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コモンセンスの確認

2005/09/26 16:06
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kondo

人力検索やダイアリー、アンテナなどユニークなサービスでおなじみの「はてな」。そんなはてなを率いる近藤淳也氏が、ネットのコミュニティやサービスのあり方について独自の視点で切り取ります(このブログの更新は2006年2月9日で終了しました)。
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はてなに名誉毀損やプライバシー侵害の申立てがあった場合にどのように対処するのか。これにはいくつかの変遷がありました。当初社員数が少なかった頃には、メールなどで連絡を受け、社員全員のミーティングで「この情報は消すべきか、残すべきか」といった事を議論していました。

こうした重要な問題をないがしろにして前に進めば、いずれ大きな問題となって戻ってくるだろうし、でき得る限りの妥当な判断を繰り返していかなければならないと考えたのです。

こうした議論を繰り返せば次第に前例が溜まり、徐々に自分たちの判断基準をパターン化できて、新規の問題は減少するだろうという目論見もありました。それで判断が偏らないようなるべく多くの人間の意見を聞いて、事例を溜めようとしたわけです。

「いやあ、それは申立者が気にし過ぎじゃないかなあ。ブログ作者は悪くないよね」とか、「これはさすがにひどいね。自分が言われても消して欲しいと思うよ」といった意見を出し合い議論を繰り返しながら、より多くの人が納得できるような結論は何かを探していきました。

ところが毎日毎日議論を繰り返してもなかなか新しい事例は減りません。例えば前回の「jkondoさんのバカヤロー」は愛嬌があるから削除しないと判断したとして、それがもう少し過激な言葉だったらどうなるのか、あるいは普段から執拗に特定の個人を中傷し続けている場合だとどうなるのか、というケースが次から次へと現れ、そのたびにやはりブログの内容などをじっくりと読み込んでその都度判断しなくてはならないのです。

一方社員も増加し社員全員でこうした議論を繰り返すことは次第に難しくなりました。そこで次に、担当者が顧問弁護士と相談しながら判断を行う体制を作りました。この体制になり、開発者が専門外の問題に頭を悩ませる必要がなくなったためにサービス開発の効率は上昇しました。ところが、ユーザーから届く不満の声の数は上昇してしまいました。

それまでに繰り返してきた事例などを踏まえてはてな情報削除ガイドラインという判断基準などを作成し判断を行う事にしたのですが、氏名が不当に開示されたまま数日間放置されたり、削除を求める申立て者とのやりとりが必要以上に長期化する問題などが出始めました。

問題を取り扱う人間が少なくなった事が一番の要因でした。結局のところこうした問題を解決するということは、多くの人間が一番納得できるポイントを探る作業であり、それはインターネット世界でのコモンセンスを探っていく作業だと思います。問題を早く解決するには、多くの人間が時間を割かなければなりません。

ネット上での慣例やマナー、歴史などの知識も必要となりますが、少ない人数で判断を行うとどうしても視点が限定されたり、よく知っているユーザーへの同情心が優勢になってしまったりします。すでに裁判所での判例などが多数あれば参考にもなるでしょうが、日々進化するインターネットの中での問題を取り扱う際に参考になる判例はあまりありません。また、弁護士のアドバイスが保守的な方向に偏ることもあります。

こうなると、最後に頼ることができるのは個人個人の良識であり、複数人で頭をつき合わせて「うーんうーん」と悩む、という原始的な方法がどうしても必要なのではないかと思えてきます。

サービスの開発を止めてまで全員で議論を行うには無理がある、しかし、少人数ではコモンセンスの確認が難しい、こうしたジレンマを抱えながら悩んだ結果、はてなではここでも「ユーザーと問題を共有する」という選択を行いました。

はてな内で抱えている問題を抽象化した上で事例としてインターネット上に公開し、多くの人間が閲覧可能な場所に置いてみようというわけです。プライバシーの問題があるために、個別の問題が実際に誰についての問題なのかを明らかにすることはできず、そのために議論に参加してもらうことは難しいわけですが、社内でどういう議論を行い、どういう判断を行ったのかを公開していくことならできるだろうと考えました。

もしも自分たちの判断が常識的な感覚から大きく逸脱している場合には、すぐにチェックがかかるようにすることで、コモンセンスを確認しようとしたわけです。

現在、この事例ははてな情報削除関連事例として公開しており、140件以上の事例が溜まっています。

幸い事例を公開してからは不満の声も減少し、成功だったと感じています。また、事例公開には副次的な効果がありました。はてなから送信したメールが一部だけ抜き取られて公開されたり、誤解されて掲示板やブログ上で批判されたりする事が随分少なくなったのです。事前にこちらでの判断内容や処理内容を公開することで、意図的な憶測や議論の誘導が難しくなったのです。

権利侵害をいかに防ぎ、問題発生時にいかに良識的な対処を行うか、という問題は様々なコミュニティが抱える大きな問題だと思います。はてなの仕組みもまだまだ発展途上ですし、今後も様々な方々と協力して安心して住めるインターネット社会の実現が目指せられればと考えています。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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