先日のトークイベントが開催された会場のそばに、先頃日本への再上陸を果たした米国系の某ハンバーガーショップがある。ハンバーガー好きな私は、いい機会だからイベントの前にでも行ってみようと、所在地やメニューを調べるべくWebサイトを開いてみた。
地図のための地図はどこ?
まずGoogleで店舗名を入力し、サイトを見つける。早速クリックしてみるが、なかなかサイトが開かない。しばらくしてやや重そうなFlashのトップページが登場する。この時点でもそれなりにストレスは溜まるが、肝心の情報にはたどり着いていないし、まあ仕方ないと思う。
続いて、店舗情報のページを探すが、トップページにあるボタンはすべて英語「のみ」の表記。平易な単語とはいえ、ここで躓いてしまう人もいるだろう。かつ、その英語表記も単語一つだけで、ユーザが直感的に「これ」と選べる代物ではない。実際、ある程度英語が話せると思っている私でも、どのボタンを押せば「所在地情報」にたどり着けるか、しばし迷ってしまった。
ようやくたどり着いた店舗情報のページ。しかしそこには地図は掲載されておらず、営業時間と住所の文字情報が並んでいるのみ。GoogleMapsのような地図情報サイトでも使って自分で調べろということだろうか、としばし考えた後、目をこらしてみると一番下に小さく"map"という文字がある。このページを見よ、ということらしい。再びクリックする。
やっとここまで…と思ったのもつかの間、トップページと同様、なかなか開かない。ここでも何か凝ったFlashでも使っているのかと思ったが、地図はPDFで作られていたのだ。しかも、ファイルサイズは3MB近くあり、ダウンロードにも展開にもいちいち時間を要する。そしてようやく開いた地図を見ながら、ふと思った。このサイトにまず必要なのは、この地図を見つけるための地図なのではないか、と。
客が逃げるWebサイト
こうなってしまうと一事が万事で、Webサイトのあらゆる構造や情報に不備を感じてしまう。たとえばメニュー一つとっても、それなりに品目を取りそろえているわりに、説明はスタンダードなハンバーガーの一項目だけである。また、きょうび健康を気にする人も少なくないだろうに、メニューのサイトには栄養表示がない。さらにそもそもの問題として、フォントの大きさや配色が悪く、全般に読みにくい。
ひとしきり眺めてみた後、ひょっとしてこれは米国(親会社)のガイドラインに従った結果なのだろうか、とも思い、本国のWebサイトを眺めてみた。結論としてはまったく違って、米国のサイトはきわめて分かりやすく、英語であっても痒いところに手が届く構造だった。またあろうことか、日本のサイトよりもサクサクと軽快にアクセスできた。
そうこうしているうちに、すでに私は「わざわざ行かなくてもいいや」という気分になっていた。米国出張の時にでも食べる機会はいくらでもあるし、いくら久しぶりとはいえ、所詮はチェーン店の代物だ。どうしても食べたくなったらまたそのうち行けばいい。そう思ってサイトを閉じてしまった。その後、店舗はおろか、サイトすらも訪れていない。
Webサイトから浮かび上がる経営課題
従来からWebサイト診断のようなコンサルティングはあちこちで行われている。いわゆるインターフェース設計や機能設計上の課題を指摘するものだ。これはこれで重要だし、解決できることはたくさんある。たとえば前述の地図を例にすれば、PDFデータを高圧縮のJPEG形式にしてどこかのページに貼り付けるだけで、ユーザのストレスは一つ減る。私だって10分もあれば完了するような作業であり、費用対効果は極めて高い。
ただ、特にこのケースに関しては、あまりに多様な欠点があちこち散在しており、もはやインターフェース・レベルの対策で解決できるレベルではないように思える。というより、インターフェースやユーザビリティ上の課題から、経営課題があちこち見えてくるのだ。やや大げさかもしれないが、
・自分は誰に何を提供しようとしているのか?
・それは顧客にとってどんな価値があるのか?
・それをどのように顧客に伝えればいいのか?
といった、そもそも企業としての自己定義の欠落と、その認識・対応に関するマネジメントの不備(さらにいえば不在)という気配を感じる。
単にWebを軽視しているだけ、あるいはスタートアップで間に合わなかったのでは、という指摘ももちろんあろう。しかしそうだとしたら、そのわりにFlashでそれなりにサイトを作り込んでいるという経営判断には、やはり疑問が生じる。ユーザが一義的に求めるのは、サイトのリッチさではなく、必要十分な情報に簡単にアクセスできる機能性のはずだ。
コミュニケーションを起点に業務を見直す
そもそもネットがここまで普及し、Webがプラットフォームとして定着した現在、特にコンシューマ市場においては「潜在顧客への最重要リーチ手段の一つ」としてWebを捉えるくらいの戦略判断が必要だろう。ネットの普及が潜在顧客への無限のリーチの機会を提供している以上、それをどう使いこなすかが競争優位の要因となることは自明である。
しかもその潜在顧客は、企業の側から頼まれたわけではなく、わざわざ自分の意志でWebサイトまでやってきた人たちである。そもそも丁重に扱うべきだし、また彼らが何を求めているかに思いを至らせるべきだ。それができないのであれば、リスク回避のためあえてWebサイトを公開しないという選択肢すら考慮に入れることが求められよう。
何も特別な技術や方法が必要なわけではない。自分が顧客の立場になって、あらゆる業務や情報のプロセスを見直し、違和感の原因を探りながら対処していく、という作業となるはずだ。要は、顧客が何を求めているのか、それを入手しよう必要な情報を整えていくという、企業として(あるいは人間として)当たり前のことのはずだ。
とはいえ、当たり前のことを当たり前に行うのが一番難しいのも、また事実である。実際、いくつかの案件を通じて、(顧客を含む)ステイクホルダー・コミュニケーションをどうしていくか、という「古くて新しい課題」が明に暗に浮かび上がってきている。いずれも、単にコミュニケーションというだけでなく、それが資本政策であったり商流整理を含めたマーケティングや業務改善といった、より根本的な課題が背景にはある。
要素は複雑に入り組んでいるし、コンシューマ市場と法人市場でも違いがあり、容易ではない。ただ、どこから解きほぐし、どう取り組むべきかは、少しずつ分かるようになってきた。このあたり、少しまとめて定形化してみようかと考え始めているところである。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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