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民主党政権が選挙運動のネット利用解禁を打ち出したので何か書こうと思っていたら、パネルディスカッションにも同じお題が出ていた。あちらに長文を書くのもいかがなものか思っているので、こちらで徒然と。
基本的には賛成する
まず立場を明らかにしておくと、私は選挙運動のネット利用解禁に、賛成である。少なくとも私自身は反対する理由は特にないし、従前の反対意見に反駁することもできると思っている。
たとえば、インターネットは国民に広くあまねく行き渡った情報通信インフラではまだないからダメ、という指摘。CNET読者からすれば「は?何をバカなことを」という気分だろうが、それ自体は事実。たぶん、PCインターネットを一応使いこなせる人というのは、国民の1/3くらいだろう。
しかし、だから「ネットは一部の人のメディアであるため、使わない人にとって不公平が生じる」というのは、反対意見の体をなしていない。もちろん私もシロウトではないので、マスメディア(特に新聞・テレビ・ラジオ)が「広くあまねく」の情報伝達手段として法律上(あるいは判例上)特権的地位を認められていることは分かっているが、それは合理的な理由にはならない。
そもそも新聞を取らない人やテレビを観ない人が増えているのだから、マスメディアも含めて広くあまねく公平な情報伝達手段なんぞはもはや存在しない、というのが現実である。そしてその上で、メディア間で情報量の圧倒的な格差が生じないようにイコール・コンディションを図ること自体は、丁寧な制度設計を心がければ、ある程度可能なはずだ。
ネットでは(匿名による)個人攻撃が起きやすいとか、声の大きな人が煽動しやすいからよろしくない、というのも同様だ。確かにそれ自体はその通りなのだが、そんなものはネットの内外を問わず、どの世界でも起きることである。実際、創価学会や幸福の科学の熱心な信者さんたちの方が、ネットで声の大きい人々の数百倍は(いろんな意味で)アクティブなのは、およそこの国のオトナであれば誰しもが知る事実。
大体、この問題を所轄する総務省自身が、一枚岩ではない。片や選挙運動のネット利用に消極的かと思えば、他方では「日本のネットは世界一、ネットをあれこれ使いましょう」とアピールしている。もちろん、前者が旧自治省系、後者が旧郵政省系で、両者の結婚生活があんまりうまくいっていないのは百も承知なのだが、もうちょっとなんとかしましょうよ、というのは中の人も思っていたはずだ。
ではこれまで誰が反対していたかというと、自民党のおじいちゃんたちだというのは、自民党の若い議員たちからよく聞いていたこと。そのおじいちゃんたちが引退し…てはいなくて、むしろ若い議員たちが根こそぎ落選しているのが何とも哀愁を誘うわけだが、さておき権力が奪われた彼らは唇寒しで、結果として物事が動き出したというところだろう。
けれど期待はそれほどしていない
じゃあ選挙が日本の民主主義を今すぐ劇的に変えるかというと、私はあんまり期待できないと思っている。
今夏の衆議院選挙で、私は日頃仕事でお世話になっている複数の議員(つまり複数の選挙区)の手伝いをした。参謀として知恵も出したし、わずかではあるが、電話をかけたり候補者のお供をしたりと、スタッフとして現場で作業もした。当選した人も落選した人もおり、結果は様々だったが、まあそういうことをしていたわけである。
その時の、特に現場の経験から強く感じたことがある。身も蓋もないのだが、ネットでどんなにカッコイイことを言っても、それだけでは票につながることはなくて、結局はドブ板をやらないと有権者を啓蒙して票を掘り起こすことはできない、ということである。これは、都市であろうと地方であろうと、あんまり変わらない。
それはなぜか。現場を周りながらいろいろ考えていたのだが、私なりの仮説として浮かんできたのは、組織で固められていない有権者(いわゆる無党派層に近いのかな)の多くは、政策ではなく候補者の人間性で選好している、ということである。
