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    七月十一日の狂詩曲

    2008-07-14 01:35:49

    プロフィール

    クロサカタツヤ / KUROSAKA, Tatsuya

    インターネットや通信、放送サービスが大きく変容する中、産業、政策、技術開発等の最新動向や、情報通信サービスと社会の関係性を考える上での「新たな視点」を、同分野のさまざまなレイヤーでコンサルティング活動をしているクロサカタツヤ氏がお届けします。
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    iPhone 3G祭りを横で眺めていたら、産業としての日本のインターネットが有する最近の課題について、少し考えが整理できそうな気がしてきたので、書いてみる。
     
     

    iPhoneはかっこいい

    予め断っておくが、iPhone 3Gやそれに熱狂する人々を揶揄する意図は毛頭ない。それこそ私だって何かの弾みで並んでいたかもしれない。それでも当日並ばなかったのは、私が祭り体質でないのと、どんな目的にせよ並ぶのは嫌いだからだ。それに、いずれドコモからもリリースされるので、その時にまだ興味があれば買えばいいや、という気分でもある。

    iPhoneは確かに近年稀に見る興味深いモバイル端末である。特にそのUIについては、ある方向性を示しているとは思う(その方向通りに動いていくかはまた別の話だけど)。Webを持ち歩くというコンセプトは古くて新しいものだが、UIにこだわることで、ここまで提案できる余地があったことを示したのは、多くのエンジニアを勇気づけたと思う。

    それにこちらでも書いたが、モノとしてかっこいい。ビジネスモデルを含むパッケージングについて、シンプルにこう言い切れるものが最近多くないように思える(もちろんハードルが上がったからだけど)ので、これだけでも価値があると思う。ちなみに、昔はこういうものはソニーが…という話はもう食傷気味なほどあちこちで展開されているはずなので、ここでは割愛。
     
     

    iPhoneに厭きる人々

    一方で、私の周囲でiPhone 3Gを手に入れた人々からは、早くも次の二つの意見が聞こえてきている。

    一つは、「iPhone 3Gに厭きた」という声。さすがに早すぎだと思うが、これは単に使い倒して厭きたということではなく、おそらく彼らが期待していた「何か」にはミートしていなかった、ということだろう。まだ片手ほどのサンプル数だが、こうした声を届けてくれたのが、いずれもインターネットで15年ないしは20年近くエンジニアリングを手がけ、Appleの歴史にも明るい人々であるのが、私としては興味深い。

    もう一つは、「iPhone 3Gを使ってみて、ソフトバンクモバイル(SBM)の3Gインフラの低品質さを知った」という声。これは逆に言えば、SBMがこれまで取り込めていなかった顧客層にiPhoneで食い込めていることの証左でもあるのだが、いざ使ってみたらエリアやビル内部での接続、また回線の混雑が、予想以上にひどかったのだろう。ちなみにこの延長で言えば、彼らの3Gインフラ敷設の状況から推察するに、おそらく地方部ではまだ当面は使い勝手が相当悪いはずだ。

    この二つの声は字義通りに受け止めると「そんなことはない」という反論の応酬になるので不毛だと思う。私はこうした声の背後に「端末やアプリにとってインフラとはなにか」という論点の存在を感じていて、むしろそちらに関心がある。
     
     

    iPhoneはどこまでいけるのか

    結論としては、アプリやサービスはインフラを超えない、と私は思っている。ここでいうインフラは通信インフラだけでなく、バックヤードのシステムや一部ビジネスモデルを含め、もう少し広義のものをイメージしている。そしてアプリやサービスの表現形である端末もまたしかり。

    これを言うとソフトウェア方面からの反論が聞こえてきそうだ。しかし現実として、たとえばインターネット上で展開されるアプリケーションは、インターネットのアーキテクチャを超えることはない。もちろんその上に論理的な処理体系を持ち込もうとするのがオーバーレイの試みだが、それとて下位層のルーティングが崩れたりポリシ変更が行われれば一巻の終わり。

    こうした制約は、iPhoneとて例外ではない。先の二番目の声(SBMがiPhoneの足を引っ張っているように見える)のみならず、そもそも3G対応を待たなければ日本でiPhoneが使えなかったという時点で決定的だが、iPhoneのサービスはキャリアネットワークのアーキテクチャやその品質を超えることはない。また同様に、iPhoneが対象とするコンテンツも、Webの枠組み、ないしはAppleが設定した枠組みを超えることはない。

    繰り返すが、だからiPhoneはダメだ、とは思わない。むしろそうした限界やリスクを、統合的なパッケージングによって手中に収めよう(=Appleにとって管理可能なものにしよう)というのが、iPhoneの試みであり意義だと思う。つまり「四の五の言わず、オレに全部やらせろ!」ということだ。実際iPhoneでは、事実上「オレ様ビジネス」を標榜しているApple(とジョブズ)のそうした本領が、遺憾なく発揮されていると思う。
     
     

    欲しいのはiPhoneではなく和製ジョブズ

    こうした「オレ様アプローチ」は、ビジネスとして正しいのだろうか。特に、インターネット産業の特徴である「水平分業」とは、必ずしも相容れないものではないのでは、という反論も出てこよう。実際、jailhackが活発に行われているということは、そうした声の表れだろう。

    この問題、まずもって、一般論で語ることはできない。たとえば資本市場で一部のヘッジファンドが暴れるのは、レバレッジが効いた強烈な規模のファンドでも、ファンドマネージャーという特定少数の個人によって運営されることに一因がある。また自動車の世界では、先代はヒットしたモデルがデザイン変更で豪快に空振りすることはしばしばあるが、これは特定のデザイナーが権限を一手に掌握する弊害でもある。

    しかし、ことネットワークを前提としたものづくりの領域なら、基本的にオレ様アプローチは正しい、と私は思う。というのは、一口にネットワーク・アプリケーションと言ってもその構成要素は様々であり、ゆえにそのすべてを掌握してコントロールできるマネージャーが存在することが、品質管理を左右するからだ。水平分業が進んで細分化したからこそ、それを統合する人が必要なのである。

    そしていま日本のインターネットの世界では、レイヤーの上下を問わず、こうした「オレ様」がかなり不足しているように思う。iPhoneの登場を前にして、私が一番危機感を覚えるのは、実はiPhoneそのものではなく、そこにある。
     
     
    …と、この先のところを途中まで書いたところで、ちょいと長くなりそうなのと、論旨が少しシフトしそうなので、ひとまずこのエントリはここまで。約すれば、私の関心領域は、iPhoneそのものではなく、iPhoneを生み出した背景であり、さらにいえばオレ様アプローチを許容する産業基盤の方にある、ということだ。

    ※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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