お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

抜け穴知事、抜け穴大統領

2003/08/18 01:05
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

lessig

「CODE」「コモンズ」等の著書や「クリエイティブ・コモンズ」などで知られるスタンフォード大学ロースクール教授ローレンス・レッシグ氏のBlogの日本語版。著作権や特許などの知的所有権の問題やオンラインカルチャー関連のトピックスを紹介します。
ブログ管理

最近のエントリー

もしこのカリフォルニア州知事のリコールが成立すれば、現職のGray Davisに代わる新知事はDavisよりも少ない得票数で当選することになるだろう。Davis知事は仮に49.9%の票を得たとしてもリコールされる。だが、彼の代わりになる新知事は単なる最多得票数で選ばれる。200人を超える候補者がいることを考えれば、新知事は今Davis知事を支持する票数よりも少ない票で当選するだろう。

これはもちろん、ある別の選挙を思い出させる――2000年の大統領選だ。このときも対立候補より少ない票しか得ていない候補者が、憲法の定める特殊なルールによって当選した。ブッシュ大統領は選挙人の数では勝っていたが、実際に投票した国民の数では明確に負けていた。にもかかわらず、憲法の規定によって(そして過剰に「政治的」な最高裁によって)得票数で負けた候補者が当選したのだ。

どちらの場合でも、結果は法律の文面とは矛盾していない。だが、それが民主主義の精神とも矛盾しないのかという問いは当然起こるはずだ。選挙人団という(私に言わせれば時代遅れの)システムに対する強い支持もいまだに存在している。ゆえにブッシュの勝利も(最高裁が果たした役割を無視するとして)、法の文面と矛盾していないだけでなく、少なくとも一部の人間にとっては意味をなしているらしい選挙人団のシステムとも矛盾していなかったということになる。

だが、このカリフォルニア州のリコール選について同じことはいえない。リコール自体を支持するかどうかに関わらず、この条項は信じられないほど馬鹿げたものだ。相対多数で当選者を決めるというのはまったく意味をなさない。これは単なる出来の悪い条項に過ぎない――憲法上の抜け穴のようなものだ。われわれの憲法起草クラスでこんなものを書いてきた学生がいたら確実に落第させるだろう(いや、実際そんなクラスはないが、前世紀の初め頃のカリフォルニアには明らかに必要だったようだ)。

それでも、これは憲法のなかに出来の悪い条項があるということに過ぎない。それを利用してカリフォルニアほど重要な州の知事になろうとすることは全く別の問題だ。共和党であろうと民主党であろうと、憲法の欠陥を悪用して国で最も重要な州のひとつの知事になろうとするのはひどく間違っている。

民主党か、少なくともDavisの支持者たちがなぜこの点を明確にしないのか私には分からない。それ以上に、なぜDavis知事がせめてこのリコール選に抗議する候補者を立てようとしないのかが理解できない。つまり、以下のことを主張する候補者だ。

(1) この選挙は間違っている。

(2) Davis知事についてどう思っていようとも、憲法の欠陥を利用したリコールには反対票を投じるべきだ。

(3) リコールに反対票をいれた後は、リコール選に抗議する候補者に投票すべきだ。この候補者は再選にも、カリフォルニアの他のいかなる公職にも立候補しないことを誓う――誰もシステムの欠陥によって利益を得るべきではないからだ。そして当選後は、通常通りの選挙でもっとも多くの票を得た候補者が当選するまでのあいだだけ知事職を務めることを約束する。

だが、こういった抜け穴の誘惑に誰が抵抗できるだろうか、という人もいるかも知れない。仮に不名誉なことであろうと、どんな方法を使ってでも、知事や大統領になる機会を見過ごすような政治家がいるだろうかと。

しかし、1960年の大統領選で、ニクソンがイリノイ州での結果に異議を唱えようとせず、結果ケネディが大統領になることを許したとき、ニクソンが行ったのは基本的には同じ選択だったのだと信じられていることを思い起こすべきだろう。彼のモラル宇宙のなかでは、それは指導者になる方法ではなかったのだ。

これは今われわれが生きるエンロンの時代を計る指標だ。我らが大統領も、カリフォルニアのリコール選に出馬する200人を超える候補者たちも、リチャード・ニクソンの道徳的基準にすら及ばないのだ。いかなる手段を使ってでも、彼らは権力を求める。

[オリジナルポスト 8月7日午後7時42分]
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー

個人情報保護方針
利用規約
訂正
広告について
運営会社