はじめまして、クロサカと申します。
渡辺聡さんにご紹介いただき、CNETでBlogを書くことになりました。「情報通信」と銘打っていますが、本人の性格と同様、あちこちに関心が発散していくかと思われます。悪しからずご了承ください。
また、今後のエントリは主にこちらへ書くことになりますが、以前からはてなダイアリーで書いていたBlogも活動メモ的に残していくつもりです。いずれもご愛顧いただければ幸いです。
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初回でもあるので、回りくどくもあるが、最近考えていることから話をはじめたい。
プロフィール欄に記したとおり、2006年12月末で前職を離れ、年明けに独立した。もちろん公私ともに相応の理由はあったのだが、特に業務を通じて感じていたのは、下位層も含めて情報通信・IT産業全体がそろそろ大きく動きそうだな、という胎動である。
2006年はいろいろなレイヤでいろいろなトピックが溢れ出た年だった。大きめのキーワードを未整理に並べても、Web2.0の台頭、Googleのプレゼンス拡大、YouTubeの普及、BlogやSNSの興隆、IPTV、NGN、FMC、等々。他にもまだまだあるはずだ。しかもそれらがすべて小粒ではなく、日本はもとより世界のあちこちで大きな潮流を呼び起す気配である。業界の末席に10年ほど身を置いた立場からしても、こういう年は近年なかったと思う。
その一方で、何かが足りない、という気もしていた。これはユーザもサプライヤも潜在的に気づいているはずだ。ならばその不足を不足として認識し、それを埋めていく動きが2007年には台頭するように思える。この仮説を検証するには、もっと現場に近いところでその動きに参加したい。そういう気分で、前職を離れた。
独立して、ご挨拶がてらあちこちの方とお話させていただく機会を得た。これまでお世話になった方々、新しくお会いした方々、それぞれいろいろお話をうかがう中で、徐々にこの仮説の妥当性を感じられるようになってきた。
もちろん、足りないものは、一つでもないし、一様でもない。それが何であるか、どう埋めていけばいいのかは、分野や取り組み方によってそれぞれ異なる。ただ、それこそ現時点でそれなりに注目され普及しているサービスやアプリケーションの中にも少なからず、何らかのミッシングピースがあり、それがさらなる成長やサービスの立ち上げを阻害しているように思える。
たとえば、と例示するのはまだ開発中でもあり適切ではないかもしれないが、通信の世界で最近注目を集めるNTTのNGNサービスについて考えてみる(NGNの概要については過去のエントリもご参照ください)。
NGNをごく粗く説明すると、「既存の電話網が古くなったのでIP化(インターネット化ではないことにご注意を)し、どうせなら電話以外にいろいろ使えるようにしましょう」というものである。確かに回線交換網の技術は、もはや後継エンジニアの育成もままならないほどに枯れているし、このタイミングでリプレイスするならIPを採用するのは自然な流れである。従って特にNGN自体に反対するつもりもない。
問題は、上記の説明の後半にある「いろいろ使えるようにしましょう」の部分である。端的には、誰が、何を、NGNに求めているのか、が見えてこないのだ。
たとえば企業システム分野の用途で考えてみよう。NGNの目指す姿の一つに、「インターネットよりも安全で品質が保証されたネットワーク」が挙げられる。確かに品質管理やセッション管理等に関するNGNの考え方は回線交換網のそれに近く、ベストエフォート前提であるインターネットとそもそも品質の考え方が異なる。企業システムの「大きなニーズ」はNGNで内包されているように見える。
しかし、個別ニーズを見てみると、様相が異なる。たとえば銀行のように「事故の許されない」ユーザは、そもそも公衆網ではなく専用線や金融専用のネットワークを利用している。この場合ユーザは「専用線であること」に価値を見出しており、共用ネットワークへのスイッチは容易ではない。一方、そこまでの品質を求めない事業者の場合、利用コストとのトレードオフになる。コストと品質を比較した際、すでにインターネットVPNサービスがそれなりの品質を安価に提供している現在、NGNがどの程度選ばれるであろうか。
すなわちNGNは、安全・安心なネットワークという「大きなニーズ」を実現しながら、個別には既存のサービスに対する競争力が不足しているように見える。だとしたらそこでは、ユーザニーズの把握やマーケット定義といった「マーケティング」や、それに伴う業務設計や機能定義といった「商品設計」が不足していることになる。
ならば、NGNで提供される新規アプリケーションに目を向けてみよう。たとえばコンシューマ向けのテレビ電話だ。一見すると便利で楽しそうなアプリケーションのように思える。しかし過去を振り返ってみると、私が自分の3G携帯電話でテレビ電話を利用したのは、2Gから3Gに移行した直後の数回でしかない。結局「何に使えばいいのか」という問いへのサプライヤからの提案もなかったし、自分で気づくこともできなかったのだ。
翻って現在、NGNの実証実験もスタートし、東京と大阪にショールームも設置された。しかし現時点でNGNのテレビ電話が何に使えるのか、そして生活をどう変えるのか、私には見えてこない。もちろん私自身が十分に情報を得ていないという面もあるし、まだ開発中だから仕方ないのかもしれない。それでも、おこがましいことを承知であえて言えば、それなりに能動的に知ろうとしている私にすらも見えてこないということは、やはり「利用スタイルの提案」やそれに伴う「機能設計」が不足しているような気配を感じる。
繰り返すが「NGNなんてダメだ」と言っているわけではない。実際ようやく実証実験がはじまったところだから、業務面も含めて開発中であろうし、そもそも必要性は十分理解している。インフラ投資の回収が云々等、通信キャリアとして取り組まなければならない事情も察しているつもりだ。また、現実として日本のインターネットは通信インフラとして決して「ピカピカ」ではない以上、ある面では期待もしている。
ただ、多くのキーワードと同様、NGNにもまだ「足りない」ところがある。従って、その足りないところをどれだけきちんと見極められるか、それに伴ってどれだけ埋められるか、がNGNのサービス成立を決する。少なくとも企業も個人も、インターネットや携帯電話というオルタナティブを知り、通信サービスに対する認識が相対化された以上、旧来のように「キャリアが提供するサービスだから」というだけでは受容されなかろう。
これを一言であらわせば、おそらく「ちゃんとユーザに受け入れられる商品を作りましょう」という、ごく当たり前の話になる。そして、少なくとも私が知っているITという領域において、2007年とはおそらくそういう年なのだと思う。
とはいえ人間、当たり前のことを当たり前にやるのが、実は一番難しい。そしてその結果で今後の雌雄が決まってしまうのだから、なおのことタフな年になると思う。ただ、タフであるのと同時に、大いなるビジネスチャンスも感じている。
そんなわけで、私も当たり前のようにエントリの更新を行うべく、ひとまず週一回ペースを目指してまいります。
※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。シーネットネットワークスジャパン および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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