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    借りぐらしのYahoo!JAPAN

    2010-07-27 18:41:54

    プロフィール

    クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

    インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、同分野のさまざまなレイヤーでコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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    朝方に某アナリストの方とお茶をしていたところ、割り込みの連絡が激しく入るのでなんぞと思っていたら、Yahoo!JAPANがGoogleの検索エンジンと検索連動型広告配信システムを導入するというニュースがあちこちで盛り上がっていた。というわけで便乗のエントリを書いてみる。
     
     

    事実関係

     
    まずはCNET Japanの記事引用から。
     

    Yahoo! JAPANの検索エンジンがグーグルに--検索連動型広告も導入
    http://japan.cnet.com/news/business/story/0,3800104746,20417434,00.htm
     

     ヤフーは7月27日、ポータルサイト「Yahoo! JAPAN」の検索サービスに米Googleの検索エンジンと検索連動型広告配信システムを採用すること、さらにヤフーからGoogleへデータを提供することを発表した。エンジン切り替えのタイミングは「なるべく早く」とのこと。
     
     この提携で影響を受けるのは、ウェブ検索結果の表示に必要な検索エンジン部分と検索連動型広告の表示に必要な配信システムの部分。ヤフーは今後も検索ページや検索サービスを自ら運営し、検索連動型広告でも広告の入札の仕組みは独自に維持していくという。 

    ついでにY!Jからのプレスリリースも引用。
     

    Yahoo! JAPAN の検索サービスにおけるグーグルの検索エンジンと検索連動型広告配信システムの採用、ならびにYahoo! JAPAN からグーグルへのデータ提供について
    https://www.release.tdnet.info/inbs/140120100727074305.pdf (PDF)
     

     今回の契約の対象は、Yahoo! JAPAN の検索サービスにおける検索エンジンおよび検索連動型広告配信システムのサービス提供を受けることに限定されています。Yahoo! JAPAN は、検索ページや検索サービスを今後も自ら運営していくことはもちろんのこと、検索連動型広告においても、広告主が希望するキーワードに値段を付け、オークション形式により広告の掲載可否や順序を決定する場である「マーケットプレイス」を、これまでどおりYahoo! JAPAN 独自のものとして維持してまいります。したがって、Yahoo! JAPANとグーグルは、広告と検索サービスを含むすべてのサービスにおいて、今後も競い合う関係であることに変わりはありません。
     また、Yahoo! JAPAN が、オークション、ショッピング等をはじめとする諸サービスに関して日々更新されるデータをグーグルに対して提供することで、双方がメリットを得ることになります。

     
     

    インパクト

     
    最終利用者にとってのインパクトは特にない。可能性としては、従来の検索機能に慣れ親しんだ人ならば、構文や順位付けが若干変わるかもしれないので、最初は戸惑うかもしれないが、検索機能に慣れ親しむことができるくらいのリテラシーの方なら、キャッチアップは容易だろう。さらに言えば「Yahoo!JAPANのお客さんって検索とかどんくらいガリガリ使っているんでしたっけ」と思ったりもしなくもない。
     
    検索対象の方はどうか。こちらはSEO/SEM方面で若干影響があるかもしれないが、それとて大したことはないと思う。多くの場合はSEO/SEM業者が対応しているだろうし、彼らはプロフェッショナルなので、GoogleだろうとYahoo!JAPANだろうと、経験的に構造把握(あるいは構造把握の技法の体得)は完了しているはず。移行当初の対応集中等により若干の混乱があるかもしれないが、逆に言えばその程度とも言える。
     
    検索エンジンの供給というビジネスにはどのような影響があるか。オープンインターネットでの検索サービス向けエンジンの供給という意味では、そもそもYahoo!JAPANがかつてGoogleのエンジンを採用していた時期があることからも分かるように、すでに寡占は進んでいる。今回はそれがさらに強化されることになるので、本来ならば独禁法マターと言えるのかもしれないが、公取はいまそれどころじゃないみたい。
     
    広告業界への影響はどうか。これも移行の対象が検索連動型広告の配信システムに限られている以上、レップの皆様は直接的には大きな影響を受けないように思う。もちろん今回の「事業効率化」を契機に、Yahoo!JAPANが広告媒体の高付加価値化を打ち出したりしたら、業界構造がひっくり返るような騒ぎになるだろう。ただその領域に歩みを進めるには当然ながらエンジンを変えるだけでは足りないので、そこまでの話には(すぐには)ならないと思う。将来的には分からないけど。
     
     

    気になること

     
    まず、Yahoo!JAPANという日本最大かつ孤高のWebサイトに係るデータを、Googleが取得するということは、いろいろ大きな意味がある。単純には検索エンジンの洗練が期待されるだろう。また、マス媒体(特にテレビ)との連動が強いYahoo!JAPANのデータを、インフラに強いGoogleが手にすることで、国内のWebトラフィック動態(特にピーク)を概ね把握できることになる、かもしれない。
     
    モバイル方面へのインパクトもあるだろう。Android陣営にとってはGoogleのサービス品質が向上することはポジティブな話であり、iPhoneを追撃するための武器を一つ手に入れたということもできるだろう。もちろんこれは諸刃の剣で、Googleへの依存を強めれば強めるほど、そこから抜け出ることが困難になるわけだが。
     
    一方のYahoo!JAPANにしてみれば、検索エンジンという「一番重い」機能を外部調達することで、相当身軽になる。いわばファイナンスを伴わないオフバランスのようなものだろうか。一方でキャッシュフローやバリュエーションは好調だし、財務も親会社のソフトバンクのお財布になってあげるくらいの状態である。
     
    この諸々の余裕を原資にして、日本のWeb業界(特に広告まわり)の基本構造を抜本的に変える動きに出る可能性は否定できない。たとえば、前述のような高付加価値媒体への挑戦の一環として、もともとはUSENの悩ましいモヤモヤした何かを引き取ることからスタートしたGyao!のさらなるテコ入れ等も考えられるだろう。あるいはDeNAとの提携で行われている通称「ヤバゲー」を含めたモバイル方面の強化等も、視野に入っているかもしれない。
     
     

    Bingはどうなってしまうの

     
    最後に、私が個人的に一番気になっているのは、なぜ今回Yahoo!JAPANがマイクロソフトのBingを採用しなかったか、ということにある。すでに知られているように、米国のYahoo!はマイクロソフトとの強固な戦略提携に基づきBingのヘゲモニーに入っている。こうした提携関係を踏まえてやや大げさに解釈すれば、Googleからの技術調達は利益相反取引に近いとも言えるわけで、その判断を下す背景事情が、どうにも気になる。
     
    twitterでもご指摘をいただいたが、いくつか考えられる理由はある。たとえばBingははFAST由来なので、システムアーキテクチャや運用形態の異なる技術の導入に伴うリスクを現場が嫌った、という可能性。またBingはエロ方面にめっぽう明るいため、フィルタリングの議論が盛んな昨今、そのデータが嫌われたのではないか、等。
     
    いずれにせよ真相は闇の中なのだが、一つ確認できたのは、Yahoo!JAPANと米国のYahoo!の関係が相当希薄になっている、ということ。業界に明るい方からすれば「何を今さら」と言われるだろうが、「じゃああの資本関係は一体何?」ということにもなる。このあたりを諸々勘案すると、2年後くらいのYahoo!JAPANは、資本構成や看板も含めて、もしかするとまったく別の会社になっているかもしれない。
     
    以上、時事ネタに反応して、とりあえず思いついたことを徒然なるままに。タイトルは、たまたま目に入った、ただいま絶賛上映中の宮崎アニメから拝借。

    ※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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