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前回の続き。ようやく日本の話。とりあえず、目先はかなり心配、でも長期的にはほんのり楽観、というところだろうか。
日本のレバレッジ経済
日本がある程度米国のお付き合いをしなければならないのは前々回に述べた通り。米国債が安泰だと考えることはもはや困難だし、ニュース目白押しで忘れがちだが、日本のあちこちの金庫に債券が眠っているフレディー・マックとファニー・メイはどうなるの?という話である。
繰り返すが、ファンダメンタルは、今となっては先進国随一だと思う。ファイナンスがヘタで、何も出来ずに指をくわえつつ、目の前の仕事をまじめにコツコツ積み上げてきたのが奏功しているということだろう。動きが鈍かったがゆえにバブル崩壊の被害が少なかった三菱銀行、みたいな話に近く、結果的に被害は比較的小さい。
しかしいくつか懸念事項はある。ファイナンス下手の日本だって、どっこいレバレッジ経済の考え方を一部に導入している。たとえば、年功序列も崩壊し、少子高齢化の到来も分かりきっているのに、年収500万円の人が5000万のマンションを買えてしまうのは、やはりおかしい。かなりクリアになってきたが、勝てるはずのないパチンコに突っ込むカネを貸す消費者金融も、またしかり。そのおかしさの裏側には何らかの不都合な真実が存在する。皆までは申さないけれど。
そしてこれはなにも個人だけの話ではなく、企業でもまたしかりだ。たとえばCNETでもおなじみベンチャー企業だが、実態や成績から遠く離れた株価を設定され、とりあえずIPOしてチマチマと資金回収をした後、株価がロングテールに陥っているのはすでによく知られたこと。彼の地の投資銀行家とはマフィアとチンピラほどの差はあれど、これも一つのレバレッジ経済だろう。
大手企業や銀行はどうか
というわけで、全体が壊れてしまうということはないものの、一部で無理をしているところはある。その無理がきかなくなった時、崩れる分を全部まともに積み上げれば、やはり二ケタ兆円の前半くらいには届いてしまうところだろう。最近ハデな話が多くてなんとなく麻痺しているけど、山一證券が最後に壊れた時の金額が2000億円だったことを考えると、インパクトは推して知るべし。しかも実体経済に近いところでの話だけに、頭が痛い。
たとえば現場オペレーションや仕入れの状況、あるいはその結果たるP/Lを眺めている限り、「こりゃ万年2位も納得だね」という某赤い色をした流通大手が存在するが、彼らはコベナンツのヒットどころか、「フッフー」とかいう鼻歌まじりに、連続安打記録を更新中という状況であり、BSが大変なことになっている。そういえば売上も赤字転落だったような。
そんな最中に新たにモールを作るのは、いくらレイクがほのぼのしているタウンだからといっても、もはや計画的犯行である。とはいえハードランディングはあまりに地域経済への影響が大きすぎる。ダイエー方式での再生はBSの中身と規模的に困難である以上、ここの一切合切を引き受けている某青い色をした銀行のBSに載せ替えて、あとは「ハッピーバンクデー」というYO-KINGの朗らかな歌声が流れるなか、銀行ともども葬送されるのだろう。誠にご愁傷様である。
いやいや葬送は困る、あそこが飛んだら積み上げたうちの退職金はどうなってしまうの、という声があちこちから上がるだろう。そんな事態に陥った暁には、蟹工船どころの話ではなく、オリーブの木になぞらえて「柳の木」とかいう連立政権が生まれてしまいかねない。日本は今のところそういう国じゃないので、いろいろ止まるだろうけれど、このタイミングで止まるのはいかがなものか。
というわけで自民党国際金融危機対応プロジェクトチームの皆様におかれましては、またぞろ「銀行への公的資金注入」という議論が沸騰中なのだが、そういえば日本の銀行って金融危機と無縁だったんじゃなかったっけ、と厭味の一つも言いたくなる。果たしてそうして問題を長引かせていいのだろうか、これからの10年がまた失われるのは、30代半ばという人生で一番おいしい時期を迎えた我が身としては、願わくばご勘弁なのだ。
ワンちゃんの行方
ちなみにこのハッピーバンクはグループ全体で赤いものが8兆円強程度。この中には、リファイナンスを経てステイクホルダーは見かけ上一本化された、某携帯電話キャリアの2兆円強も含まれている。彼らの場合はそもそも当該事業への参入時に無茶なファイナンスをし、通信キャリアとしては有利子負債が「こんなものを許していていいのか」というくらい有り得ない状況だ。
