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デジタル・フォートレス

2004/09/01 10:38
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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Digital Fortressは『ダ・ヴィンチ・コード』の著者Dan Brownによる1998年刊の小説であり、世界中の電子通信を傍受するNSAを巡るサイバースリラーだ。作中でも現実でも、NSAは傍受した通信の解読を妨げかねない暗号技術について懸念している(現代技術の偉大な勝利のひとつは破ることができない暗号の実現だ。かつてはもっとも巧妙な暗号さえ十分な時間と労力があれば解読可能だった)。NSAはそうした暗号技術のすべてに「バックドア」が組み込まれ、NSAに(NSAだけに)解読を許すことを望んでいる。

小説Digital Fortressは多くの非現実的な要素を含んでいるが(たとえばわたしは、NSAが暗殺者を雇うことは非常に疑わしいと思っている)、現実の問題も提起する――プライバシーとは両義的な価値であるというものだ。この発言は多くの人にショックを与えるだろう。「プライバシー」とは「自由」や「正義」と同様に独立した善であると考える人々だ。だが「プライバシー」とは、少なくとも通信においては単なる「隠蔽」を意味しており、あきらかに善にも悪にも利用できるものだ。少数のシビル・リバータリアンは教条的なあまり、電話の盗聴が正当である一定の状況が存在することも否定する。では、電話やその他の電気通信手段が盗聴不可能なほど効率的に暗号化されたとしたら? それは法によって入念に保たれていたバランスを技術が混乱させる例のひとつとして、著作権保護(およびそれを超えた制限)に暗号技術を利用することと対称をなすだろう。この場合は自由と安全のバランスだ。ここにバックドアを支持する立場がある。問題なのはバックドアをどのようにコントロールするかということだ。暗号化されない伝統的な通話を盗聴するためには、政府は令状を用意する必要があった。だが(暗黙の)前提とされてきたのは、通常は盗聴によらず犯罪行為を疑うに足る証拠を手に入れることができ、更なる決定的な証拠を得るため裁判所に盗聴許可を求める際の根拠となるということだ。だが対外諜報活動においては、テロリストやその他の脅威の証拠を掴む唯一の方法は傍受した大量の通信をふるいにかけることだけという状況の存在が前提となっており、そのような状況でNSAに令状なしの通信傍受を禁じることは危険だろう。だがNSAに通信を傍受する無制限の権限を与えてしまえば、どんな通信も本当にはプライベートとは言えなくなる。

わたしの傾向は――こうした問題の専門家ではないため、そちらに傾いているというだけだが――NSAにバックドアの設置を許すことだ。思うに、通信のプライバシー侵害を大いに心配する人々は、どのようなコミュニケーションも本当にプライベートではありえないという事実を見落としている。あらゆる通信には常に、経路の反対側の端にいる人物があなたの信頼を裏切って通信内容を公開するかもしれない、あるいは保存された通信内容があなたに悪意を抱く人物の手に渡るかもしれない可能性がある。電子メールに関して言えば、メッセージが複数のサーバや端末におそらくは永久に保存されることは今や誰もが認識している。つまり通信のプライバシーとは本質的に条件付きであり、不完全なものだ。問題は通信内容がNSAによって解読され、スキャンされ、ときには保存されるかもしれないという認識があなたに通信を思いとどまらせたり、精神的な苦痛を与えるかということだ。恐らく答えはどちらも否だろう。

政府による監視を許すことの潜在的な危険性を疑うわけではない。NSAによって傍受された通信内容が個人の名前ごとに保存され、例えばE-Zパスデータベースから割り出された通勤パターンなどを含む個人情報と共に蓄積されることを想像してみよう。いずれ国内に住むあらゆる人物に関する恐ろしく詳細な情報ファイルができることになるだろう。テロリズムの防止と犯罪の探知にそうした情報がもつ価値は計り知れない。だが政府によって常に監視されていることを人々が知ったときの政治的・心理的影響もまた甚大なものだろう。

[オリジナルポスト 8月26日午後12時48分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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