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    天空の城Google Buzz(後編)

    2010-02-17 00:47:17

    プロフィール

    クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

    インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、同分野のさまざまなレイヤーでコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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    Google Buzzは「グループウェア」か?

     
    twitterが「タバコ部屋」だとすると、Google Buzzは「新規事業検討会」ではないか。あるいはもう少し抽象的に言えば、前者が微分的言論空間で、後者が積分的言論空間。こんなところが前回の論旨だったと思う。
     
    これをさらに言い換えれば、twitterは無目的的、あるいはそれを使うこと自体を目的として参加するもの。一方のGoogle Buzzは目的的、つまり何かアジェンダを設定した上で参加するもの。このように位置づけることができるかもしれない。その目的によって「積分」されるのがGoogle Buzzであり、反対に明確な目的のない(というか目的を必要としない)twitterはひたすら「微分」しかない。
     
    これは「Google Buzzってなんだかグループウェアみたいだね、あるいはGoogle Groupsに似ているね」といういくつかの指摘と符号する。というかこうした声が聞こえてきたから私としても我が意を得たり、というところもあるのだが。
     
    グループウェアをざっくり約せば、計算機上で複数人で協働して何らかの明確な目的を達成するためのソフトウェア、ということになる。たとえばスケジュール共有だってそうだし、あるいは一つの文書をみんなで完成させる、というのもそうだろう。すでに世の中には様々な形態のグループウェアが存在し、それなりにIT化されている組織に属している人ならば、そのいずれかに触らない日はないというくらいだろう。
     
    Google Buzzも、大きく括ればその中の一つとすることができるのではないか。数多あるグループウェアの中でも、テイストとしては掲示板やwiki、あるいはSNSのコミュニティ機能に近いものがあるかもしれない。そのGoogle流解釈が、Google Buzzというわけである。
     
     

    グループウェアの悩み

     
    この仮説がある程度妥当なのだとすると、一つ気になることがある。それはGoogle Buzzはグループウェアの悩みを解消しているのか、ということ。
     
    グループウェアの悩みとは何か。端的に言えば、

    • 円滑な進行には管理者・進行役が不可欠である
    • そして活性化に伴って管理者・進行役の負荷は増大する
    • これが満たされずにいると瞬く間に荒廃する

    というあたりに集約されると私は思っている。これは私が考えたことではなくて、京都大学の石田亨先生(あるいは西田豊明先生だったかもしれない、間違っていたらごめんなさい)あたりが、かなり古くから指摘されていることの、私なりの解釈である。とはいえ多くの方の経験則にも適合するのではないだろうか。
     
    掲示板であろうとSNSのコミュニティであろうと、そこが健全かつ円滑に進行されるには、明確な進行役(モデレーター)が必要である。グループウェアという極めて狭くて限定的な空間において、互選的にモデレーター役が決まることはあっても、参加者全員が共有する自発的かつアドホックな秩序などというものは、概ね発生しない。
     
    とすると次の問題として出てくるのは、そうして選ばれたモデレーターの負荷増大である。特に参加者や発言数が増加して活性化が進むほど、調整役としてのエントロピーは増大していく。場合によってはそれを専業にしなければならなくなるほどで、古くはニフティ・サーブがシスオペにお給金を払っていたことからもそれは分かる。
     
    実は先の石田先生(あるいは西田先生)ご指摘のエッセンスもそこにあって、グループウェアによる協働作業の成功に、モデレーターの支援機能は不可欠だとされている。そしてこれがないと、モデレーターはすぐに破綻して「やーめた」ということになる。そして進行役のいなくなった空間から人々は離れ、その空間はあっという間に荒廃する。teacupの残骸あたりを眺めてみれば、ケースはいくらでも見つかるだろう。
     
     

    悩みを抱えたままのGoogle Buzz

     
    ではGoogle Buzzはそのグループウェアの悩みを解消しているのか。ここまで眺めてみた限り、まったく解消されていないように、私には思える。
     
    すでに私のところにも、毎日山ほどBuzzが流れ着く。そのいずれも、ほとんど活性化していない。たまに発言が連なってところは、アジェンダが明確になっていて、進行役らしき人の存在も感じられる。つまりこれは、グループウェアの悩みそのものの状況である。
     
    ではこの進行役を支援する機能は何かあるのだろうか。これも眺めてみる限り、そうしたものは何ら用意されていない。Buzzを起こした人もそこに乗った人も、基本的には同じことしかできないよう見える。というわけで、グループウェアの悩みは、解消されていないということになる。
     
    それでいいではないか、つまらないBuzzやメンテの大変なBuzzは、流れて消え去るのみ。それがGoogle(やその利用者)がtwitterから学んだ体験(いわゆるエクスペリエンス)なのでは、と言う人もいるだろう。私もそう考えることがなくはない。
     
