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欧州:インターネットを(ふたたび)台無しに

2003/12/15 11:26
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「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
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わたしは今、ジュネーヴで開かれたWorld Summit on the Information Society(WSIS,世界情報社会サミット)から戻るところだ。ジュール・ヴェルヌ的に「ファンタスティック」な、そして憂鬱にさせられるイベントだった(これだけの資金をイベントのかわりに開発途上の地域に使えば、そもそもデジタル格差などなくなるのではないだろうか?)。感想をいくつか。その他のことについてはまた後ほど。

私のメッセージは終始、知的財産におけるバランスの重要性だった。このおかげで、開発途上地域の代表として出席した、驚くほどの怒りを抱いた人々のグループと出会うことになった。米国が開発途上の国々に対して極端な知財ルールを強要しつづけるほど、彼らが米国に対して抱く怒りはますます強くなっているようだ。

新しいことではない。欧州のインターネットについても、良い報せや新たなニュースは何ひとつなかった。ヨーロッパ人たちは伝統的に、インターネットをできるだけ不便に、できるだけ高価にすることに献身してきた。今年になるまで、わたしの訪れた場所ではどんな種類のブロードバンドアクセスも提供されていなかった。そのかわり、唯一のアクセス手段は異常に高い料金の電話を使ったダイヤルアップだった。例えばフランクフルト空港では、地元ISPにダイヤルするにはCCCという会社の提供する電話を使わなければならなかったが、それはただ発信するためだけに2ドル近く請求されるという代物だった。そのうえ1920年代に作られたこの設備では、最初の接続はすくなくとも50%の確率で切れてしまう。つまり、たんにメールを読み込むためだけに$2プラス$2プラスまた$2もかかるのだ。

現在のフランクフルト空港は“進歩”しており、すくなくともルフトハンザのラウンジには無線アクセスが用意されている。システムを提供しているのはボーダフォンだ。料金が高いのは仕方がないとしても、このシステムのどうかしている“特長”は、ネットワークに接続するにはSMS[ショートメッセージ]を受信できる携帯電話を持っている必要があるということだ。すべての課金はクレジットカードを通じてなされるにも関わらず、ログオンに必要なパスワードは携帯電話にSMSで送られてくるのだ。では、欧州でSMSを受信できる携帯電話を持たない(現地の米国人の90%にあたる)場合は? 無線アクセスは無しだ。

だが、もっとも気落ちさせられたのはやはりWSISだった。これは情報社会のためのカンファレンスだ。派手なビデオを使ったプレゼンテーションから無料配布のガラクタまで、豪勢な催しには惜しみなく金が注ぎ込まれている。だが費やされる巨額の資金と世界中から集まる数千人にもかかわらず、運営者たちはシンプルで信頼できるインターネットアクセスを用意しなかった。常に使用中のキオスク・コンピュータはあったが、Swiss telecomが提供する無線ネットワークを利用しようとすれば最悪の体験が待っていた。まず、接続にはアクセスカードが必要だ。私が接続しようとすると、サインオンには毎回少なくとも10分かかった。そのうえ50%以上の場合、システムはまったく機能しなかった。高価なアクセスカードにも関わらず、あまりにも設備が不足していたのだ。カードには“2時間分の無料アクセス”が付いてくるが、その時間は実際の利用とは無関係にサインオンの瞬間から計られる。ようやく接続することができても、ネットワークはどうしようもなく遅かった。誰もが同じ体験をしていた。もしこれが「ワイヤレス」だというのなら、周囲の派手な宣伝はいったいなんなのだ?

関心をもつ者にとって、これはワイヤレス通信をどう展開してゆくかというビジネスモデルがいかに重要なものになりうるかを示すものだった。(インテルがあらゆる公共の場にワイヤレスを導入させようとしている米国でさえ、こうした“利用は別料金”システムの使い勝手はさまざまだ。わたしはT-Mobileのアカウントを持っているが、これは高価ではあっても常に満足できるものだった。一方AT&Tのシステムはいつでもヨーロッパ風――遅く、信頼できず、たいてい失敗――だ)。ワイヤレスがどれほどすばらしいものか伝えたいのならば、企業は実際その通りに――シンプルで高速に――しなければならない。わたしはカンファレンスの空調代など(直接には)払わないし、電気もバスルームも、部屋のテレビにも(個別には)料金を支払うことはない。会議に用意されるコーヒーさえ同様だ。ワイヤレスネットワークを、高価で窮屈でひどい使い勝手の“使用は別料金”システムにする必要は本当にあるのだろうか? コーヒーは有料にしても、もしワイヤレス技術を売り込みたいならば、IPは無料で提供することだ。

結局、それはWSISの終わり頃になって起こった。その日、木曜の遅く、わたしがSwiss telecomのネットワークに接続しようと何度も失敗を繰り返していると、不意にあたらしいネットワークが現れた。ただ"freedom"と名付けられたそれは、まさにその名の通り――課金もなく、https:を使ったサインオンもなく、シンプルかつ高速――ワイヤレスが実現できるすべてだった。

情報社会についての世界サミットの最後になって、われわれはようやく情報社会とはどんなものになりうるかを示すなにかを見ることができた。だがその頃には、出席者の大多数はカンファレンスを離れていたようだ。欧州におけるインターネットの不変の――そして不可避の――退屈さのために。

ヨーロッパへ:わたしは数え切れないほどのことについて欧州を賛美している。だがどうか、ふたたびインターネットを台無しにしないでほしい。独占通信会社のアドバイスをひとつ残らず聞き、そして無視することだ。それらの独占企業がかつて欧州における情報通信技術の繁栄を阻んだのだ。同じことをふたたび行わせてはならない。

[オリジナルポスト 12月13日午前5時23分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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