5) ACSの下でも、消費者は結局現行の著作権による制度と同程度を支払うことになるのではないか? そうだとすれば、欠陥のある著作権システムを欠陥のある官僚制に置きかえるだけでは? これはわたしの見方からすればもっとも容易に答えられる批判だ。仮に現行の流通システムがすべてインターネットを通じたデジタル流通に移行したとしても、ACSの下では消費者は現在のシステムよりはるかに少ない金額しか払う必要はない。具体的には、非常に保守的な試算を用いたとしても、米国の平均的な世帯が現在CDやDVD等の記録されたエンターテインメントに費やしている470ドルのほぼ半額にあたる250ドルまでしか支払うことにはならず、引き替えに映画や音楽を無制限に、広告なしで視聴することができる。これは上で展開したような害や複雑な問題への解決手段を模索するに足るほどの劇的な利益であると思える。

今後の議論のなかで代替補償システムのさらに別の側面が見いだされることを期待しているが、現時点ではこんなところだろう。

Terry Fisher

[オリジナルポスト 10月25日午前11時38分]

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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