    しかし数日を経過して、Buzzが流れていくことと、twitterのタイムラインが流れていくことは、似ているようでまったく違うことに、気がついた。端的に言えば、Buzzで流されていくものは、ゴミなのである。つまりこういうことだ:

    • 日々たくさんのBuzzが生み出される
    • その大半が参加するに足らないものとして流されていく
    • それでもGmailを開けば「Buzzがいっぱいありますよー」と指摘される
    • 気がつけばGoogle Buzzはゴミ箱と化していく
    • だんだんチェックするのが面倒になる

    そして少なくとも私には、ゴミ箱を開けて眺める趣味はない(ゴミ箱企業の経営分析は趣味なのだが、それはまた別の話)。というわけでGoogle Buzzを開くこと自体が鬱陶しくなる。実際、私はすでにGoogle Buzzをチェックしなくなりつつある。
     
    一方、twitterのタイムラインは、時間軸の中で流れてしまうものである。ゴミだから(あるいは価値がないから)流れされていく、というのではない。だから時として、タイムラインを逆行し、tweetを追いかけていくことになる。これはゴミ漁りではない。
     
    もちろんこれを以て、twitterは「時間軸」を導入することによってグループウェアの悩みから抜け出した、とまでは言い切れない。というのは時間軸の導入と引き替えに、アジェンダ設定を困難にしているからだ。ハッシュタグがあるではないか、と言われるかもしれないが、たとえば日曜夜8時の#NHKなんぞ、流れが速すぎてもはや見れたものではないし、遡るのも煩わしい。
     
    ただtwitterがうまいのは、その時間軸の魅力を引き出しそうとしているところ。そしてそもそも誰もtwitterをグループウェアとして考えていない、というところ。従ってGoogle Buzzとtwitterは、比較して云々するものではないにせよ、とりあえず現状のGoogleBuzzはtwitterの力強さを印象づける引き立て役になってしまっている。
     
     

    もう少しコンセプトの明確化を

     
    というわけでGoogle Buzzからすでに離れつつある私なのだが、とはいえ可能性を感じないわけではない。メールでのやりとりよりもカジュアルに、しかしtwitterよりはフォーマルに、意見のやりとりができるプラットフォームになりうると思っているからだ。というわけで、GoogleがBuzzを改良する方向性として、いくつかの提案をしてみたい。
     
    まずはもう少しGoogle Buzzの機能や位置づけを明確化すること。現状ではあまりにも生煮えである。いくらベータ版で出すとはいえ、コンセプトレベルから揺れているのでは、ベータでもアルファでもなく、単に中途半端なものに過ぎない。ユーザが自分で好きな使い方を…という伊東豊雄的メソッドは、せんだいメディアテークで利用者の動線が破綻しがちなのと同様の問題を誘発すると、私は思う。
     
    その上で私は、もっと割り切ってグループウェア化に進むべきだと思う。具体的には、

    • Google Groupsとの連携による閉鎖空間
    • Google Docsとの連携による協働作業の明確化
    • 管理者機能の具体化
    • エージェント機能によるニュース等のコンテンツとの連携
    • オフライン機能の強化

    というあたりは必須だと思っている。あとは個人情報や位置情報周りに対するデリカシーが相変わらず致命的に不足しているが、これは欧州や日本の常識に沿うならば、原則オプトインでやるべきであろう。
     
    そのあたりまでやりきってもらった上で、改めて触ってみたい。反対に現時点では、あまり使い道が思い浮かばないし、率直に言えば積極的に使おうとは思わない。
     
     

    あんまりマーケティング云々じゃないかも

     
    最後に、マーケティング関係者の間では早くも「Google Buzzってどうよ?」という議論が立ち上がっているところだと思う。早くも企業アカウントが取られていたり、と動きも活発なところで、新しいプラットフォームになるか、と期待を含めて注目されているだろう。
     
    まだ私もその可能性はよく分からないのだが、いまのところまだGoogle Buzz自体が生煮えなこともあって、労多くして功少なしという状態になるのではないかと思っている。このあたりはまだ十分考えきれていないのでキーワードだけ提示しておくと、

    • COI(community of interest)相手の商売の難しさ
    • 興味のない人にとって企業Buzzがゴミになっていくことのリスク
    • 管理者(=企業側)に求められる負荷とリスクの多さ

    といったあたりが便益以前に想定されてしまうので、ちょいと厳しいかな、という印象ではある。ただこのあたりは、優秀なプランナーが何か別の解を提示してくるかもしれないので、結論は出さないでおく。
     
    というわけで、前編と後編に分けると、後編は大抵つまらない、というマーフィは克服できたかな?

    ※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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