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まっとうな意見が通る組織に

2005/08/19 20:00
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kondo

人力検索やダイアリー、アンテナなどユニークなサービスでおなじみの「はてな」。そんなはてなを率いる近藤淳也氏が、ネットのコミュニティやサービスのあり方について独自の視点で切り取ります(このブログの更新は2006年2月9日で終了しました)。
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前回までのエントリーでは、はてなでのこれまでの取り組みに絡めながら、

  • 各個人の意識の持ち方
  • 社内での取り組み

などに触れてきました。主に情報共有や業務の効率化について、会社の中でどのような取り組みを行うと有効か、という点について考えてきました。次回以降は「社内と社外」という視線に目を移していきたいと思いますが、今回は改めて社内の情報共有への取り組みの重要性について触れてみたいと思います。

社内と社外との境界の前に長々と社内の話を書いたのにはわけがあります。それは、どれだけ社外との情報共有のための風通しの良い仕組みを作っても、社内が凝り固まっていてろくに意見も言えない状態では意味が無い、と考えるからです。

社外のユーザーと情報共有を行い、多くのユーザーの力を借りながらサービスを拡大していく、といったインターネットが生み出した新しい方法論を有効に実践していくためには、社外との接点を増やす前に、まず社内での情報共有や対話能力を向上させることが不可欠だと思います。

社内での風通しが悪く、どれだけ素晴らしいアイデアが上がっても押しつぶされてしまうような組織では、たとえユーザーから多くの素晴らしい意見が寄せられてもそれを生かすことはできず、次第にユーザーは離れていってしまうでしょう。信頼関係は長い時間をかけて少しずつ作り上げていくものであり、しかしあっさりと崩れてしまうものです。

ちょうど先日こんなことがありました。その日は図書館に行ったのですが、図書館内の空調は28度に設定されていました。恐らく環境や空調費に配慮して少し高めに設定されているのでしょう。

ところがその図書館の構造のせいか、その日が特別暑かったのか、館内の温度は異常に高く読書をしているだけで汗がにじむほどでした。汗をかいているのは僕だけではなく、周りの利用者や司書の方さえも暑そうにしています。おかげで読書が全くはかどりません。

業を煮やしたとある利用者がカウンターに行って、「温度設定を少し下げて欲しい」とお願いをしました。ところが、奥から館長のような人が出てきて「前例を作ると今後も温度を変更しないといけないから云々…」といって頑なに空調温度の変更を拒んでいます。

自分も一緒にお願いをしようかと思いましたが、しばらく会話を聞いていて分かったことは、ここで何を言ってもエアコンのスイッチのボタンを"ポチッ"と押して設定温度を「27度」にすることは叶わぬ願いのようだ、ということでした。一体館内にいる利用者や職員全員で汗を流しながら、何を必死で守っているのだろうと思ったのは言うまでもありません。

ところでもし図書館の職員がもう少し意見を聞き入れてくれるならどうでしょう。僕は、「エアコンの設定温度ではなく、閲覧席に温度計を置いて温度計で28度を保つようにしたらどうでしょう」とか、「空調費が問題になるのであれば、館内にいる人からその分徴収して今日だけ特例を認めることはできませんか(100円くらいなら払います)」という意見を言いたいと思いました。でも言いませんでした。

我ながらそれなりにまっとうな意見だったと思いますが意見を言わなかったのは、「どうせ言っても聞いてもらえなさそうだ」というどうしようもない諦めがあったからです。

図書館の司書さんはいつもカウンターにいますし、館長も呼び出したら出てきてくれます。でも、窓口がそこにあることよりも、まっとうな意見が聞き入れられるかどうかという組織の体制の方が、意見を言う側にとってはよほど重要です。

市役所の中で「図書館の空調の温度設定について」という会議があって、その会議にメッセンジャーで市民が参加して発言でき、会議の内容がポッドキャスティングされたらどんなに良いだろうと思います。もはや、そうすることは技術的に可能ですし、ほとんどコストもかかりません。市役所が市民の声を聞いてはいけない理由など何も無いはずです。しかし、そんな会議が実現するのはまだ当分先の事のように思えます。

なぜなのでしょうか。

これまで長い間、こうした会議は物理的に不可能でした。多くの市民がいちいち会議室に集まって温度設定について話すわけには行きませんし、電話やビデオで遠隔会議をするにも設備とコストがかかりました。どんな会議がいつ行われるかを伝えるにも、手紙や回覧板などでコストをかけねばならず、「現実的ではなかった」のだと思います。

しかし今や、インターネットの普及によってこうしたことがほとんど0円で可能になりつつあります。「物理的に不可能だから」とか「コストに見合わない」といった理由は成り立たなくなっています。「インターネット利用者とそうで無い市民に差が出るから」といった別の問題は依然としてあるにせよ、そうした差も次第に埋まっていくでしょう。

そういう変化の中で、「ユーザーの声を聞く」ことを否定する理由は次第に薄れていき、多くの企業や組織がIT技術を駆使しながら利用者や他のステークホルダーとの対話を積極的に行っていく社会になっていくと思います。

その時に向けて、「まっとうな意見が通る組織」を作ることがより重要になっていく気がします。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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