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予測市場を取り入れたユーザーからの要望窓口サービス「はてなアイデア」は2005年4月に試験運用を開始しました。
予測市場とは、株式市場のような市場システムを用いて将来の出来事を予測するという先物取引のような仕組みです。アメリカでは既にこの仕組みの活用が進んでいて、大統領選挙の結果やアカデミー賞受賞作品を見事に的中させたりといった事例が出始めています。また、企業内でも社員が取引に参加しながら会社の方針決定に利用されるなど、さまざまな活用が行われています。
こうした活用事例に刺激を受けながら、かねてからの課題であった要望窓口の効率化に活かせないかと考えて開始したのがはてなアイデアでした。
はてなアイデアではさまざまな要望が仮想的な株式の銘柄として取引されます。要望が実装されると、その要望の株式を保有しているユーザーに配当ポイントが支払われる仕組みです。ユーザーは最初に仮想的な「アイデアポイント」を1000ポイントもらえ、これを元手に「どのアイデアが実現されそうか」を考えながら取引を行います。取引は任意の価格で売り注文・買い注文を出すことができ、条件があった場合に株式の売買が成立します。また、自分自身で新しいアイデアを登録することもできます。
運用開始から7ヶ月後の2005年11月現在、登録された要望は7200件を超え、そのうち1484件が何らかの方法で実装済み、155件を却下、要望中・検討中の状態が3600件という状態です。もっとも多くのポイントを稼いだユーザーは、時価総額で30万ポイントを超える資産を保有しています。最初の1000ポイントから実に300倍になったわけです。
この予測市場の仕組みの優れているところは、ユーザーと運営者の利益が相反しない、という点だと思います。お互いとも「どの要望を叶えるべきか」という同じ方向を向いての議論が可能になっていると思います。「有料オプションを半額にして欲しい」と言ったアイデアは、たとえ自分自身が望んでいるとしても「はてなはやらないだろう」と思う限りあまり魅力的な銘柄にはなり得ません。
短期的には互いの立場が違っていると思えても、ユーザーにとっても運営会社がなくなってしまっては困るわけですから、収益の確保といった一見利益が相反するような問題も、長い目で見れば両者にとってメリットであると考えることもできるかもしれません。そう考えると、予測市場は違う立場を同じにした、というよりも、対象として考える時間的スパンを長くした、と言えるかもしれません。向こう1ヶ月のことを考えれば安い方がよいかもしれないけれど、3年後に会社が存続しているかどうかと言うことになれば妥協も必要だ、という事もありそうです。
はてなアイデアを通して登録された各要望については、社内で「実装する」「他の方法で実現する」「却下する」「検討する」といった判断を行って作業に入っていきます。社内の会議でこの判断を行い、その結果を随時はてなアイデア上に反映していましたが、そこで問題が発生しました。
社内で「却下」と判断したアイデアについて「本当にきちんと検討してくれたのか」「却下の理由が良く分からない」といった声を頂くようになったのです。社内では平均して数分間アイデアについての検討を行っているわけですが、そうした内容を全て伝えきれず誤解が生じているケースもありました。
登録していただいたアイデアについて、こちらでも時間をかけて検討しているにもかかわらず、それがうまく伝えられていないせいで誤解を招いているのは惜しいと考えて始めたのが社内会議の公開でした。
6月下旬、社内でアイデアについての検討を行う会議を録音し、mp3ファイルでインターネット上に公開を始めました。ポッドキャスティングにも対応してiPodなどで自動的に会議を聴けるようにしました。
社内の会議を公開するなんて、といった驚きの声もありましたし、実際こうした会議がインターネット上で公開されている事例はあまり聞いたことがありませんが、そもそもはてなアイデアに登録された要望の内容はユーザーの方々から頂いたものであり、それについての意思決定プロセスを公開することはとても自然な事だという気がします。
会議音声の公開によって、それまで発生していた無駄な誤解が無くなり、より深い議論ができるようになったと感じています。
またその後、アイデアミーティングにSkypeを利用してユーザーがリアルタイムに参加できるようにもしました。音声チャットを使って参加を希望したユーザーが会議の内容を聞きながらその場で発言できるようにしています。これまでにのべ20名ほどの方が参加し、直接意見を頂いています。
「予測市場」「会議のポッドキャスト」「チャットでの会議参加」。これらの手段はまだまだ登場したばかりの技術や仕組みを利用している部分もあり、今後もどんどん形を変えていくと思います。しかし、これまで一切公開されていなかった会社内の情報やプロセスがオープンになり、しかもその有用性が証明され始めていることは紛れもない事実です。
その手段がどういうものであれこうした流れは止まることは無く、10年もすれば「ユーザーからの意見が隠蔽されて、会議の内容も聞けないような会社なんて信用できない」といった社会になっているかも知れません。
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