コンテンツビジネスに関して、気になっていた「実験」が一つ終了したようなので、気づいたことをメモしておく。
多くの音楽ファンは、話題を呼んだpay-what-you-wantプロモーション(ユーザーが好きな価格でアルバムをダウンロードできる試み)により、Radioheadが音楽販売の新しい方法を見つけ出してくれることを望んだ。
Radioheadはこれまで、pay-what-you-wantプロモーションの売り上げを発表していないが、その数字は芳しくなかったであろうと推測されている。
レディオヘッドやマドンナがレコード会社を半ば「中抜き」するような動きをしていることは以前から注目していた。しかしそれはあくまで彼らのようなスターだから成立するところが大きい、とも思っていた。彼らほどの知名度を確立していれば、おそらくレコード会社のプロモーションに頼らずともGoogleとWebサイトだけでデリバリーが可能だろう。
実際、違法MP3ファイル交換の興隆が、この事実を逆説的に証明している。要はアーティスト名や楽曲名がはっきり分かれば、リスナーもリーチできるし、アーティストもデリバリーできる。反対にそれほどメジャーではないアーティストや楽曲については、見つけられなかったりそもそも探せない可能性がある。
たとえば仮に、少なくとも音楽の世界ではまったく「無名」な私が、ネット上での音楽活動だけで生計を立てようとするとして、「潜在的なリスナー候補」はどうやって私を見つけてくるのだろうか。もちろん、ある一定規模に認知され、身の丈にあった成功を収めている例はいくつか知っているが、それもわずかな話だし、また成功したという例を見ても正直メシを食い続けられるとは考えにくい。
デリバリーコストの低減(場合によっては消滅)はデジタル化の進展とネットの台頭がもたらした大きな変化である。しかしデリバリーの「到達可能性」については、アーティストの存在を認知させるための「プロモーション」や、検索を容易にする「肖像や名称の管理」、あるいは収穫機会を得るための「楽曲の管理」などが複合することでしか今のところは得られないように思う。これは経済学でいう「取引コスト」であり、それを包括的に支える役割をレコード会社が担えるのであれば、取引を成立させる上で彼らの存在には一応の合理性があることになる。
ネットの台頭が音楽ビジネスの産業構造を変え、アーティストとリスナーがもっとフラットな関係になることには私も期待したい。しかしネットの台頭「だけ」でそこに及ぶのは困難だと思うし、また産業のすべてを変える必要はないとも思っている。
もちろん、既存のパッケージビジネスは、そもそも依拠しているパッケージの存在自体が微妙な位置づけにあるし、事業として明らかに改善すべき非効率な点が少なくないのも事実。前述で「メシを食い続けられるか」と書いたが、メジャーデビューしてパッケージを売り出したところで、食えるわけでないという意味では同じ、というような状況があちこちある。
その意味で、iTunes Storeが今後どれくらい伸びていくのか、あるいは現状で頭打ちしてしまうのかは、改めて気になっている。というのも、iTunesは単にデジタルなストアというだけでなく、結果として取引コストの要素を一部「アンバンドル」したモデルに見えるからだ。
また先日ご招待いただいた(ありがとうございます>荒川さん)JRCとYouTubeの日本における音楽著作権の包括利用許諾契約締結の記者発表の際に、いくつかのレーベルがYouTube上にチャンネルを作ることが明らかになった。これらはレコード会社の事業を効率化したり新たなプロモーションのリーチを開拓するという意味で、正しくステップ・バイ・ステップでの進展だと思う。こうした動きはもっとサポートされていいはずだ。
このあたり、さらに追いかけていくと、フェア・ユースやトレレイテッド・ユース(にも言及している成蹊大学・城所先生とおなじみ森さんの対談)の議論とも関連するところである。制度設計の観点も含め、引き続き注意深く動きを見ておきたい。
追伸、
それにしても、英語をカタカナにしただけの映画タイトルの、なんと間抜けなこと…。
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