現状はリンゴの木の下でホワイトなワンちゃんが吠えちゃっている感じである。実際あまりにもリンゴが市場から見向きされなかったので、取引先やお友達にばらまいている始末。おれのものはお前のもの、という「逆ジャイアン」状態だが、それもこれもハッピーバンクとの間で結ばれたコベナンツに、契約数が含まれているからだ。しかしこちらでも紹介されているように、歴史と数字はいつだって作られるもの。かつてピカチューがヒット、ヒットと叫びながらそう教えてくれた。今回もまたピカチューが歴史の証人となるのだろうか。
さらにそのワンちゃんのギャラも予想外に先送りされているときている。ご近所の会社もさぞや困惑されていることだろう。あるいは日々の資金繰りで肝を冷やしている零細企業のオヤジさんとか、数字作りを手伝わされた挙げ句、昨年度はバラ色だった事業が今年度は一転してリストラの憂き目を味わっているセントくん方面の方々は、さながらハラワタがムニエルのはずだ。なおセントくんに関しては、広島がクライマックスシリーズ進出を逃しており、重ねて心中お察しする次第である。
ちなみに、このキャリア周辺のもう一人のワンちゃんは、無事にご卒業されたようである。正しく国民栄誉賞もののご転身であり、非常に喜ばしい。一方で残された若人たちのギャラの行方は気になるところだが、そこまで考えると道草を食べ過ぎて消化不良となり、あとは野菜ソムリエにすべてをお任せしたい。
実はここにもハッピーバンク
閑話休題。執筆時点だが、彼らのCDSが700ベーシスポイントを超えているというのは、改めてすごい事態である。平たく言えば1億円の債券を引き受けるのに700万円の保険に入らないとダメ、ということ。実務家筋では、CDSが700を超えたら「破綻への準備」を始めることになっている。1億円で数パーセントの利回りしか得られないのに、その保険に700万円以上が必要ということなら、小学生でも分かる当たり前の損得勘定だ。
そもそも先進国のキャリアビジネスとして、彼らのBS自体、到底考えられないものだ。このあたりはエントリをいずれ改めて書こうと思うが、CDS一つとっても、実際同業他社は30-40ポイント程度だ。S&Pの格付けもめでたくBBとなり、ハイイールド債でも出さなければ資金繰りできなかろう。
あるいはハッピーバンクに心中を覚悟させるのだろうか。そういえばLBOのリファイを飲んだのも、今度のコミットメントラインを引き直したのも、やはりハッピーバンクグループの某社であった。そもそも「レバレッジド・バイアウト」とは、今となってみれば香ばしいどころかくさやのような発酵臭のある言葉だ。とはいえ数年前は、香菜やピーナッツオイルの香りよりは好まれたのだろうが。
いずれにせよあの有利子負債(とそれを見越した株価の暴落)ではエクイティでの調達は無理だし、デットは9月後半でコミットメント・ラインを引き直してもらっているが、参加行が減っていたり重要な某社が抜けていて、ハッピーバンクの足下もおぼつかない。しかもたかだか数日で半分使い切っているわりに、大きめのお買い物をしたという報道発表がないということは、あちこちにツケを払って回っているということだろう。まだ払ってもらっていない皆様は、どうかお早めに。
総括の行方、ではなくこのシリーズの行方
というわけで、マイケル・ミルケンの復活を夢見る会・日本支部代表は、案外彼らなのかもしれないが、それはさすがにご勘弁願いたい。仮に彼らがクラッシュしたら、CDSは今度は日本発でまたぞろひどいことになるし、そこでジャンク債が飛び交うようになれば、ギリギリのところでがんばっている人たちのコーポレイト・ファイナンスにとっては、硫化水素どころの騒ぎではない巻き添えとなろう。
こうなると、同じ産業の中でここまでのメチャクチャを許してしまった責任は誰にあるのか、という議論をせざるを得なくなる。もちろん行政の不作為もあるし、またワンちゃんたちを助長してきたレバレッジ経済そのものも断罪されるべきだ。
しかしもう一つ、やはり消費者が闇雲に彼らを支えてしまったことにも、批判の目が向けられていいのかもしれない。それこそサブプライムに端を発する金融危機で「米国人バーカ」という批判が仮に妥当ならば、日本のブロードバンドやモバイルの消費者にも、同じ構図が適用されてしまう。
…という話を書こうと思ったのだが、本題からかなり逸れ始めているので、これはこのシリーズを終えたところで、エントリを改める。タイトルが「情報通信インサイト」なので、通信の話をするとあれこれ引っかかってしまい、どうしても話が長くなる。
ひとまずこのシリーズも次回あたりで決着を付けたい。最後に、長い間待たされて、ようやく日本の順番が回ってきた、という比較的ポジティブな話と、そこに至るまでの間に必要な諸々の処理、そしてその中でベンチャーってどうよ、という話をする、つもり。
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