いや、人間性なんてカッコイイ代物で選んでいる人は、まだ意識が高い方かもしれない。もっと率直に言えば、候補者の態度だとか表情だとか年齢だとか、ほとんどそういうことだ。あいつは辻立ちで偉そうにしていたとか、あいつは悪代官ヅラしているとか、そんな話。さらにいえば、そもそも候補者云々ではなく、単に虫の居所だとか、その日の体調だとか、そんなものが実際のところかもしれない。
さておき、そんな候補者のパーソナリティやフィーリングを、ネットでうまく伝えることはできるのだろうか。もちろんうまくやれる人はいるだろう。でもそれは特殊技能に近くて、そのスキルを持つ人はごくわずかというのが現実だろう。いわゆる真正のアルファブロガー(というわけで私のことではない)がそんなにいないのと同じような話。
その現実が見えた瞬間、なんだネットもツールとしては大して効かないじゃないか、ということになるのだと思う。そしてそんなことにカネを使って手間をかけるんだったら、ドブ板やって、辻立ちして、握手して、電話かけて、選挙カー走り回らせた方がいいでしょ、ということになる。だってその方がパーソナリティやフィーリングが伝わるんだから。
とにもかくにも有権者の意識次第
有権者をバカにするな、みんなもっと志が高いはずだ、と反発する人もいるだろう。その反発は正しいものであって欲しいと、私も願う。しかし現実は、雨が降れば投票率が下がることからも分かるように、そんなにみんな政治のことなんか考えていない。そして日本という国が一応成熟していると見なせるのだとしたら、政治に対してその程度の関心しか示さないというのも、ある程度正しい姿かもしれない。
これが、残暑厳しい晩夏に選挙区を歩いた私が得た、一つの仮説である。そしてこれをちょっと小難しい話に仕立てると、そもそも間接民主主義とネットは、そんなに相性が良くないのかもしれない、ということになる。
間接民主主義をごく簡単に約せば、選挙等の手段で代表を選んで議会に送り込み、その人たち(代議士)に政治を担ってもらう、という仕組みのこと。これをよくよく考えてみると、一人が多数を代表するという構造からして、極めて「マス」的である。また選挙の機会も数年に一度しかないことから、政治に対する関心が選挙前後に集中しやすい。
となると、少なくとも議員や候補者サイドは、普段はドブ板という「ネット以前の活動」でパーソナリティをアピールし、かつ選挙運動としては辻立ち、桃太郎、握手、電話という「1対多のマスコミュニケーション」で露骨に票を掴みにいくという、いずれも古典的な手法を採用する方が、やはり合理的ということになる。そして有権者サイドも、関心が選挙前後に集中し、評価軸が政策でなく人柄である限り、こちらもやはり古典的な手法の方が合理的、となる。
(追記)一方、ネットは本当に使いものにならないのか。もちろん否定するつもりはないし、特にケータイとtwitterには多くの可能性があると思っている。ゆえに橋本岳・前衆議院議員にtwitterを使ってもらったり、ディスカッションの場を仕掛けた次第でもある。ただ、マス的なコミュニケーションであれば、マスメディアの方が現状まだ最適化されており、ネットがそれに適しているかといえば、まだまだ工夫(と特に発信者側の経験やセンス)が必要というのも、現実ではある。誰しもがtwitterでスターになれるわけではないし、それは政治家とて同じこと。
以上、ここまで夢も希望もぶった切って、ひたすら地べたの現実を書き連ねてきたわけだが、私が言いたいのは、ネットはしょせんツールに過ぎなくて、結局はそれを使う人間の意識が変わらなければどうにもならんですよ、ということだ。そしてこういう現実主義的な意見に反発を覚えた方は、その人間(つまり有権者)の意識を変えるために、ぜひ立ち上がって行動して欲しいと思う。ツールが変わるなら、次は人間の側が変わるべきで、それは人間による働きかけでしか変わらないのだから。
タイトルはティム・ロビンス出演の佳作からそのまま拝借。選挙運動がいかにマス・コミュニケーション的な側面を有しているかを、ドキュメンタリータッチで浮き彫りにしている。
(11/7 11:33am 追記しました)
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